自分の顔写真を無断でSNSに投稿された方や、知らない間に撮影された写真がネット上に公開されてしまった方は少なくありません。
相手に責任を追及したくても、肖像権侵害にあたるかどうかを判断するのは難しいでしょう。
肖像権侵害の成否は、社会生活上受忍すべき限度を超えているかどうかで判断されます。
判断材料となるのは、被撮影者の社会的地位・活動内容・撮影の場所・目的・態様・必要性などです。
本記事では、肖像権侵害の判断基準や侵害が認められやすいケース、被害を受けたときの対処法を解説します。
慰謝料の相場や弁護士への依頼のメリットも紹介するので、ぜひ参考にしてください。
肖像権とは、許可なく自分の顔や姿を撮影・公表されない権利です。
法律で明示的に認められた権利ではなく、裁判例の積み重ねで確立した権利です。
肖像権には、一般の人にも認められる人格権としての側面と、著名人などに認められる財産権としての側面(パブリシティ権)があります。
人格権としての肖像権は、自分の容ぼう・姿態(顔・姿)をみだりに撮影・公表されない権利です。
法律上に明文はありませんが、以下の裁判例で、肖像権ないし肖像に関する人格的利益が法的保護に値すると明確に認められています。
【最高裁判所昭和44年12月24日判決(一部抜粋)】
個人の私生活上の自由の一つとし て、何人も、その承諾なしに、みだりにその容ぼう・姿態(以下「容ぼう等」 という。)を撮影されない自由を有するものというべきである。
引用元:裁判例結果詳細 | 最高裁判所
【最高裁判所平成17年11月10日判決(一部抜粋)】
人は、自己の容ぼう等を撮影された写真をみだりに公表されない人格的利益も有すると解するのが相当であり、人の容ぼう等の撮影が違法と評価される場合には、その容ぼう等が撮影された写真を公表する行為は、被撮影者の上記人格的利益を侵害するものとして、違法性を有するものというべきである。
引用元:裁判例結果詳細 | 最高裁判所
人格権としての肖像権が問題となるのは、自分が映っている写真を無断でSNSに投稿されたりするケースが典型例です。
財産権として扱う肖像権を、パブリシティ権といいます。
パブリシティ権とは、著名人の肖像や氏名のもつ顧客吸引力から生じる経済的な利益・価値を排他的に利用する権利です。
人格権としての肖像権と同様、法律上に明文はありませんが、以下をはじめとした多くの裁判例で人格権に由来する権利として認められています。
【最高裁判所平成24年2月2日判決(一部抜粋)】
人の氏名、肖像等(以下、併せて「肖像等」という。)は、個人の人格の象徴であるから、当該個人は、人格権に由来するものとして、これをみだりに利用されない権利を有すると解される(中略)。そして、肖像等は、商品の販売等を促進する顧客吸引力を有する場合があり、このような顧客吸引力を排他的に利用する権利(以下「パブリシティ権」という。)は、肖像等それ自体の商業的価値に基づくものであるから、上記の人格権に由来する権利の一内容を構成するものということができる。
引用元:裁判例結果詳細 | 最高裁判所
パブリシティ権が認められるのは、肖像などに顧客吸引力を有する人物、つまり芸能人や著名人など社会的に知名度がある人物に限られるでしょう。
パブリシティ権が問題となるのは、たとえばアイドルの写真を無断で商品に使ったり、本人の許可なく広告に利用したりするケースなどです。

プライバシー権は、私生活をみだりに公開されない権利や自己の情報をコントロールする権利です。
プライバシー権の保護対象は私生活全般の情報に及ぶため、肖像権よりも範囲が広いです。
肖像権侵害が成立する場合、同時にプライバシー権侵害が成立するケースも少なくありません。
肖像権を侵害された場合(侵害されそうな場合)は、差止請求・削除依頼・損害賠償請求などを検討できます。
なお、肖像権侵害そのものに、刑事罰の規定はありません。
許可なく撮影された写真・映像の公表(投稿・公開)前であれば、差止請求を検討できます。
差止請求とは、無断で撮影された写真や映像が公表される前に、公表や放送を法的に止める手続きです。
公表が差し迫っており、侵害が明らかな場合に認められます。
緊急性を要するため、裁判所の仮処分という手続きを利用するのが一般的です。
たとえば、テレビ番組での放送や週刊誌の発売予定を把握した場合、被害が拡大する前に裁判所の命令によって差し止めを求めます。
ただし、表現の自由や報道の自由として相当と認められる範囲内においては違法性が否定される場合もあります。
そのため、差止請求を検討する場合は、弁護士のサポートを受けるのがおすすめです。
自分の顔や姿が映った写真や映像が無断で公表(投稿・公開)された場合は、投稿者本人またはサイト管理者などに削除依頼が可能です。
投稿者本人が応じない場合は、サイト管理者やSNS事業者(コンテンツプロバイダ)に削除を依頼できます。
コンテンツプロバイダへの削除依頼には、以下の3つの方法があります。
| フォームなどからの削除依頼 | テレサ書式による削除依頼 | 削除の仮処分の申立て | |
|---|---|---|---|
| 概要 | サイト・SNSの専用フォームから依頼する方法 | 情報流通プラットフォーム対処法ガイドラインに則った書式(テレサ書式)による請求 | 裁判所に申し立てて、投稿の削除を命じてもらう手続き |
| 適しているケース | 任意での削除依頼に応じる可能性が高い場合 | 権利侵害が明らかな場合 | 権利侵害が明らかで、確実に削除したい場合 |
| 削除の見込み | サイト管理者・SNS事業者による | 削除依頼は対応してもらえるケースが多いが、IPアドレスなどの開示には慎重な場合がある | 裁判所の決定を得れば、速やかに削除・開示される |
| 削除までの期間 | 対応してもらえる場合は、数日〜2週間程度 | 数週間~1ヵ月程度 | 裁判所の決定が出るまでに2週間程度(裁判所による) |
自己の肖像権を侵害した相手に対し、損害賠償請求を検討できます。
損害賠償請求とは、肖像権侵害による精神的苦痛に対して、金銭での賠償を求める手続きです。
肖像権を侵害する行為は、不法行為として損害賠償の対象となり得ます。
ただし、匿名投稿の場合は、事前に発信者情報開示請求・発信者情報開示命令をおこない、投稿者を特定する必要があります。
投稿者を特定する手続きでは一定の費用がかかる一方、肖像権侵害のみを不法行為とする損害賠償金(慰謝料)は低額になる傾向です。
損害賠償請求を検討する場合は、事前に弁護士に相談のうえ、費用対効果を検討したほうがよいでしょう。
肖像権の侵害のみで刑事上の責任は問えません。
日本の刑法には、肖像権侵害を罰する規定はなく、犯罪には当たらないためです。
ほかの犯罪が同時に成立する場合を除き、警察に肖像権侵害の被害を訴えても、処罰を求めることはできません。
ただし、肖像権侵害に付随する行為によっては、以下のような犯罪が成立する場合もあります。
| 罪名 | 行為の例 | 法定刑(罰則) |
|---|---|---|
| 名誉毀損罪 | 人の顔や姿の写真とともに、不倫の事実・犯罪歴などを公表した | 3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 |
| 脅迫罪 | 「恥ずかしい画像をばら撒く」と告知して相手を脅した | 2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金 |
| リベンジポルノ防止法違反(公表罪) | インターネットを通じて私事性的画像記録を不特定または多数の者に提供した | 3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 |
肖像権侵害の成否の判断基準は、人格的利益の侵害が社会生活上受忍の限度(受忍限度)を超えるかどうかです。
受忍限度を超えるかどうかの判断には、以下の6つの要素が考慮されます。

各要素がどのように考慮されるか、以下で見ていきましょう。
写真に写っている人物が一般の人であれば侵害が認められやすく、公人であれば認められにくくなります。
政治家や著名人は社会的影響力が大きく、撮影や公表を一定程度受忍すべきとされる一方、一般の人は保護の必要性が高いと評価されるためです。
たとえば、複数のテレビ番組にコメンテーターとして出演する人物は、撮影・公表を一定程度受忍すべきと評価されやすいでしょう。
撮影された状況が他人に知られたくない私的な状況であるほど、違法性は高くなります。
私生活の領域や無防備な状態での撮影は、被撮影者への精神的苦痛が著しく大きいと評価されるためです。
たとえば、水着姿や泥酔状態、居眠りしている姿などは違法性が高くなります。
一方、公開イベントでのスピーチなど、公的な活動中の姿は違法性が下がります。
私的空間での撮影は違法性が高く、公共の場所での撮影は違法性が低くなります。
私的空間では他人の目を予期しておらず、プライバシー保護への期待が高いと考えられるためです。
たとえば、自宅内・ホテルの個室内などの私的な空間であれば違法性が上がります。
公園や公道などの公共の場所であれば違法性が下がります。
撮影の目的に正当性があれば侵害の程度は下がり、不当な目的であれば侵害の程度は高くなります。
社会の正当な関心に応える公益性の高い目的は表現の自由として保護される一方、私怨や晒し目的での撮影・公表は保護に値しないためです。
たとえば、公開を前提としないプライベート写真などを公表した場合は、違法性が高くなります。
報道目的で撮影された映像やファッション誌への掲載を目的として撮影された写真などは、当初の目的から逸脱しない限り、違法性は低くなるでしょう。
撮影時に拒絶の意思を示していた場合や隠し撮りの場合は違法性が高くなり、撮影を許容している場合は違法性が低くなります。
被撮影者の意思に反する撮影は、悪意や故意が認定されやすいためです。
たとえば、手でカメラを遮っているのに無理やり撮影した場合は違法性が高くなります。
一方、カメラに向かって笑顔でポーズをとっている場合は、違法性は低くなります。
多人数が写っていて、特定の人に焦点が当たっていない場合も同様です。
ただし、撮影について許諾が許容している場合であっても、公表について許諾がない場合には、権利侵害となります。
撮影・公表の必要性が高ければ侵害の程度が下がり、必要性が低ければ侵害の程度が上がります。
報道目的でも、被撮影者に不利益を与えてまで報道する必要性がないと判断されれば、肖像権を侵害する行為と評価される可能性があります。
たとえば、政治家の不正を暴くための撮影は、必要性が認められやすいでしょう。
一方、一般の人の軽微なトラブルを面白半分で拡散する行為は、必要性が認められず、違法性が高くなります。
被撮影者が明確に撮影を拒否した場合や私的空間での撮影は、肖像権侵害が認められやすいです。
撮影時は許可を得ていても、公表時に無断で不特定多数に拡散した場合も同様です。
撮影を拒否したにもかかわらず撮影された場合は、肖像権侵害が認められやすくなります。
「撮らないで」と口頭で明確に伝えたにもかかわらず、撮影された場合には、違法性が高くなるためです。
撮影を明確に拒絶した場合だけでなく、撮影を望んでいない様子が明らかな場合も、肖像権侵害が成立する可能性があります。
たとえば、手でカメラのレンズを遮る、顔を覆い隠すといった形で拒絶の意思を示した場合です。
自宅・ホテルの個室内などの私的空間での姿を撮影・公開された場合は、肖像権侵害が認められやすくなります。
他人に知られることを意図していない私的空間での撮影は、被撮影者に著しい精神的苦痛を与えるためです。
たとえば、自宅でリラックスしている姿を窓越しに撮影されたケースなどです。
なお、性的な画像の無断公開は、リベンジポルノ防止法違反に該当し得ます。
不特定多数が閲覧可能なSNSなどに無断で顔写真を公開された場合も、肖像権侵害が認められやすくなります。
SNSでの公開は不特定多数の目に触れるうえ、急速に拡散・保存されやすく、被撮影者の不利益が大きくなるためです。
許可を得て撮影した写真・映像でも、本人に断りなく公開した場合は、肖像権侵害が成立し得ます。
たとえば、友人と自分が映る写真を、相手の許可なく自分のSNSにアップしてしまうケースなどです。
公共の場で背景に映り込んだ場合や、顔が不鮮明で個人を特定できない場合は、肖像権侵害は認められにくいです。
出演者やスタッフとして参加したイベントの記録写真に写っているケースも同様です。
公園や道路などの公共の場で撮影された風景写真に、たまたま自分が映り込んでいた場合などは、肖像権侵害にはなりにくいです。
公共の場所では、他人の目に入ることをある程度予測・許容していると考えられるためです。
意図的に特定の人物を狙った撮影でない限り、社会生活上受忍の限度を超えるとは評価されにくいでしょう。
たとえば、観光スポットで記念撮影をしている人の背景に、通りすがりの自分が小さく写ってしまったケースなどです。
写真が不鮮明で自分の顔だと判別できない場合は、原則として肖像権侵害は成立しません。
肖像権は、許可なく自分の容ぼう・姿態(顔や姿)を撮影・公表されない権利です。
誰であるか判別できない場合は、権利が侵害されたとはいえません。
たとえば、複数の人が映り込んだ写真で個々の顔が判別不能なものや、モザイクやぼかしなどの処理が施されている場合などが該当します。
ただし、解像度を上げれば特定できる場合は、侵害のリスクが残ります。
出演者やスタッフとして参加したイベントの写真に自分が映っている場合も、肖像権侵害は認められにくいでしょう。
出演者やコンパニオンなどのスタッフは、撮影や公表を一定程度受忍すべき場合もあると考えられるためです。
業務や当事者として参加している以上、記録や広報のために撮影されることを予期・許容しているケースが多いでしょう。
ただし、宗教行事・同和関連・LGBTQ 関連などのイベントでの無断撮影・公開は、肖像権侵害が認められる可能性があります。
センシティブな類型のイベントに参加している人の中には、一般的に公表を望まない場合も少なくないためです。
インターネット・SNS上で肖像権侵害の被害を受けた場合は、証拠保全・削除依頼・発信者特定・損害賠償請求の順で対処するのが基本です。
以下で詳しく解説します。
まずは証拠を保全しましょう。
インターネット上・SNS上の投稿は削除や編集が容易であり、あとから確認できなくなるおそれがあるためです。
自分の写真を無断で投稿しているページの URL・投稿日時・投稿者のアカウント名がわかるよう、スクリーンショットを撮りましょう。
画面録画やウェブ魚拓の取得も有効です。
取得した証拠は、削除請求・発信者情報開示・損害賠償請求にも役立ちます。
証拠を確保でき次第、被害の拡大を防ぐために、削除を依頼しましょう。
投稿者本人に直接依頼する方法のほか、SNS運営会社の通報フォームを利用して削除申請をおこなう方法があります。
主なSNS事業者の申請先は以下のとおりです。
| SNS事業者 | 申請先 |
|---|---|
| 投稿 | Facebookヘルプセンター | |
| X(旧Twitter) | X上の攻撃的な行為を報告する方法 | Xヘルプ |
| Instagramでの嫌がらせやいじめの報告 | Instagramヘルプセンター | |
| TikTok | 問題の報告 | TikTok |
2025年4月施行の情報流通プラットフォーム対処法により、大規模SNS事業者には削除申出から原則7日以内の結果通知義務が課されています。
削除基準の公表も義務化されており、対応の迅速化・透明化が図られています。
任意での削除請求に応じてもらえない場合は、弁護士への依頼や削除を求める仮処分の申し立てを検討してください。
匿名投稿の場合は、発信者情報開示請求または発信者情報開示命令により、投稿者を特定しましょう。
損害賠償請求などを見据える場合は、投稿者の特定が必要です。
まずはSNS事業者やサイト管理者などのコンテンツプロバイダに、IPアドレスなどのアクセスログの開示を求めます。
裁判外での請求として、一般社団法人テレコムサービス協会が公表する書式(テレサ書式)を用いた請求方法があります。
IPアドレスが把握できたら、アクセスプロバイダに対して契約者情報の開示を請求し、最終的に氏名・住所の特定を目指す流れです。
任意請求で開示を受けられない場合は、発信者情報開示命令の申立てを検討しましょう。
発信者情報開示請求・発信者情報開示命令手続の詳細は、下記関連記事で詳しく解説しています。
投稿者を特定できれば、不法行為に基づく損害賠償(慰謝料)を請求できます。
慰謝料の金額は、以下のような要素を総合的に考慮して算定します。
まずは示談交渉による解決を試みるのが通常ですが、合意に至らない場合には訴訟提起も検討可能です。
ただし、ほかの権利が侵害されている場合を除き、賠償金(慰謝料)が低額になるケースもあります。
事案によっては交渉による解決のほうが費用対効果が高い場合もあるため、損害賠償を検討する場合は、事前に弁護士への相談をおすすめします。
肖像権侵害のみを不法行為とする損害賠償(慰謝料)の相場は、10万円~50万円程度です。
虚偽の内容のコメントや記事と共に写真を公表された場合は、名誉権の侵害を含め、相場以上の慰謝料が認められる可能性があります。
また、リベンジポルノのように精神的被害が深刻な場合には、100万円を超える慰謝料が認められるケースもあります。
肖像権侵害に基づく損害賠償請求権の消滅時効は、以下のいずれか早い方です。
匿名投稿の場合は、加害者を特定した日から3年の時効のカウントが始まります。
投稿者が不明なまま肖像権侵害行為から20年が経過した場合も、時効により権利が消滅します。
時効が迫っている場合は、内容証明郵便の送付や訴訟の提起などの対応が必要です。
なお、差止請求や削除請求には時効の概念はありません。
弁護士に相談すれば、肖像権侵害が成立するかどうか、損害賠償を請求できるかどうかを適切に判断してもらえます。
肖像権は法律に明文規定がなく、裁判例で確立した権利であるため、侵害の成否を判断するのは容易ではないでしょう。
弁護士に相談すれば、専門的な法律知識や過去の裁判例の傾向から適切に判断してもらえます。
インターネット上のトラブルは、投稿者がわからない場合も多いです。
投稿者の特定には時間的・経済的な負担がかかる一方、肖像権侵害のみでは、高額な慰謝料を回収できるケースは少ないのも実情です。
他方、肖像権侵害が成立するケースでは、同時にプライバシー侵害や名誉権侵害が成立する場合も少なくありません。
弁護士に相談すれば、権利侵害の有無や今後の見通しを踏まえて最適な解決策を提案してもらえます。
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自分が投稿した写真を他人に無断で転載・拡散された場合も、肖像権侵害が成立する可能性があります。
ただし、自分で投稿した時点で不特定多数に閲覧できる状態であれば、権利侵害と認められる可能性が低くなる場合もあります。
一部のフォロワーのみが閲覧できる状態で投稿した写真を、許可なく拡散された場合は、権利侵害が認められる余地があるでしょう。
公開済みの写真でも、悪意ある目的での無断転載は肖像権侵害にあたるとした裁判例もあります(東京地裁令和2年9月24日判決)。
なお、肖像権侵害にあたらない場合でも、自分が撮影した写真を無断転載されたときは、著作権侵害を主張できるケースもあります。
学生の写真を卒業アルバムとして卒業生に配布するのは、目的の正当性と配布範囲の限定性から、肖像権侵害は認められにくいでしょう。
クラス写真や卒業写真には、クラスの構成員を特定するとともに在校したことの記録を残すといった正当な目的があります。
ただし、学校のホームページに生徒の写真を掲載する場合は、被撮影者となった児童・生徒の保護者から許諾を得る必要があります。
撮影行為が、職務の適正な監視や公共の利益に資するものであれば、肖像権の侵害にあたらないでしょう。
しかし、威圧的で業務を妨害する方法で撮影した場合は、肖像権侵害が成立する可能性があります。
たとえば、職務質問や所持品検査が適法かどうか確認するために撮影した場合は、違法な侵害とはいえないでしょう。
警察官は公人としての性格を持つため、職務遂行中は撮影や公表を一定程度受忍すべきと考えられるためです。
一方、カメラを警察官の顔に密着させるなど威圧的・妨害的な撮影は、肖像権侵害に加えて公務執行妨害が成立する可能性があります。
肖像権とは、自分の容ぼう・姿態(顔・姿)をみだりに撮影・公表されない権利です。
人格的利益を財産権として扱う場合、パブリシティ権といいます。
肖像権を侵害された場合(侵害されそうな場合)は、差止や削除、損害賠償の請求が可能です。
侵害にあたるかは被撮影者の地位や撮影の場所・目的などのさまざまな要素から、受忍限度を超えるかどうかで判断されます。
撮影を拒絶した場合や私的空間での無断撮影・公開は、侵害が認められやすい傾向にあります。
被害に遭った際は、証拠を確保したうえで、削除依頼・発信者の特定・慰謝料請求を進めましょう。
肖像権侵害の成否の判断や各種手続きには専門知識が不可欠です。
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