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秘密保持契約書とは、他社と取引や共同研究を行う際に、どの提供情報をどの範囲まで使っていいのか、漏えいした場合はどうするのかなどを取り決めるために締結される契約書です。
この秘密保持契約書に貼る収入印紙はどのくらいの額なのか、そもそも必要なのかあまりよくわからない…という方も多いのではないでしょうか。
この記事では、以下のことについてご紹介します。
結論からいえば、原則として秘密保持契約書に収入印紙の貼付は不要です。
不要である理由は、秘密保持契約書が印紙税法上の課税文書(印紙税が課せられる文書)ではないからですが、ではどのような文書を“課税文書”というのでしょうか?
国税庁のウェブサイトには課税文書かどうかの判断材料が掲載されており、以下の3つすべてに該当する文書は、収入印紙を貼る必要があります。
(1) 印紙税法別表第一(課税物件表)に掲げられている20種類の文書により証明されるべき事項(課税事項)が記載されていること。
(2) 当事者の間において課税事項を証明する目的で作成された文書であること。
(3) 印紙税法第5条(非課税文書)の規定により印紙税を課税しないこととされている非課税文書でないこと。
(1)の課税物件表(収入印紙が必要な文書)は国税庁のこちらから確認できます。
秘密保持契約書は、課税物件表のいずれにも当てはまらないため、印紙税を納める必要はありません。
そもそもなぜ文書に印紙税が課税されるのでしょうか?
2005年(平成17)3月15日の小泉純一郎内閣総理大臣の答弁書では、印紙税について以下のように述べています。
経済取引に伴い作成される文書の背後には経済的利益があると推定されること及び文書を作成することによって取引事実が明確化し法律関係が安定化することに着目して広範な文書に軽度の負担を求める
簡単にいえば、①契約書の作成の裏に経済的利益があると考えられる、②契約書があることでその契約の法律関係が安定する(≒契約書の存在が契約の保証を成立させている)ことから、そのかわりに税金負担してもらうということになっています。
課税対象となる文書は印紙税法に明記されていますので、文書が課税対象か否かは法律を見れば判断できます。
なお、印紙税法が課税すべき文書を選別している基準は明確ではありません。
課税文書であるか、不課税文書であるかは、契約書作成によって生まれる経済的利益の有無が大きいようです。
これまでの説明通り、通常、秘密保持契約書への収入印紙の貼付は必要ありません。
ただし、課税文書であるかどうかは文書の名称ではなく、実際に記載されている個々の内容によって判断されるため、もしも請負契約や取引基本契約などの課税文書と認められるような条項の記載がある場合、秘密保持契約書という名称であっても課税文書にあたる可能性があります。
したがって作成文書が秘密保持契約書という書類名であっても、一般的な秘密保持契約の内容だけではなく取引条件等も含んでいる場合には、前述した課税文書にあたる3つの条件にあたるかどうかを確認したほうがよいでしょう。
税額のパターンは2つあり、1通○○円と定額のパターンと、契約額によって額が変動するパターンです。
印紙税額は文書の種類によって異なり、以下のリンクから確認できます。
【参考】
国税庁:No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで
国税庁:No.7141 印紙税額の一覧表(その2)第5号文書から第20号文書まで
国税庁:印紙税額の一覧表(こちらから一覧のダウンロードができます)
不要にもかかわらず収入印紙を貼付してしまった場合、印紙税過誤納確認手続を行うことで、還付を受けられる可能性があります。
納税地の税務署に印紙税過誤納確認申請書を提出しましょう。
印紙税過誤納確認手続については、以下の国税庁のページをご覧ください。
参考:国税庁 [手続名]印紙税過誤納[確認申請・充当請求]手続
課税文書に収入印紙を貼付していなくても、契約が無効になるわけではありません。ただし、印紙税法違反によるペナルティの対象になる可能性があるので注意が必要です。
収入印紙を貼付しなければいけないのにもかかわらず、貼らずに文書作成時までに印紙税を納付しなかった場合、印紙税法違反のペナルティとして過怠税(かたいぜい)を納めなければなりません。
過怠税の額は以下の3つのケースによって異なります。
同じ貼り忘れでも、税務調査での発覚(3倍)か自己申告(1.1倍)かで過怠税が大きく異なります。
収入印紙の貼り忘れに気づいた場合は、早めに所轄の税務署に印紙税不納付事実申出書を提出し、印紙税不納付事実申出手続を行いましょう。
印紙税不納付事実申出手続については、国税庁のこちらのページで確認できます。
ところで、罰則対象の3つ目、“収入印紙が消印されていない”とありますが、どういうことでしょうか?
印紙税の納付は、対象の課税文書に印紙税法で定められた税額分の収入印紙を貼り付けることで行われます。
その際に文書の作成者かその代理人、使用人、その他従業者によって、収入印紙の彩紋(収入印紙の絵柄の部分)と課税文書とにかけて印章または署名で消印をする必要があります。(印紙税法第八条の2)
収入印紙に何も印がされていないと再利用ができてしまいます。
それを防止するための印が、消印です。
参考までに、収入印紙の消印の方法として認められるケースと認められないケースを以下にご紹介します。
消印の印として、法人商号や屋号を用いるのは認められていますが、線を引くだけでは認められません。
国税庁による判断基準を確認しても課税文書であるかどうか判断できない場合は、納税地の税務署に契約書を持参し、確認してもらうことが確実な確認方法です。
いかがでしたでしょうか。
課税条項が記載されていない、通常の秘密保持契約書であれば、印紙税は不課税、つまり収入印紙を貼付する必要はありません。
記載内容に不安があり、もしかしたら課税文書になるかもしれないと思う場合は、所轄の税務署に確認してみましょう。
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