名誉毀損罪とは、不特定または多数に知れ渡る可能性がある公の場で、具体的な事実を挙げて、他者の社会的評価を低下させる危険を生じさせる犯罪です。
公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
【引用】刑法第二百三十条
そのため、事実だから仕方がないと誹謗中傷を我慢している人も、相手にやめさせたり慰謝料など被害に見合う賠償を請求したりできる可能性があります。
この記事では、事実の摘示とは具体的にどういう行為なのか、事実が摘示されない場合はどうなるのかについて紹介します。
事実の書き込みに対してにお悩みの方へ
事実による誹謗中傷でお悩みの場合は、まず弁護士に相談することをおすすめします。なぜなら、誹謗中傷の内容が事実であっても、名誉棄損として認められる可能性があるからです。
弁護士に相談することで、以下のようなメリットが得られます。
- 名誉棄損として認められる範囲かどうかがわかる
- 早い段階で相談することで、被害を最小限に抑えることができる
- 損害賠償を請求できるかどうかがわかる
- 依頼すれば、開示請求や裁判の手続きなど全て一任できる
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この記事に記載の情報は2023年03月28日時点のものです
誹謗中傷とはどこからを指すのか
SNSやインターネットがますます普及してきた昨今では、匿名性を利用した誹謗中傷が加速し、問題として表面化することも多くなりました。しかし、書き込まれた悪口やデマ情報を、どこから誹謗中傷と捉えるべきか悩む方も多いでしょう。まずは、どこからが誹謗中傷になり犯罪として捉えることができるのか、詳しく解説していきます。
そもそも誹謗中傷とは
そもそも誹謗中傷とは、「根拠のない悪口を言いふらして他人の名誉を損なう行いのこと」を指します。誹謗中傷という言葉は、人の悪口を言う「誹謗」と根拠のない内容で人を貶める「中傷」の2つを合わせた言葉です。
つまり、「死ね」「バカ」などの悪口はもちろんのこと、デマ情報などの根拠のない内容で人を貶めるといったことが誹謗中傷に該当します。詳しくは後述しますが、こうした誹謗中傷は、場合によって「名誉毀損罪」や「侮辱罪」に問われることもあります。
誹謗中傷と批判は何が違うのか
誹謗中傷と混同されがちなのが「批判」です。人の悪口を言ったり根拠のない内容で人を貶めたりする「誹謗中傷」に対し、批判とは「人の言動に対して、良いか悪いかの評価をすること」を言います。
つまり、誹謗中傷と批判の大きな違いは「事実に基づいているかどうか」です。本来誤りや欠点などを指摘する行為は必要な場面もあり、悪意を持って行われるものではありません。
そのため批判に対しては、あくまでそういう意見があるのだと受入れる必要もあるでしょう。
自分の書き込み・投稿が誹謗中傷にならないようにするには
先述したように、「根拠のない悪口を言いふらして他人の名誉を損なう行いのこと」を誹謗中傷と言いますが、具体的な基準が分かりづらいのも事実です。そこで、SNSやインターネット上で書き込みや投稿をする方は、自分の書き込みが誹謗中傷にならないように気を付ける必要があります。では、具体的にどのような対策を取れば良いのか、お伝えしていきます。
根拠がないことは書き込まない
まずは、根拠のない内容の書き込みはしないことです。事実無根の悪口やデマ情報は、れっきとした誹謗中傷に該当します。SNSやインターネットは匿名で投稿できることもあり、根拠のない嘘の情報がありふれています。「みんなやっているから自分も大丈夫」ではなく、誹謗中傷にならないように、根拠のない内容は書き込まないようにしましょう。
相手の名前を特定して悪口を書かない
続いては、相手の名前を特定した状態で悪口を書かないことです。そもそも悪口を書くこと自体良くないことですが、「〇〇キモイ」「〇〇死ねばいいのに」といったように相手を特定してしまうと誹謗中傷に該当します。また、悪口や人格を否定するような書き込みを何度も連続で行うと悪質性が高いと判断され、誹謗中傷になることがあるので注意が必要です。
弁護士に相談する
最後は、弁護士に相談することです。どこから誹謗中傷でどこから犯罪になるのか、素人がその判断をするのは中々難しいでしょう。そこで、自分の書き込みや投稿が誹謗中傷にあたるかどうか、法律のプロである弁護士に相談するのも1つです。弁護士は、過去の事例などをもとに適切な対処法を教えてくれるので、とても心強い存在と言えます。
投稿された内容が真実でも名誉毀損が認められる理由とは
投稿された内容が事実であり「そのような行為をした本人が悪い」と思われるような内容であっても、名誉毀損は該当します。認められる理由(根拠)について紹介します。
名誉毀損の内容が事実でも認められる理由とは?
名誉毀損では、成立要件に「事実の摘示」が含まれます。事実の摘示とは、具体的事実もしくは言動を具体的事実のように伝える行為です。
「具体的な事実」にあたるかどうかは、挙げられた内容の真偽が確認対象となり得るかどうかがポイントになります。
例えば、「○○部長は新人にセクハラをしている」という発言があった場合、セクハラ行為の有無が事実確認の対象です。
対して、「○○部長の目線がいやらしくてキモい」という発言については、目線がいやらしいかどうかはあくまで個人の主観であり、事実確認の対象とはなりません。
名誉毀損を構成する3つの要件
摘示の内容の真偽に関わらず、以下3つの要件をすべて満たしている状況であれば、名誉毀損は成立します。
- 具体的な事実を摘示している
- 当該事実が被害者の社会的評価を下げる可能性がある
- 公然の場である
社会的評価を下げる可能性があるかどうかは明確な基準はなく、社会常識に従って判断されます。
例えば、「あいつは詐欺師だ」や「不倫をしている」など、一般常識的に人の評価を下げる可能性のある事柄であればこれに該当するといるでしょう。逆に事実であっても相手の社会的信用を下げない場合は名誉毀損に該当しません。
事実の摘示がない場合は「侮辱罪」が成立する可能性がある
事実の摘示がなくても、他者の社会的評価を落とす可能性のある言動を公然と行えば、侮辱罪が成立します。
事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。
と酷評したりすれば、対象となった被害者への侮辱罪が成立する可能性があります。
名誉毀損と侮辱罪の違いは、上記で解説した具体的な事実を摘示しているかどうかです。このように名誉毀損が成立しなくても、侮辱罪に該当するケース
【引用】刑法第二百三十一条
例えば、不特定多数の人が見たり聞いたりする場(公然)で「○○は性格悪いから気をつけて」と言いふらしたり、「あの店の料理はゴミみたいな味がする」も少なくありません。
なお、民事事件では、事実の摘示がない場合でも、意見ないし論評としての域を逸脱したような場合には、名誉毀損と判断される可能性があります。
事実を摘示があっても名誉毀損が成立しない3つの条件
以下の3つの条件を満たしている場合は、事実の摘示があっても名誉毀損が成立しません。
- 挙げた事実に公共性がある
- 公益目的での行為である
- 情報の内容が真実であるか真実と信じるに足りる相当な理由がある
例えば、政治家による不正・不祥事に係る情報をインターネット上で公開することや会社の不正・不祥事についてインターネット上に公開する行為などは、その情報が真実または真実と信じるに足りる相当な理由がある状況であれば、名誉毀損とならない可能性があります。
以下では、上記の3つの要件について詳しく解説いたします。
発信・投稿した事実(情報)に公共性がある
公共性のある情報とは、具体的に挙げた事実が社会的利益のあるものです。
例えば、政治家の不祥事の事実は、有権者が投票の可否を判断する材料になるので、社会的に有益な情報と判断されます。
他方で、芸能人の不倫の事実などについては、芸能人のプライベートが公共性を有するとは考えがたく、事実の公共性が認められる可能性は低いと考えられます。
このように、挙げた事実に公共性が認められるか否かは、当該事実が社会的利益につながるかどうか、当該事実が多数国民の関心事と言えるかどうかがポイントになるでしょう。
事実の公開が公益目的である
これは事実を挙げる言動が、社会的利益を実現することを目的としていることを意味します。私怨その他図利加害の目的で行為に及んだ場合、挙げた事実に公共性があったとしても、名誉毀損の責任を免れることはできません。
例えば、自分の夫の不倫相手の会社に、不倫の事実を知らしめるようなメールを送信したり、『♯拡散希望』とSNSで個人間のトラブルを晒したりするような行動などは、私怨または相手を害するための行為と言えますので、免責するのは難しいでしょう。
ただし、基本的には、具体的な事実について十分な公共性があれば、これを公表する言動は公益を目的とするものと評価されやすいと思われます。
情報の内容が真実であるか真実と信じるに足りる相当な理由がある
名誉毀損の成立が否定されるには、具体的事実の公共性、事実を挙げる目的の公益性のほか、当該事実が真実である必要があります。
そのため、挙げた事実が内容虚偽である場合には、いかに高度の公共性のある事実であると訴えたところで、免責される余地はないと言えるでしょう。
ただ、行為者がこれを真実と誤信して然るべき場合(すなわち、真実と信じるに足りる相当な理由がある場合)には、犯罪の故意がない(違法性のない行為と認識していた)ということになり、犯罪は成立しません。
※名誉毀損罪は故意犯であり、過失は不処罰
名誉毀損が認められるよくあるネットトラブルの例
- 掲示板やSNSでの誹謗中傷
- 個人情報や写真の晒し
- 口コミサイトへの悪評・低評価
上記のようなネット誹謗中傷は、その内容・状況によって名誉毀損になる場合とならない場合があります。どのような状況であれば、名誉毀損が成立する可能性があるのか確認していきましょう。
トラブル例1:掲示板やSNSでの誹謗中傷
名誉毀損は「社会的評価を下げる可能性のある言動」でなければいけません。
そのため、誹謗中傷の対象がHNやあだ名などであって個人特定が難しいケースだと、現実に存在する被害者の社会的評価に影響が及ばないので、名誉毀損は成立しにくいと考えられます。
ただし、芸能人の芸名や漫画家のペンネームのように、その名称が特定個人を示すものと社会的に認知されている場合は、実名に対する誹謗中傷でなくても名誉毀損が成立する可能性があるでしょう。
トラブル例2:個人情報や写真の晒し
ネットに本人の承諾なく個人情報や肖像を晒す行為は、名誉毀損ではなく『肖像権侵害』や『プライバシー侵害』に該当する可能性があります。
ただ、個人情報と誹謗中傷を一緒に書き込まれていたり、顔写真に対して悪意のある編集がされていたりなど、社会的評価を落とす可能性がある場合は、名誉毀損が成立する余地はあるでしょう。
なお、肖像権侵害とプライバシー侵害は、法律上処罰対象とされていないため、警察へ相談しても刑事での対応はできません。ご自身での問題解決が難しい場合は、弁護士への相談をご検討ください。
トラブル例3:口コミサイトへの悪評・低評価
ネガティブな口コミもサイトの利用者にとって有益な情報になるため、悪評や低評価のすべてが名誉毀損として扱われることはありません。
しかし、口コミの内容が具体的な事実を摘示して社会的評価を下げる内容である場合には、名誉毀損が認められる可能性があります。
例えば、「このお店の店長は元ヤクザで客にもすぐ怒鳴る」という口コミは、ヤクザという具体的な事実を摘示しているので、名誉毀損に該当する可能性があるでしょう。
対して、「有名店の割にはそこまで美味しくなかった」や「店員のガラが悪かった」など、個人の主観に基づく口コミは、具体的な事実を摘示していないため、名誉毀損には該当しにくいと思われます。
裁判で名誉毀損と認められた事例(判例)
民事裁判で名誉毀損と認められ賠償を命じた事例を2つご紹介します。
どのような状況で名誉毀損が成立して、どのような判決(損害賠償の支払い)が出たのか、今後の対応を検討する一例として参考にしていただければ幸いです。
SNSでの誹謗中傷投稿による名誉毀損
自身の作成似顔絵を無断転載された漫画家である原告がツイッターに「全力で潰します。」と投稿したところ、無断転載をした被告に「殺害予告をされた」と投稿をされて、その投稿に対し名誉毀損が認められた事例。
【参考】平成24(ワ)24571 損害賠償等請求事件|裁判所
被告から原告に対して、以下の損害賠償(名誉毀損と著作権侵害の賠償)の支払いが命じられました。
- 著作権侵害の損害20万円の支払い
- 名誉毀損の慰謝料30万円の支払い
亡き夫に対する名誉毀損を遺族が訴えた事例
亡き夫の社会的評価を低下させるような記事をウェブサイト上に掲載するとともに、亡Aが逮捕連行される姿を撮影した写真を同ウェブサイト上に掲載した行為により、敬愛追慕の情を侵害され、精神的苦痛を被ったなどと主張して、新聞社である被告らに対し、損害賠償を求めた事件。
【参考】平成23年6月15日東京地裁 文献番号 2011WLJPCA06156001
記事の掲載は死亡した夫に対する、社会的な信用にただちにつながらないとして、名誉毀損を否定。一方で、掲載する必要がなかった写真の掲載により、遺族の敬愛追慕の情を受忍しがたい程度侵害したことが認められ、掲載回数に応じた慰謝料の支払いが命じられました。
- 60万円の慰謝料(掲載1回につき30万円、掲載が2回だったため)
- 弁護士費用を6万円(掲載1回につき3万円、掲載が2回だったため)
ネットでの名誉毀損に対する対処法
次に、ネットで名誉毀損の被害に遭った場合、削除依頼を出しつつ、加害者を特定し民事および刑事によって責任を追及します。
サイト管理者へ削除依頼を出す
大半のサイトでは、名誉毀損に該当するような誹謗中傷の投稿を利用規約で禁じています。サイト管理者に対して利用規約に違反していることを理由に削除を求めれば、投稿を削除してもらえる可能性は高いと思われます。
なお、削除依頼のルールや手続きはサイトによって異なります。例えば、5chに対して削除依頼をする場合は、5chの利用規約を確認の上、削除手続きに着手するようにしてください。
削除申請を出しても削除されない場合は、サイト管理者において削除の必要性はないと判断された可能性が高いです。
この場合、『裁判(仮処分)』での対応が必要になるケースもあり得ますので、一度弁護士へ相談されてみることをおすすめします。
加害者を特定して民事・刑事の責任を追及する
名誉毀損となるような投稿をした加害者に対して何らかの責任追及を望む場合は、まず加害者がどこの誰であるかを特定する必要があります。
ネット誹謗中傷の加害者を特定する手続きの流れは、以下の通りです。
- 名誉毀損の投稿サイトへIPアドレス開示請求
- 仮処分(※1.で開示に応じてもらえなかった場合)
- IPアドレスからプロバイダの特定
- プロバイダへ投稿者の個人情報開示請求
- 裁判(※4.で開示に応じてもらえなかった場合)
- 身元特定
ただ、サイトやプロバイダ(ネット事業者)にも個人情報の守秘義務があるため、素直に開示に応じてくれるケースはほとんどありません。
基本的には、裁判での対応が必要になるので、弁護士への依頼を検討したほうが良いでしょう。
なお、IPアドレスがサイトに保管されている期間は、サイトによりますが、3ヶ月が目安と言われています。この期間を過ぎた後だと加害者の特定ができなくなる可能性があるので、訴訟をする場合はできるだけ早めに手続きへ着手してください。
なお、2022年10月27日までに改正プロバイダ責任制限法が施行されます。改正プロバイダ責任制限法では、従来2段階の裁判手続が必要だった発信者情報開示請求を、1回の非訟手続によって行うことができるようになります。これにより、被害者側の負担が軽減すると考えられるでしょう。また、ログイン時情報の発信者情報開示請求は、一定の条件はあるものの、明文で認められるようになります。
まとめ|事実を提示した名誉毀損被害は弁護士へ相談
名誉毀損の被害に遭い困っている場合、これ以上被害が拡大する前に、IT問題に注力している弁護士への相談をおすすめします。
弁護士に早い段階で相談することで、裁判を行わず示談(話し合い)で解決できる可能性があります。
示談で解決できれば、時間や費用を大きく抑えることが可能です。また、示談解決までにかかった弁護士費用は、一部相手に請求できます。
弁護士への相談を検討している方は、被害ページのスクリーンショットやURLなど証拠をまとめましょう。
事実の書き込みに対してにお悩みの方へ
事実による誹謗中傷でお悩みの場合は、まず弁護士に相談することをおすすめします。なぜなら、誹謗中傷の内容が事実であっても、名誉棄損として認められる可能性があるからです。
弁護士に相談することで、以下のようなメリットが得られます。
-
名誉棄損として認められる範囲かどうかがわかる
- 早い段階で相談することで、被害を最小限に抑えることができる
- 損害賠償を請求できるかどうかがわかる
- 依頼すれば、開示請求や裁判の手続きなど全て一任できる
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