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私的情報・画像流出 弁護士監修記事 更新日:

プライバシー侵害とは|成立要件と事例(判例)で具体例を解説

弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士
監修記事
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プライバシー侵害とは、プライバシー情報を他者にみだりに公開されない権利(プライバシー権)を侵害する行為のことです。

もしも、あなたが誰にも公開していない個人的な事柄を言いふらされるようなことがあれば、それはプライバシー侵害となり得ます。

では、一体どのような状況がプライバシー侵害として扱われるのでしょうか。

この記事では、プライバシー侵害とは具体的にどのような行為なのか、具体例や事例(判例)を用いて解説します。

個人情報関連のトラブルにお悩みの場合は、参考にしてみてください。

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プライバシー侵害が成立する要件

プライバシー侵害は、以下の3つの要件を満たす情報が公開された場合に、成立すると判断される可能性があります。

  1. 私生活上の事実または事実と受け取られる可能性がある
  2. ①の事実が公開されていないものである
  3. ①の事実が通常は公開を欲しないものである

例えば、「あいつは親戚から多額の借金をしている」という事実はプライバシー情報を構成する可能性が高いと思われます。

対して、「あいつは朝食にパンを食べたことがある」という事実は、公開されようがされまいがどうでもいい情報ですので、プライバシー情報ではないと評価される可能性があります。

具体的にどんな情報が該当するのか

例えば、プライバシー情報の具体例としては、以下のような情報が挙げられます。

  • 前科,過去の犯罪行為
  • 疾病(持病・病歴)
  • 身体的特徴
  • 指紋
  • 日常生活・行動・住所
  • 身分行為(結婚・離婚)
  • 犯罪捜査としての情報(の取得)

これらは例示列挙であり、上記の3つの成立要件を満たしていれば、これ以外の情報もプライバシー情報となり得ます。

プライバシー権は憲法上保障された基本的人権

プライバシー権は、日本国憲法十三条の解釈により、保障される基本的人権であると考えられています。

第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

引用元:日本国憲法第十三条

もっとも、上記のように、プライバシー権は憲法の規定によって明確な定義が定められているものではないため、時代の変化にしたがって解釈が変わる余地はあります。

例えば、情報化が進んだ現代では、プライバイシー権を自己の情報をコントロール権利であると考える説も有力です。

プライバシー権が問題となった事例(判例)

プライバシー侵害の判例

裁判でプライバシー侵害が成立した事例(判例)を3つご紹介します。

事例(判例)

判決

①X(旧Twitter)への写真の無断投稿

損害賠償30万円の支払い

②地方自治体による住所の情報漏洩

損害賠償110万円の支払い

③警察による正統性のない職務質問

損害賠償3万円の支払い

<判例内で登場する用語確認>

  • 原告:プライバシー侵害で訴えた側
  • 被告:プライバシー侵害で訴えられた側

X(旧Twitter)への写真の無断投稿

原告が知人と合同で撮影してX(旧Twitter)上にアップした写真を、被告が自身のX(旧Twitter)アカウントに無断で複製してアップし、著作権侵害およびプライバシー侵害で損害賠償請求がされた裁判です。

X(旧Twitter)への無断アップロード

原告が、被告において原告が被写体となっている写真1点を原告に無断で複製してインターネット上のX(旧Twitter)上にアップロードした行為が、原告の当該写真に係る著作権(複製権及び公衆送 信権)、肖像権及びプライバシー権を侵害すると主張して、被告に対して損害賠償請求をした裁判。

【詳細】平成29(ワ)41277 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟 

判決

  • 損害賠償47万1,500円の支払い(プライバシー侵害に対する損害:30万円)
  • 訴訟費用の1/4を被告の負担とする

写真の内容が、原告が縄で束縛されて吊るされているというものであり、原告を知っている人に対して公開を欲しない程度が高いものであると判断され、プライバシー侵害が成立しました。

地方自治体による住所の情報漏洩

原告の配偶者が、被告(住民基本台帳の担当者)が原告の配偶者の元交際者に住所を伝えたことにより殺害され、原告がその行為に対してプライバシー侵害を主張して損害賠償請求がされた裁判です。

地方自治体が個人情報(住所)を流出

原告の配偶者が、元交際相手からストーカー行為の被害を受けており、住民基本台帳事務におけるDV等支援措置の対象者となっていたが、元交際相手から住所を特定されて殺害された。

本件は、総務部税課に勤務していた被告が、原告の配偶者の夫を装った元交際者に、住民基本台帳に記載された住所を伝えたことに対して、プライバシーを違法に侵害されたとして損害賠償請求をした裁判。

【詳細】平成28(ワ)328 慰謝料請求

判決

  • 損害賠償110万円の支払い
  • 訴訟費用の1/10を被告の負担とする

原告の配偶者の元交際者は、元交際者のDV等支援措置の対象者になっているにも関わらず、被告は身分確認を怠り住所を伝えてしまいました。

この情報漏洩により、プライバシー侵害に対する損害賠償が認められました。

警察による正統性のない職務質問

原告は被告から所有かばんの所持品検査を求められて拒否をしたが、応援の警察官を呼ばれて長時間説得がされ、最終的にかばんの検査に応じました。

原告が、この取り調べの違法性を主張して、損害賠償請求がされた裁判です。

警察による正当性のない職務質問

警察署の警察官らによる職務質問及び所持品検査を受けた原告が、当該所持品検査等の行為が警察官職務執行法2条で認められる範囲を超える違法なものであり、それにより精神的苦痛を被ったと主張して、国家賠償法1条1項に基づき、被告に対し損害賠償請求をした裁判。

【詳細】平成27(ワ)367  国家賠償法 

判決

  • 損害賠償3万円の支払い
  • 訴訟費用の3/10を被告の負担とする

この所持品検査は職務質問を続ける必要性と緊急性を欠いたものであり、また原告の承諾が真意によるものとも認められないため、プライバシー侵害の高い行為であると判断されて、損害賠償請求が認められました。

成立要件を満たしても違法にならないケース

プライバシー侵害の例外

上記の3つの成立要件をすべて満たしていても、プライバシー侵害が認められないケースがあります。

それは、情報の公開に高度の公益性が認められる状況です。

例えば、一般人による近隣トラブル等の事実には公共性・公益性共に認め難いのでこれを公開する行為はプライバシー権侵害が成立し得ます。

しかし、政治家による近隣トラブル等の事実はその内容によっては公共性・公益性がある(例えば、政治家としての資質に関わる事項である)場合もあり、この場合はプライバシー権の保護よりも、国民の知る権利が優先されると判断される可能性があります。

このように情報の内容によって、プライバシー権保護の要請よりも国民の知る権利が優越すると判断された場合、プライバシー権侵害とは認められないことになります。

ブライバシー侵害は名誉毀損としても扱われる

プライバシー侵害行為は、公開する内容によっては『名誉毀損』でもあると評価されることがあります。

名誉毀損とは、不特定多数の人に伝わる又は伝わる可能性のある場で、人の社会的評価を落とす具体的事実を指摘する行為です。

例えば、「あいつは過去に2回逮捕されている」というプライバシー情報は、これを公表すればその人の社会的評価が低下する可能性が高いので、プライバシーの侵害行為であると共に、名誉毀損行為であるといえそうです。

なお、プライバシー侵害と異なり、名誉毀損には刑事罰が予定されています。

被害を警察に告訴して刑事裁判で有罪が確定した場合、加害者には3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。

第二百三十条
第一項:公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
第二項:死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。

引用元:刑法第二百三十条

プライバシー侵害を訴えるには

プライバシー侵害での訴訟

プライバシー侵害の被害で損害賠償請求をするには、加害者の身元を特定する必要があります。

もしネットでの被害の場合には、サイトやプロバイダ(ネット事業者)に対しての『開示請求』も必要になるでしょう。

その後、裁判ではプライバシー侵害の被害を受けた事実を立証しなくてはいけません。

基本的には、これらの手続きは弁護士に依頼して対応するケースが一般的です。

まずは、弁護士に相談をして訴訟が可能な案件であるかを確認してください。

訴訟費用や損害賠償の目安、裁判にかかる労力などを相談して、慎重に検討されることをおすすめします。

なお、2022年10月27日までに改正プロバイダ責任制限法が施行されます。改正プロバイダ責任制限法では、従来2段階の裁判手続が必要だった発信者情報開示請求を、1回の非訟手続によって行うことができるようになります。これにより、被害者側の負担が軽減すると考えられるでしょう。また、ログイン時情報の発信者情報開示請求は、一定の条件はあるものの、明文で認められるようになります。

加害者へ請求できる慰謝料の相場

プライバシー侵害の被害で、加害者へ請求できる慰謝料の相場は、以下のとおりです。

誹謗中傷の内容

慰謝料の相場

名誉毀損(一般人)

10〜50万円

名誉毀損(事業主)

50〜100万円

プライバシー侵害

10〜50万円

プライバシー侵害(ヌード写真の公開)

100万円以上

これらの相場はあくまでおおよその目安です。

一口にプライバシー侵害といっても、被害内容で損害は大きく変わるので、法律相談での見積もりを参考にしてみてください。

訴訟に必要になる費用の相場

プライバシー侵害被害の民事訴訟にかかる費用の相場は、以下のとおりです。

※法律事務所によって金額や料金体系は異なる

着手金

20万円

報酬金

賠償金の約16%

裁判費用

3万円

また、ネットでプライバシー侵害をした加害者を特定する場合は、以下の開示請求の費用も必要になります。

 

着手金

報酬金

裁判費用

削除依頼・IP特定

裁判外

5万円~10万円

5~10万円

×

裁判

約20万円

約15万円

3万円

発信者の身元特定

裁判外

約5~10万円

約15万円

×

裁判

約20~30万円

約15~20万円

6万円

なお、加害者へ訴訟費用を請求することも可能ですが、いくら認められるかは裁判官の判断次第です。

必ず全額請求ができるわけではないので、その点にはご留意ください。

まとめ

プライバシー情報について明確な定義規定はありませんが、以下の要件をすべて満たす場合は、当該情報はプライバシー情報であると評価される可能性が高いです。

  • 私生活上の事実または事実と受け取られる情報である
  • 公開まで一般の人々に知られていなかった情報である
  • 通常であれば公開をほっしない情報である

自己判断が難しいケースも多いかと思われます。もし訴訟するべきかを検討されている場合には、弁護士の法律相談サービスを活用してみてください。

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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。
ベンナビIT(旧IT弁護士ナビ)編集部
編集部

本記事はベンナビIT(旧IT弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビIT(旧IT弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。
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