Twitterは匿名で投稿できるSNSのため、誹謗中傷関連のトラブルがよく見受けられます。Twitterでの嫌がらせで被害を受けたという事例も珍しくありません。
Twitterで悪質な誹謗中傷被害を受けている場合、投稿者を特定して損害賠償請求や刑事告訴を検討するべきケースもあるでしょう。
この記事では、Twitterで誹謗中傷被害にあった場合の開示請求を含めた対応や弁護士費用等について解説します。SNSでの嫌がらせにお悩みの方は、参考にしてみてください。
Twitterの開示請求は弁護士に依頼するべき?
Twitterの開示請求を弁護士に依頼した場合、以下のようなメリットがあります。
- 自分で難しい手続きをしなくて良い
- 特定にかかった費用を損害賠償で回収できる可能性がある
- 示談交渉によって慰謝料を獲得できる可能性がある
- 投稿者に刑事責任を追及できる可能性がある
匿名の投稿者を特定できる期間には制限があります。インターネットサービスプロバイダによるアクセスログの保存期間は、一般的には投稿から3か月間~6か月間が目安となるからです。
相手を特定したい場合には、すぐにでもインターネット問題に詳しい弁護士へ無料相談を行いましょう。

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この記事に記載の情報は2021年11月29日時点のものです
Twitterにおける投稿者の特定(開示請求等)にかかる費用
この項目では、Twitterでの誹謗中傷被害に遭い、弁護士に依頼して法的手続を利用して投稿者の特定を行う場合の費用についてご紹介します。
印紙代
IPアドレス等の開示に係る仮処分申立てに必要な印紙費用は、1回の手続につき2,000円です。
また、発信者情報開示に係る訴訟提起に必要な印紙費用は、1回の手続につき1万3,000円です。
この他、手続開始に当たり一定額の切手代もかかります。
弁護士費用
仮処分や訴訟提起を弁護士に依頼した場合、手続ごとに費用が発生するのが一般的です。以下の金額は、その目安となります。
IPアドレス開示請求(仮処分)
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着手金:約15万円〜20万円
報酬金:約15万円〜20万円
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契約者情報開示請求(裁判)
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着手金:約20〜30万円
報酬金:約15〜20万円
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Twitter社からIPアドレスが開示されたら、次はインターネットサービスプロバイダに対して契約者情報の開示請求を行う流れが基本になります(詳細は下記の『②IPアドレスの開示』で解説)。
このIPアドレスの開示請求と契約者情報の開示請求の2回の開示請求の依頼費用を合わせると、投稿者を特定するための弁護士費用については、60〜80万円がおおよその相場になるでしょう。
もっとも、弁護士費用は依頼する法律事務所によって料金体系や金額が異なるため、弁護士費用に関する詳細は、依頼前に忘れずに確認するようにしてください。
投稿者特定(開示請求等)にかかる期間
IPアドレスの開示を求める仮処分によって投稿者による投稿に関するIPアドレスの情報が開示されるまでの期間は、申立てをしてから1〜2か月が目安です。
また、当該IPアドレス等の情報の開示を受けて訴訟提起を行い、投稿者の氏名や住所等の情報の開示を受けるのに3~4か月はかかります。
したがって、投稿者特定までにかかる期間としては、半年程度は見たほうが良いと考えます。
なお、インターネットサービスプロバイダのアクセスログ(IPアドレス等の情報から投稿者の氏名等を特定するために必要な記録です)が保存されている期間は、書き込みやログインから3か月間~6か月間が目安といわれています。
アクセスログが消えてしまうと、開示請求によって投稿者を特定することはできなくなるので注意してください。
Twitter社からIPアドレスが開示されるまでの流れ
Twitterでの誹謗中傷について投稿者を特定する法的手続の流れをご紹介します。
- IPアドレス開示に係る仮処分申立て
- IPアドレスの開示
①IPアドレス開示に係る仮処分申立て
まずはTwitter社に対し、誹謗中傷行為が行われたときに利用された(ログインした際の)IPアドレスを開示するよう仮処分を求めるのが一般的です。
仮処分が認められるには、以下2つの要件を満たさなくてはいけません。
被保全権利
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名誉権やプライバシー権など、仮処分で保全すべき権利があること
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保全の必要性
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権利を仮に保全する必要性(緊急性)があること
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【詳細記事】Twitterでの名誉毀損|事例・成立要件と犯人を訴える方法
裁判所が仮処分命令を出せば、Twitter社から誹謗中傷をした投稿者が投稿の際に利用した(ログインした際の)IPアドレスが開示されます。
ただし、IPアドレスの情報だけでは、投稿者の氏名や住所までは特定できません。

IPアドレスが判明したら、その情報をもとに投稿者が利用したインターネットサービスプロバイダを調べ、当該インターネットサービスプロバイダに対して契約者情報(発信者情報)の開示請求を行う必要があります。
インターネットサービスプロバイダは「いつ、どのIPアドレスを、どの契約者に割り当てていたか」をアクセスログとして記録していることから、インターネットサービスプロバイダに対して開示請求を行うことで、IPアドレスの情報から契約者情報を特定することができます。
インターネットサービスプロバイダに対する発信者情報の開示請求
Twitter社からIPアドレスの開示を受けたら、当該IPアドレスを管理するインターネットサービスプロバイダに対して、契約者情報(発信者情報)の開示を求めて訴訟を提起します。
※インターネットサービスプロバイダとは、回線をインターネットに繋げる役割を担う接続事業者のこと(例:携帯3キャリア、OCN、So-netなど)
この訴訟手続を通じて、裁判所が発信者情報を開示するよう命じれば、インターネットサービスプロバイダは自身が保有する契約者の氏名や住所等を開示します。要するに投稿者がどこの誰であるかが特定できるわけです。
なお、訴訟提起の相手となるインターネットサービスプロバイダは、ネット上の『検索サービス』に、Twitter社から開示されたIPアドレスを入力することで、特定できます。
【詳細記事】Twitter誹謗中傷の犯人特定|開示請求と方法と費用の相場について
Twitter社への削除依頼にかかる費用
悪質な誹謗中傷等を受けた場合には、投稿者の特定だけではなく、その悪質なツイートの削除依頼も行うべきです。
Twitterにおける悪質なツイートの削除依頼を弁護士に依頼する場合の費用については、以下がおおよその相場となります。
裁判なしでの削除
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着手金:5〜10万円
報酬金:5〜10万円
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裁判(仮処分)での削除
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着手金:10~15万円
報酬金:10~15万円
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まず、弁護士がTwitter社に対して、任意での(裁判なしの)削除依頼を行います。Twitter社側が任意の削除依頼に応じない場合には、仮処分を申し立てて削除を求めるという流れになります。
もっとも、内容に応じて、いきなり仮処分を申し立てて削除を求めることも少なくありません。
なお、明白な著作権侵害のケースなど、他者の権利を侵害しており、明らかに規約違反であるような悪質なツイートであれば、訴訟手続をとらなくても削除依頼に応じてもらえることがあります。
削除依頼の方法についての詳細は、以下の記事をご参照ください。
【詳細記事】ツイッターの削除依頼方法と削除されなかった場合の対処法
損害賠償請求と刑事告訴にかかる費用
誹謗中傷を行った投稿者の氏名や住所等を特定した場合、当該投稿者に対して民事責任と刑事責任を追及することが考えられます。
- 民事責任:損害賠償(慰謝料等)の請求
- 刑事責任:刑事罰(罰金・懲役刑など)の追及
民事責任を追及する場合
投稿者への民事責任の追及は、通常、損害賠償(慰謝料等)請求という形で行います。
投稿者が裁判外の交渉で任意の支払いに応じるのであれば示談をして終了し、そうでない場合は、投稿者に対して民事裁判を提起することになるでしょう。
なお、この場合の損害額には、投稿者を特定するまでの調査にかかった費用(弁護士費用など)の全部または一部が上乗せされる場合もあります。
弁護士に損害賠償請求を依頼する場合の費用は、請求する金額次第にはなりますが、着手金は10~30万円、成功報酬は得られた賠償金の16%程度となる場合が多いと思います。
刑事責任を追及する場合
投稿者の刑事責任を追及したいのであれば、まずは刑事事件として立件してもらわなくてはなりません。そのため、まずは捜査機関に対して刑事告訴を行うことから始めることになります。
弁護士に依頼すれば、告訴状の作成や提出を代行してくれます。
ただし、告訴状が受理されたとしても、刑事事件として起訴するかどうかは検察官の判断となりますので、必ずしも起訴されるわけではない点には注意が必要です。
なお、弁護士に刑事告訴の処理を依頼する際の費用は、着手金が20〜30万円程度、報酬金も同額程度が目安となるでしょう。
【詳細】名誉毀損を刑事告訴する方法|告訴できる状況と必要な手続きについて
まとめ
Twitter上の投稿に係る投稿者を特定するための開示請求、投稿の削除依頼や損害賠償請求にかかる費用の相場は、以下の通りです。
Twitter社への削除依頼
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任意:合計10〜20万円、裁判:合計30〜40万円
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投稿者の特定
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合計60〜80万円
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損害賠償(慰謝料)請求
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着手金10〜30万円+賠償金の約16%
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刑事告訴
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合計40〜60万円
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もし投稿者の特定を希望する場合には、Twitter社がアクセスログを保存している期間にも限界があるので、投稿から1か月以内には手続きに取り掛かるのが望ましいでしょう。
もっとも、法律の専門知識がないと、一定の費用を支出してまで開示請求をするべきか否かをご自身で判断するのが難しい場合もあると思います。
どうするのがベストな対応かをお悩みの場合は、インターネット問題に詳しい弁護士のご利用をご検討ください。