>  >  > 
育成者権を侵害された時の対抗措置と知っておくべき育成者権の適用範囲
著作権・商標権侵害 公開日:2018.1.15 弁護士監修記事

育成者権を侵害された時の対抗措置と知っておくべき育成者権の適用範囲

弁護士法人ネクスパート法律事務所
監修記事
61c0894444a89336c31618e4f8c51a45

この記事は育成者権が侵害されることについてお伝えします。

育成者権とは新品種の植物に対して与えられる知的財産権の一種のことで、植物の創作を保護するための種苗法(しゅびょうほう)では、新しく作られた品種を登録することで育成者権を専有することができると規定されています。

つまり、自分の作った新品種の植物を商業的に独占できる権利であり、「許諾なく勝手に品種を使用したら損害賠償を請求したり罰則を与えたりしますよ」というもので、育成者権が侵害され、自身の作った植物の新品種(お米や果物など)が勝手に栽培されたり、販売されたりしたときに、その侵害行為の差止めや損害賠償請求を行うことができます。

どのような物が育成者権の効力を受けるのか、また育成者権を侵害した場合どのような罰則があるのかを確認していきましょう。

権利侵害トラブルの解決が得意な弁護士を地域から探す

電話メールでの対応可能・相談料無料

の事務所も多数掲載!

北海道・東北

北海道 | 青森 | 岩手 | 宮城 | 秋田 | 山形 | 福島

関東

東京 | 神奈川 | 埼玉 | 千葉 | 茨城 | 群馬 | 栃木

北陸・甲信越

山梨 | 新潟 | 長野 | 富山 | 石川 | 福井

東海

愛知 | 岐阜 | 静岡 | 三重

関西

大阪 | 兵庫 | 京都 | 滋賀 | 奈良 | 和歌山

中国・四国

鳥取 | 島根 | 岡山 | 広島 | 山口 | 徳島 | 香川 | 愛媛 | 高知

九州・沖縄

福岡 | 佐賀 | 長崎 | 熊本 | 大分 | 宮崎 | 鹿児島 | 沖縄

育成者権に反したときの措置について

登録品種の利用には育成者権利者からの許諾が必要です。

したがって、無断で登録品種の種苗や収穫物や加工品を利用されていれば育成者権を侵害されていることになりますが、そのような場合に刑事・民事・税関の3点から法的な措置をとることができます。

具体的にどのような措置・罰則がなされるのでしょうか?

刑事罰

育成者権を故意に侵害した場合、下記のような罰則が課されます。

個人:10年以下の懲役又は1,000万円以下の罰金若しくは併科(懲役と罰金の両方)
法人:3億円以下の罰金

民事上の請求

民事で訴訟を起こされた場合は下記のとおりです。

  • 差止請求
  • 損害賠償請求
  • 信用回復の措置請求

差止請求

育成者権は権利を侵害する人や侵害するおそれがある人に対して、侵害をやめさせたり侵害しないよう予防することを請求できます。

具体的には、侵害したことによって作られた種苗や収穫物、加工品の廃棄を請求することができ、海外で売られている、又は、売られそうな品種を廃棄させる事が可能になります。

(差止請求権)

第三十三条  育成者権者又は専用利用権者は、自己の育成者権又は専用利用権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。

 育成者権者又は専用利用権者は、前項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を組成した種苗、収穫物若しくは加工品又は侵害の行為に供した物の廃棄その他の侵害の予防に必要な行為を請求することができる。

引用:種苗法 第三十三条

損害賠償請求

育成者権や利用する許諾を得ていない人が、無断で登録品種の種苗や収穫物、その加工品を譲渡したときに、その権利侵害をした人に対し、「譲渡された数量と侵害行為がなければ権利者が販売できていた対象品種の単位数量当たりの利益」を、掛け算したものを損害額とすることができます。

損害額=【侵害で譲渡された種苗・収穫物・加工物】×【侵害がなければ権利者が販売できる種苗・収穫物・加工物】

侵害した人が侵害行為によって利益を得た場合は、その利益額が権利者にとっての損害額となります。ただし損害賠償請求額はこの損害額によって上限が決められるわけではなく、損害額以上の額を請求することができる場合もあります。

損害額=侵害による利益額

損害の額の推定等)

第三十四条  育成者権者又は専用利用権者が故意又は過失により自己の育成者権又は専用利用権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為を組成した種苗、収穫物又は加工品を譲渡したときは、その譲渡した種苗、収穫物又は加工品の数量(以下この項において「譲渡数量」という。)に、育成者権者又は専用利用権者がその侵害の行為がなければ販売することができた種苗、収穫物又は加工品の単位数量当たりの利益の額を乗じて得た額を、育成者権者又は専用利用権者の利用の能力に応じた額を超えない限度において、育成者権者又は専用利用権者が受けた損害の額とすることができる。ただし、譲渡数量の全部又は一部に相当する数量を育成者権者又は専用利用権者が販売することができないとする事情があるときは、当該事情に相当する数量に応じた額を控除するものとする。

参考:種苗法 第三十四条

信用回復の措置請求

過失・故意に関わらず、育成者権を侵害したことで業務上の信用を損なった場合、信用を回復するために必要な措置を請求することができます。

(信用回復の措置)

第四十四条  故意又は過失により育成者権又は専用利用権を侵害したことにより育成者権者又は専用利用権者の業務上の信用を害した者に対しては、裁判所は、育成者権者又は専用利用権者の請求により、損害の賠償に代え、又は損害の賠償とともに、育成者権者又は専用利用権者の業務上の信用を回復するのに必要な措置を命ずることができる。

引用:種苗法 第四十四条

税関による措置について

育成者権を含む知的財産権を侵害した知的財産権侵害物品は、関税法第69条の2第3号と関税法69条の11第9号によって輸出入を禁じられています。

関税法第六十九条の二 次に掲げる貨物は、輸出してはならない。

 特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、著作隣接権又は育成者権を侵害する物品

引用:関税法第69条の2

第六十九条の十一  次に掲げる貨物は、輸入してはならない。

 特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、著作隣接権、回路配置利用権又は育成者権を侵害する物品

引用:関税法69条の11

また育成者権者は税関に対して、輸出入差止申立てができます。

輸入差止申立制度について

輸入差止申立制度とは、育成者権者の権利を侵害するような物が日本に輸入されている場合や、輸入されることが見込まれるときに、税関へ輸入をやめさせることを要求する制度のことです。

育成者権を含む知的財産を侵害する疑いのある物のことを、侵害疑義物品といって、これが本当に権利を侵害するものなのかどうかを決める流れのことを認定手続と呼んでいます。

輸入差止申立てをするために必要なこと

申立ての審査を受けるためには、まず差止申立書と添付書類を税関に提出する必要があります。

申立てが認められたかどうかは認定通知書の送付によって連絡があります。非該当認定の場合は、輸入が許可されてしまいますが、通知があってから2ヶ月以内であれば異議申立てが可能です。

審査期間に関しては、複雑な事案ではない限り、だいたい1ヶ月以内に終わります。

差止申立てはしたけれどもその種苗や収穫物が侵害物品であるかどうかが判断しづらく、認定手続が長期化した場合に輸入者が損害を被る可能性があります。そのようなときに損害額の担保が必要だと判断された場合、申立人は担保として金銭を供託しなければなりません

育成者権の輸入差止申立てで必要な書類について

前述のとおり、手続きには申立書とその他添付書類を記入し、提出する必要があります。

具体的にどのような書類が必要でしょうか。

  • 輸入差止申立書(税関様式C-5840)
  • 品種登録簿の謄本および官報
  • 識別ポイントに係る資料…権利侵害をしていると判断できるような部分を図解および識別方法を示した資料
  • 委任状…代理人が申立手続きをするとき
  • 侵害の事実を疎明(そめい 疑いの事実がなさそうな確信に近い状態)するための資料

【参考】
知的財産侵害物品の取締 権利別申立ての具体的手順(育成者権)

育成者権で守られる範囲と守られない範囲

育成者権により登録された品種は守られ、権利者が独占的に利用できるということですが、そもそも、具体的にどのような範囲に育成者権の効力が及ぶのでしょうか。

育成者権で守られる範囲

種苗法では新品種を登録することで、対象の品種を利用する独占権を得ることができます。登録品種によって効力の及ぶ【品種】と【利用法】を見ていきましょう。

育成者権の効力が及ぶ品種

独占権を得られる物は単純に登録された品種(登録品種)だけでなく

  • 登録品種と明確に区別されない品種
  • 登録品種に由来する品種(従属品種)
  • 繁殖時に登録品種を交雑させる必要のある品種

上記の3つに該当する品種も含まれます。

登録品種と明確に区別されない品種

既に登録されている品種と区別できない場合は同じ品種ということになります。下記の引用で重要な形質に係る特性と書いており、これによって区別されるかどうかが決まるわけですが、なにをもって重要な形質なのかははっきりとしていません。

 この法律において「品種」とは、重要な形質に係る特性(以下単に「特性」という。)の全部又は一部によって他の植物体の集合と区別することができ、かつ、その特性の全部を保持しつつ繁殖させることができる一の植物体の集合をいう。

引用:種苗法 第二条

登録品種に由来する品種(従属品種)

従属品種とは、ある登録品種を親として、特性がわずかに変化した品種のことです。従属品種は親となった登録品種とは特性により明確に区別ができるので、未譲渡性等の要件が満たされていれば新品種として登録できます。

未譲渡性とは・・・業として(=事業として)誰かに譲渡をしていた場合に新品種として登録できないことを指します。

未譲渡かどうかは過去一定の期間を遡って考え、日本国内での品種登録出願日から1年前まで、外国での品種登録出願日から4年前まで遡って、事業として譲渡があったかどうかで判断します。

第四条  品種登録は、品種登録出願に係る品種(以下「出願品種」という。)の名称が次の各号のいずれかに該当する場合には、受けることができない。

 一の出願品種につき一でないとき。

 出願品種の種苗に係る登録商標又は当該種苗と類似の商品に係る登録商標と同一又は類似のものであるとき。

 出願品種の種苗又は当該種苗と類似の商品に関する役務に係る登録商標と同一又は類似のものであるとき。

 出願品種に関し誤認を生じ、又はその識別に関し混同を生ずるおそれがあるものであるとき(前二号に掲げる場合を除く。)。

 品種登録は、出願品種の種苗又は収穫物が、日本国内において品種登録出願の日から一年さかのぼった日前に、外国において当該品種登録出願の日から四年(永年性植物として農林水産省令で定める農林水産植物の種類に属する品種にあっては、六年)さかのぼった日前に、それぞれ業として譲渡されていた場合には、受けることができない。ただし、その譲渡が、試験若しくは研究のためのものである場合又は育成者の意に反してされたものである場合は、この限りでない。

引用 種苗法 第四条

繁殖時に登録品種を交雑させる必要のある品種

ある交雑種を繁殖するときに毎度、登録品種を交雑させなければいけない品種の場合、その品種についても登録品種の権利者の権利の効力が及びます。

つまり、繁殖をするときは登録品種の育成者権者の許諾が必要になります。

育成者権の効力を受ける「利用」とは

登録された品種の利用を独占することができるのが育成者権ですが、それではどのような利用が対象になるのでしょうか?

種苗…輸出入・生産・譲渡など
収穫物…輸出入・生産・譲渡など
加工品…種苗法施行規則で定める輸出入・生産・譲渡など

育成者権ではない人が利用したい場合は、権利者から許諾を受ける必要があります。

育成者権で効力が及ばない範囲について

育成者権は登録された品種を事業として独占的に利用できるものですが、一方で育成者権の範囲外、つまり権利が及ばず、登録品種を独占できない場合とはどんなときでしょうか?

育成者権の範囲外は下記の通りです。

  • 新品種の育成・試験・研究のために利用する場合
  • 法令で定める範囲内での農業者の自家増殖

新品種の育成・試験・研究のために利用する場合

新品種の育成や試験や研究をするためには登録品種を利用する必要があります。このような場合については育成者権者からの許諾は不要なのです。

法定で定める範囲内での農業者の自家増殖

育成者権者から譲渡された種苗を育て、増殖することに関しても育成者権者からの許諾は不要です。

ただし自家増殖を制限する契約を結んでいる場合や、農林水産省令で定めている栄養繁殖植物の中で自家増殖が禁止されている植物に関しては、利用のための許諾が必要となります。

一方で、農家であっても種苗を他の農家の人に譲ったり、海外へ持っていった場合は、種苗法に違反する行為となります。

育成者権が誰かに侵害されたことが発覚したら品種保護Gメンに相談

品種保護Gメンとは、独立行政法人種苗管理センターが設置している、育成者権の保護を行う機関です。

品種保護Gメンでは、育成者権の情報収集をしたり、依頼があれば類似性があるかどうかの試験をしています。また、育成者権が侵害されないために相談や助言を受けることもでき、育成者権を持つ人にとって頼りになる組織でしょう。

農研機構の種苗管理センターの公式サイトでは活動内容を下記のとおり記載しています。

  1. 育成者権侵害対策に係る相談の受付及び助言
  2. 権利侵害に関する情報の収集及び提供
  3. 育成者権者等からの依頼に基づいた品種類似性試験の実施
  4. 育成者権侵害状況の記録
  5. 証拠品(侵害品の種苗等)の寄託
  6. 6次産業化に向けた新品種の活用方法に関する助言
  7. 地域在来品種等の検索
  8. 種苗の入手先や特性概要等の情報提供

引用:農研機構 種苗管理センター

具体的には、種苗管理センター・品種保護Gメンは以下のサービスをしています。

侵害状況記録…育成者権侵害の疑義がある種苗や生産物・加工品の栽培や販売状況の記録を取ります。
品種類似性試験…登録品種と侵害物品と疑われる品種の特性の比較をします。
寄託…入手した侵害の証拠を保管します。

種苗管理センター品種保護対策課のお問い合わせ先

TEL:029-838-6589
FAX:029-838-6583
メールアドレス:hinsyu_gmen@naro.affrc.go.jp

まとめ

最後にこの記事のまとめです。

育成者権を侵害したときには刑事、民事、税関による措置ができる。

  • 刑事ならば、個人が侵害した場合は10年以下の懲役又は1,000万円以下の罰金若しくは併科(懲役と罰金の両方)。法人が侵害した場合は3億円以下の罰金という罰則を与えられる。
  • 民事ならば、差止・損害賠償・信用回復の措置をそれぞれ請求することができる。
  • また自身の育成者権に反して、他人によって輸入されていたり、輸入されそうなときには税関に所定の手続きをして認められれば輸入の差止ができる、輸入差止申立制度がある。

育成者権の保護に向けた活動を行う品種保護Gメンを利用することで、育成者権に関した相談や助言を受けられたり、侵害の疑いのある品種と自身の登録品種との比較試験を受けられる。

権利侵害トラブルの解決が得意な弁護士を地域から探す

電話メールでの対応可能・相談料無料

の事務所も多数掲載!

北海道・東北

北海道 | 青森 | 岩手 | 宮城 | 秋田 | 山形 | 福島

関東

東京 | 神奈川 | 埼玉 | 千葉 | 茨城 | 群馬 | 栃木

北陸・甲信越

山梨 | 新潟 | 長野 | 富山 | 石川 | 福井

東海

愛知 | 岐阜 | 静岡 | 三重

関西

大阪 | 兵庫 | 京都 | 滋賀 | 奈良 | 和歌山

中国・四国

鳥取 | 島根 | 岡山 | 広島 | 山口 | 徳島 | 香川 | 愛媛 | 高知

九州・沖縄

福岡 | 佐賀 | 長崎 | 熊本 | 大分 | 宮崎 | 鹿児島 | 沖縄

この記事の監修者
弁護士法人ネクスパート法律事務所
2016年1月に寺垣弁護士、佐藤弁護士の2名により設立。現在の在籍弁護士は14名(2018年1月時点)。遺産相続、交通事故、離婚などの民事事件や刑事事件、企業法務まで幅広い分野を取り扱っている

SNSで記事をシェアする

相護士ナビ編集部

本記事はIT弁護士ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※IT弁護士ナビに掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。
Icon_column_white カテゴリからコラムを探す
Sidebar_writer_recruit