著作権侵害の時効が何年かわからず、いつか損害賠償請求や刑事告訴をされるのではと、不安を抱えていませんか。
無断転載や違法ダウンロードをしてしまい、著作権法違反にあたるかもしれないと怯えている方もいれば、自分の作品を侵害され、今からでも請求できるのか焦っている方もいるはずです。
著作権侵害の時効は、民事上の損害賠償請求権が原則3年(または20年)、刑事上の公訴時効が原則7年と定められています。
この記事では、時効の年数と起算点、親告罪と非親告罪の違いから、時効前に取るべき法的措置まで、順を追って解説します。
著作権侵害の時効は、民事と刑事で仕組みも年数も異なります。
損害賠償を請求する民事上の時効と、刑事罰を科すための公訴時効は、それぞれ別の制度として考えなければなりません。
まずは、それぞれの時効について詳しく見ていきましょう。
著作権侵害の損害賠償請求権は、原則として3年で時効を迎えます。
損害があったことや、加害者を知った時点から3年で、消滅時効のカウントが始まる仕組みです。
無断転載やダウンロードの事実、それをおこなった相手を把握した時点がスタート地点となります。
一方で、加害者がわからないまま長期間が経過するケースも少なくありません。
著作権侵害の行為があった時から20年が経過すると、請求権は消滅します。
気づいたのが最近だからまだ大丈夫と考えていても、行為自体から20年が過ぎていれば請求できなくなるため、注意しておきましょう。
著作権侵害の刑事事件は、原則として7年で公訴時効を迎えます。
著作権法119条では、著作権侵害に対して10年以下の拘禁刑もしくは1000万円以下の罰金、またはその両方が定められています。
刑事訴訟法250条では、法定刑の重さに応じて公訴時効の期間が段階的に区分されており、著作権法119条が定める罰則(拘禁刑10年)はこの区分にあてはまるため、時効は7年です。
起算点となるのは、犯罪行為が終わった時点。
無断アップロードであれば、そのファイルを削除するなど侵害状態を解消した時点までカウントされない可能性がある点は押さえておきたいポイントです。
7年が経過すると、検察官はその事件について起訴できなくなります。
著作権侵害の多くは親告罪にあたり、被害者からの告訴がなければ刑事事件として立件されません。
警察が侵害の事実を把握していても、被害者が告訴しない限り、加害者を起訴できない仕組みです。
親告罪の告訴は、犯人を知った日から6ヵ月以内にしなければなりません(刑事訴訟法235条)。
この告訴期間を過ぎると、公訴時効(7年)が残っていても告訴できなくなります。
とはいえ、証拠を集めてからもう少し様子を見てからと先延ばしにすれば、証拠が散逸したり相手の所在がわからなくなったりするリスクは残ります。
心当たりがある場合は、できるだけ早いタイミングで弁護士に相談し、証拠の保全や告訴の準備を進めておくのがおすすめです。
一部の著作権侵害は非親告罪とされ、被害者の告訴がなくても捜査や起訴が可能です。
2018年のTPP整備法により著作権法が改正され、一定の要件を満たす侵害行為が非親告罪化されました。
対象となるのは、原作品をそのままの形で有償頒布する場合や、原作品の売上に影響を与えるような大規模な侵害などです。
海賊版サイトでの漫画・書籍の無断掲載や、市販のDVDを複製・販売する行為が典型例にあたります。
著作権侵害とは、著作者に無断でその著作物を利用し、著作権法上の権利を侵害する行為を指します。
保護の対象となるのは、大きく分けて以下の2種類です。
著作権は、特許のように登録しなくても、作品を創作した瞬間に自動で発生するのが特徴です。
自分では意識していなくても、気づかないうちに他人の権利を侵害してしまうリスクがあります。
著作権侵害が「わざとではなかった」という言い分が、通用しにくい点に注意が必要です。
故意でなくても不注意(過失)があれば損害賠償責任を負う可能性があるため、利用する側には客観的な確認が求められます。
著作権侵害が成立するかどうかは、いくつかの要件を満たしているかで判断されます。
要件をひとつでも満たさない場合、そもそも侵害自体が成立せず、時効を考える必要もありません。
ここからは、判断の基準となる代表的な要件を見ていきましょう。
著作権侵害が成立する前提として、侵害された対象が著作物に該当している必要があります。
著作権法では、著作物を思想や感情を創作的に表現したもので、文芸、学術、美術、音楽などに属するものと定義しています。
そのため、ありふれた挨拶文や、単なる事実・数値の羅列、アイデアそのものは著作物にあたりません。
一方で、作者なりの個性(創作性)が少しでも表れていれば、著作物として広く保護の対象になります。
対象物が著作物と認められなければ、無断で使用しても著作権侵害は成立しません。
侵害行為の時点で、著作権の保護期間が残っている必要があります。
保護期間は原則として、著作者の死後70年(法人名義の作品は公表後70年など)です。
保護期間を過ぎた作品はパブリックドメインとなり、誰でも自由に利用できる状態になります。
古い美術品や古典文学を無断で使用した場合、著作権自体がすでに消滅しているため、侵害は成立しません。
有名な作品だからという理由だけで安心せず、保護期間が残っているかどうかを確認しておくことが重要です。
なお、著作者が判明していない作品や、複数人の共同著作物の場合は、保護期間の起算点が異なるケースもあります。
加害者が、著作権法上定められた支分権に該当する方法で著作物を利用している必要があります。
複製(コピー)や公衆送信(ネットへのアップロード)など、法律に列挙された具体的な行為が対象です。
一方で、他人の作品を見て楽しむだけの行為や、購入した本を個人で所持しているだけの行為は侵害にあたりません。
利用行為がどの支分権を侵害しているのかを特定することが、削除請求や損害賠償請求を進める上で重要です。
著作権侵害が成立するには、加害者が被害者の作品を知った上で、それを基に創作したという事実(依拠性)が必要です。
既存の作品をまったく知らないまま、たまたま似た表現を独自に生み出した場合は、侵害にはあたりません。
裁判実務で重視されるのが、被害者の作品に触れる機会(アクセス可能性)があったかという客観的な状況です。
作品の公開時期や流通範囲、加害者の活動エリアなどから、総合的に判断されます。
インターネットで容易に閲覧できる有名な作品ほど、依拠性は認められやすくなる傾向にあります。
依拠性を否定する材料として、見たことがないという主張だけでは弱いと判断されるケースも少なくありません。
著作権侵害の成立には、2つの作品を客観的に比較した際、創作的な表現の本質的な部分が共通していること(類似性)が求められます。
ここで重要なのが、似ているのがアイデアなのか表現なのかという区別です。
設定や画風、テーマ、コンセプトが似ているだけでは、著作権法上の類似性があるとは判断されません。
線画のトレースや、特徴的なフレーズをそのまま引き写すなど、具体的な表現形式のレベルで酷似していることが要件になります。
類似性の判断は非常に繊細で、専門家の間でも見解が分かれることが少なくありません。
著作物の利用について、権利者から事前に正当な許諾(ライセンス)を受けていないことも、侵害成立の要件です。
口頭・書面を問わず許諾自体がない場合はもちろん、利用媒体や期間などの許諾された範囲を超えて使用した場合も対象になります。
フリー素材サイトやSNSの利用規約に反する使い方をした場合も、無断利用とみなされる点に注意が必要です。
「規約をよく読んでいなかった」という言い分は、無断利用という客観的な事実を覆す理由にはなりません。
利用する側の「知らなかった」は、責任を免れる材料にはならない点に注意が必要です。
加害者の行為が、法律で定められた著作権の効力範囲内でおこなわれていることも、侵害成立の要件になります。
利用行為が日本国内で発生している場合、適用されるのは日本の著作権法であり、専有権が及ぶ範囲を細かく確認していく作業になります。
著作者人格権を直接侵害する意に反する改変(同一性保持権の侵害)なども、この範囲内で評価される項目です。
権利者のコントロールが及ばない、例外的な状況での利用でないかを確認するプロセス、とイメージするとわかりやすいでしょう。
複雑なケースでは、この範囲の判断自体に専門知識が必要になります。
著作権法第30条から第50条に定められた例外規定(権利制限規定)のいずれにも当てはまらないことも、侵害成立の最後の要件です。
私的使用目的の複製(第30条)や正当な引用(第32条)など、法律が認める例外に合致していないかを検証します。
例外規定にひとつでも当てはまれば、その利用は適法と判断される仕組みです。
いずれの例外にも合致しない場合に初めて、著作権侵害が完全に成立します。
全ての要件が満たされてはじめて、民事・刑事の手続きや時効の議論に進むことになります。
著作権侵害は、行為から数ヵ月から数年が経った忘れた頃に、突然トラブルへと発展するケースが少なくありません。
代表的な事例を3つ紹介します。
| よくある事例 | 起こりうるリスク |
|---|---|
| SNSでの無断転載 | 削除後もアーカイブが証拠として残り、時効間際に賠償請求されることがある |
| 違法ダウンロード | 忘れた頃にプロバイダから意見照会書が届くことがある |
| 自社サイトへの無断転載 | 数年後に相手方の弁護士から高額な警告書が届くことがある |
いずれも時間差で発覚するのが共通点です。
心当たりがある場合は、早めの対応をおすすめします。
法律で認められた適法な利用方法(権利制限規定)に該当する場合、そもそも著作権侵害自体が成立しません。
侵害が成立しなければ、時効を気にする必要もなくなります。
時効が問題とならない代表的な利用方法を3つ紹介します。
| 適法な利用方法 | 内容 |
|---|---|
| 私的複製 | 個人や家族など、ごく限られた範囲内で楽しむために音楽や画像を保存・ダウンロードする |
| 教育現場での利用 | 学校の授業や試験、オンライン授業の範囲内で、教員や生徒が必要最小限の教材をコピー・利用する |
| 報道・引用に関わる利用 | ニュース報道の背景に著作物が映り込む場合や、ルールを守った適法な引用 |
ただし、引用として認められるには厳格な条件があるため、注意が必要です。
引用を適法に成立させるには、判例上定められた要件を全て満たす必要があります。
要件をひとつでも欠くと、引用ではなく無断転載とみなされるリスクがある点には注意が必要です。
著作権侵害は、単なる契約違反とは異なり、非常に重いペナルティが科される可能性があります。
金銭的な負担だけでなく、刑事罰や社会的信用の失墜にもつながりかねません。
個人が侵害をおこなった場合、前述の拘禁刑や罰金に加えて、両方が同時に科される併科というケースもあります。
法人の場合は、さらに重い責任が問われる点に注意が必要です。
従業員が業務中に侵害行為をおこなった場合、両罰規定により、法人自体にも最高3億円の罰金刑が科される可能性があります。
金銭的なペナルティだけでは済まないケースも少なくありません。
企業であれば、社会的信用の失墜やサービスの強制停止、SNSでの炎上といった二次的な損失につながることもあります。
知らなかったでは済まされない重いリスクだからこそ、心当たりがある場合は早めに弁護士へ相談するのがおすすめです。
著作権を侵害された場合、被害者が取れる民事上の請求はひとつではありません。
侵害の状況や目的に応じて、複数の請求権を使い分けることが可能です。
ここでは、時効を迎える前に検討しておきたい代表的な請求方法を紹介します。
差止請求とは、著作権侵害の行為そのものを止めさせるための請求です。
無断転載されたコンテンツの削除や、侵害品の販売停止などを、相手方に直接求められます。
大きな特徴は、消滅時効という概念がない点です。
侵害行為が現在も続いている限り、いつでも請求が可能です。
まずは被害の拡大を止めたいという場合、最初に検討すべき選択肢といえます。
損害の金額を確定させるより先に、被害を食い止められるのが差止請求のメリットです。
損害賠償請求とは、著作権侵害によって被った経済的な損害を、金銭で賠償させる請求です。
時効は前述の通り、原則3年です。
無断使用によって失った利益や、精神的苦痛に対する慰謝料など、請求できる範囲は多岐にわたります。
著作権法には損害額を推定する規定も設けられており、被害者の立証負担を軽減する仕組みです。
どのくらいの金額を請求できるかわからないという場合も、早めに弁護士へ相談することで、具体的な見通しを立てられます。
不当利得返還請求とは、著作権侵害によって加害者が不当に得た利益を、被害者に返還させる請求です。
消滅時効は、権利を行使できることを知った時から5年、または権利を行使できる時から10年のいずれか早い方です。
損害賠償請求の時効(3年)を過ぎてしまった古い侵害であっても、10年以内であれば不当利得として回収を狙える、実務上重要な救済策になります。
例えば、他人の有料コンテンツを無断使用して得た広告収入や、デッドコピー品を販売して得た売上金なども、返還請求の対象です。
相手が侵害と知りながら利益を得ていた場合(悪意の受益者)は、利息を付けて全額を返還させることも可能です。
もう時効だからとあきらめる前に、不当利得の時効内かどうかを確認する価値はあります。
名誉回復等の措置とは、著作者人格権の侵害によって傷つけられた名誉や声望を回復するための請求です。
金銭での賠償だけでは償いきれない被害に対応する、著作権法ならではの救済措置といえます。
具体的には、謝罪広告の掲載や、訂正文の公表などを相手方に求めることが可能です。
氏名表示権や同一性保持権といった著作者人格権を侵害された場合に、特に活用されやすい請求方法です。
金銭では解決できない部分があると感じる場合は、名誉回復措置も含めた対応を弁護士に相談してみてください。
著作権侵害が発覚した場合、まず検討したいのが加害者との示談交渉です。
裁判に比べて早期解決が見込め、双方の負担を抑えられるのがメリットといえます。
ここでは、示談を進める際に押さえておきたい2つのポイントを紹介します。
示談交渉がまとまった場合、口約束で終わらせず、必ず示談書を作成してください。
賠償金の金額や支払い方法、支払い期限などを書面に残しておくことが重要です。
口頭だけの合意では、後から言った言わないのトラブルに発展しかねません。
示談書があれば、約束が守られなかった場合の証拠としても機能します。
条項の内容次第で法的な効力が変わるため、作成時は弁護士にチェックしてもらうと安心です。
示談内容をより強固な形で残したい場合は、公正証書の作成もおすすめです。
公証役場で作成する公正証書には、強制執行認諾文言を盛り込めます。
強制執行認諾文言があれば、相手が支払いを怠った際、裁判を経ずに強制執行の手続きに進めるのが大きな利点です。
分割払いなど、長期間にわたる支払い約束をする場合は、公正証書にしておく価値が高いといえます。
相手が本当に支払ってくれるか不安という場合は、公正証書の活用を検討してみてください。
示談交渉がまとまらず、時効の完成が迫っている場合、裁判所を利用することで時効の進行を止められるケースもあります。
ここでは、代表的な2つの手続きを紹介します。
民事調停とは、裁判所を介して当事者同士が話し合い、解決を図る手続きです。
調停委員が間に入るため、当事者同士で直接交渉するよりも、話がまとまりやすいのが特徴です。
訴訟に比べて手続きが簡易で、費用や時間の負担を抑えられる点もメリットといえます。
調停が成立すると作成される調停調書には、判決と同等の法的効力があります。
いきなり訴訟は避けたいという場合、調停から始めるのもひとつの選択肢です。
示談や調停で解決しない場合、最終的な手段として民事訴訟を提起します。
裁判所の判断を仰ぎ、強制力のある解決を目指せるのが訴訟の特徴です。
訴訟を提起すると、時効の完成が猶予される効果もあります。
時効が迫っている状況では、訴訟の提起自体が有効な対抗手段になり得ます。
判決が確定すれば、相手が支払いに応じない場合でも強制執行が可能です。
手続きは複雑で専門知識も必要になるため、訴訟を検討する段階では弁護士への相談をおすすめします。
著作権侵害を刑事事件として立件してもらうには、被害者自身による告訴が必要になるケースがほとんどです。
告訴は思い立ってすぐにできるものではなく、いくつかの手順を踏んで進めます。
告訴状の書式に不備があると受理されない場合もあるため、作成段階から弁護士に相談しながら進めると安心です。
告訴は犯人を知った日から6ヵ月以内が期限で(刑事訴訟法235条)、公訴時効(7年)とは別に管理が必要です。
とはいえ、時間が経つほど証拠が散逸したり、相手の所在がわからなくなったりするリスクは高まります。
心当たりがある場合は、早めに動き出すのがおすすめです。
告訴状が受理されたからといって、加害者が必ず起訴されるわけではありません。
捜査機関が捜査をおこなった結果、証拠不十分と判断されれば、不起訴で終わるケースもあります。
また、初犯であることや被害が軽微であることなどを理由に、起訴猶予となる場合も少なくありません。
一方で、被害者と加害者の間で示談が成立している場合、起訴猶予の判断材料として考慮されることもあります。
告訴すれば必ず罰してもらえるというものではない点は、理解しておく必要があります。
確実性を高めたい場合は、証拠の質と告訴状の内容を、弁護士とともに丁寧に固めていくのがおすすめです。
著作権侵害の時効が気になり始めたら、早めに相談窓口を頼ることが大切です。
相談先は、状況に応じて大きく2つに分かれます。
ここでは、それぞれどのような場面で活用すべきか解説します。
まだ具体的な相手との紛争に発展していない段階の一般的な質問は、公的な窓口への相談が向いています。
制度や法律解釈について知りたい場合は、文化庁の著作権課や、著作権情報センター(CRIC)の無料電話相談が利用可能です。
ただし、これらの窓口では、自分の代わりに相手と交渉してほしい、内容証明を作成してほしいといった、個別具体的なトラブルの解決までは対応していません。
法的な解決を視野に入れつつ、費用面に不安がある方は、法テラス(日本司法支援センター)の無料相談を活用する方法もあります。
まずは基本的な仕組みを知りたいという段階であれば、公的窓口への相談から始めるのがおすすめです。
侵害者を特定して示談金を請求したい、身に覚えのない警告状が届いたといった具体的なトラブルは、弁護士への依頼が適しています。
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無断使用に心当たりがある方も、自分の著作物を侵害された方も、時効の年数と起算点を正確に把握しておくことが、適切な対応の第一歩になります。
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