インターネット上の誹謗中傷で相手を特定したいとき、開示請求に何日かかるのか、ログが消える前に間に合うのかが気になる方は少なくありません。
結論からいえば、発信者情報開示請求で相手が特定できるまでには、最短で3ヵ月ほどかかります。
ただし、通信ログの保存期間が過ぎると特定が難しくなるため、迅速に行動しなければなりません。
本記事では、発信者情報開示請求の基礎知識や期間の目安、請求の流れ5ステップを解説します。
費用や注意点も解説するので、自分のケースで間に合うのかを見極めたい方は、ぜひ参考にしてください。
発信者情報開示請求とは、インターネット上に誹謗中傷などを書き込んだ発信者(加害者)の情報を特定するための手続きです。
制度の根拠になっているのが、情報流通プラットフォーム対処法です。
正式名称は特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律といいます。
本法律により、インターネット上で権利を侵害された被害者が、サイト運営者や通信事業者に対して加害者の情報開示を求められます。
開示が認められるためには、下記2つの要件を満たさなければなりません。
| 要件 | 概要 |
| 明らかに権利が侵害されている | ただの不快な表現ではなく、下記のように明らかに被害者の権利を侵害していなければならない。 ・事実の摘示によって被害者の社会的評価を低下させる行為(名誉毀損) ・根拠なく被害者の人格を貶める行為(名誉感情侵害) ・個人情報を無断で公開する行為(プライバシー侵害) |
| 開示を求める正当な理由がある | 損害賠償請求するため、のような、加害者の情報を開示してもらう正当な理由が必要。 好奇心からの開示請求は認められない。 |
従来の開示請求は手続きが複雑で、特定までに1年以上かかるケースもありました。
しかし2022年10月に施行された改正により発信者情報開示命令が創設されたことで、手続きが大幅に迅速化されています。
発信者情報開示請求で把握できるのは、加害者の下記のような情報です。
もっとも、いきなり氏名や住所がわかるわけではありません。
まずはサイト運営者からIPアドレスとタイムスタンプが開示され、次に通信事業者から個人情報が開示されるという流れです。
開示される情報は、法的に必要な範囲に限られます。
関係のない個人情報まで無制限に開示されるわけではないと理解しておきましょう。
発信者情報開示請求にかかる期間は、新しい発信者情報開示命令を使っても、最短で3ヵ月ほどです。
従来の手続きでは、サイト運営者への請求と通信事業者への請求を別々におこなう必要があり、特定までに半年から1年ほどかかっていました。
しかし発信者情報開示命令の導入で、2つの手続きを一体的に進められるようになり、3~6ヵ月程度まで短縮されています。
媒体ごとの特定のしやすさは、運営会社が国内か海外かで変わります。
おもな媒体の傾向は、下記のとおりです。
| 媒体 | 特定のしやすさ |
| 爆サイ・したらば・ホスラブ など | 国内運営のため、最短に近い期間で進みやすい |
| X(旧Twitter)・インスタグラム・YouTube・Google・カカオトーク など | 海外運営で連絡や手続きが長引きやすい |
またトレントを使った違法ダウンロードのように、通信の仕組みが特殊なケースでも特定には時間がかかりがちです。
詳しくは後述しますが、ログの保存期間が過ぎると、特定ができなくなる恐れもあるため、できる限り迅速に動くのが重要になります。
発信者情報開示請求は、証拠の確保から損害賠償までおおまかに5つのステップで進みます。
本章では、各ステップでかかる時間の目安とあわせて、順に見ていきましょう。
被害に気づいたら、まず該当の書き込みやページのスクリーンショットとURLを速やかに保存しましょう。
証拠がなければ、加害者の特定ができません。
証拠を保存するときは、URL・投稿日時・アカウント名・前後のやり取りまでわかるように画面全体を残します。
一部分だけを切り取ると、誰がいつ投稿したのかを証明しづらくなるためです。
個々の投稿内容だけでは誹謗中傷になるかがわかりにくい場合は、文脈や経緯などがわかるよう、関連する投稿を全て撮影するなどして証拠を確保しましょう。
確保した証拠をもとに、裁判所へ発信者情報開示命令を申し立てます。
発信者情報開示命令は、コンテンツプロバイダ(サイト運営者)とアクセスプロバイダ(通信事業者)に、裁判所を介して加害者の情報開示を求める手続きです。
申立てにかかる期間は、証拠確保に動いてからおよそ1週間~2週間です。
本申立てでは、投稿内容が権利侵害にあたることや、発信者情報の開示を受ける正当な理由があることを主張・立証しなければなりません。
証拠や主張が不足していると、申立てが認められない可能性もあります。
認められる可能性を高めるためにも、早い段階から弁護士のサポートが欠かせません。
開示命令の申立てが認められると、裁判所はまず提供命令を出します。
サイト運営者から通信事業者へIPアドレスなどの情報が渡り、加害者を絞り込む作業が進みます。
開示と提供の命令が下されるまでは、申立てからおよそ1ヵ月~2ヵ月ほどかかります。
しかしプロバイダが情報を保存できる期間は3ヵ月程度しかありません。
開示・提供の命令にあわせて、通信事業者が持つ通信ログを手続き中に消させないための消去禁止命令も申し立てているケースもあります。
その場合は、消去禁止命令も同時に下されるのが一般的です。
裁判所が開示を決定すると、通信事業者から加害者の氏名や住所が被害者へ開示されます。
証拠の確保から数えて、早ければ3ヵ月ほどで相手にたどり着ける計算です。
開示の前には、通信事業者が加害者へ「情報を開示してよいか」を確認する意見照会がおこなわれます。
とはいえ、加害者が開示を拒んでも、裁判所が権利侵害を認めれば情報は開示される仕組みです。
相手が誰なのかが確定すれば、損害賠償や刑事告訴といった行動に移れるようになります。
プロバイダが情報を保存できる期間は3ヵ月程度と短いため、証拠が消える前にすぐに行動に移しましょう。
加害者の特定後、希望する場合は損害賠償請求と刑事告訴の手続きの2つで責任を追及できます。
開示請求はあくまで相手を突き止めるための手段であり、本当の目的は特定後の被害回復にあります。
損害賠償は、まず示談交渉から始めるのが一般的です。
話し合いで慰謝料や弁護士費用の一部を請求し、まとまらなければ損害賠償請求訴訟に発展することもあります。
一方の刑事告訴とは、被害者が警察などの捜査機関に犯罪の事実を申告し、加害者の処罰を求める手続きです。
明らかに悪質な投稿であれば、告訴によって刑事責任を追及できます。
どちらを選ぶかは、被害の内容や求める結果によって変わってきます。
二度と同じ被害を受けないためにも、特定できた段階で弁護士と方針を相談しておきましょう。
発信者情報開示請求にかかる主な費用は、裁判所費用と弁護士費用の2つです。
本章では、それぞれの内訳と相場を順に解説します。
裁判所費用とは、発信者情報開示請求を進めるために裁判所へ納める費用です。
東京で開示請求をする場合は、下記を用意しておきましょう。
| 申立手数料 | 1件につき1,000円 |
| 郵便料 | レターパックライト(430円 ※2026年7月時点) |
なお、費用は裁判所によって異なるため、詳しくは裁判所のWebサイトから確認してください。
弁護士に発信者情報開示請求の手続きを依頼する場合は、下記の費用がかかります。
| 依頼状況 | 費用相場 |
| サイト運営者に開示請求をする場合 | 着手金:20万円程度 成功報酬金:15万円程度 |
| 通信事業者に開示請求する場合 | 着手金:20万円~30万円 成功報酬金15万円~20万円 |
サイト運営者と通信事業者の、双方に開示請求する場合は、70万円~85万円がかかると考えてください。
なお、法律事務所によって料金が異なるため、上記は参考程度に留めておきましょう。
初回相談を無料にしている事務所も多く、費用をかけずに見積もりを出してもらうのも可能です。
無料相談を活用して、依頼する前に、見込まれる慰謝料額とかかる費用のバランスを確認しておきましょう。
発信者情報開示請求をするときは、ログの保存期間と特定が難しいケースもある点について注意してください。
詳しく解説します。
開示請求で相手を特定できるのは、通信ログが残っている間だけです。
通信事業者が保存するアクセスログの期間は一般的に3~6ヵ月程度で、期間を過ぎると証拠が消え、特定が難しくなります。
いつまで遡れるかは通信事業者ごとに異なり、投稿から時間が経つほど特定できる可能性は下がっていきます。
泣き寝入りを避けるためにも、被害に気づいたら早めに動きましょう。
判断に迷う場合は、ログが消える前に弁護士へ相談してみてください。
無料の公衆Wi-Fiや海外のサーバー、VPNなどの匿名化ツールを経由した投稿は、特定が難しくなるケースがあります。
とくに、VPN(通信経路を暗号化して接続元を隠す仕組み)が使われると、発信者本人までたどり着けない場合も少なくありません。
ログが残っていても、技術的な壁に阻まれて個人にたどり着けないケースもあります。
また、投稿内容が法的な権利侵害と認められず、裁判所に開示を却下されるおそれも残ります。
特定できるかどうかは、投稿の内容や媒体次第です。
依頼前に、弁護士へ特定の見込みを診断してもらうと、無駄な費用や時間を避けられます。
複雑でスピードが求められる開示請求は、弁護士に依頼するのがおすすめです。
本章では、弁護士に任せる4つのメリットを順に紹介します。
開示請求で最初につまずきやすいのが、そもそも自分のケースで請求が認められるのかという判断です。
弁護士に相談すると、投稿内容が法的な権利侵害にあたるか、発信者を特定できる見込みがあるかを事前に診断してくれます。
たとえば感情的に深く傷つく投稿でも、法律上は名誉毀損や名誉感情侵害に当てはまらないケースは珍しくありません。しかし弁護士なら、開示が認められる基準を満たしているかどうかを、過去の判例をふまえて見極めてくれます。
見込みが薄い手続きに費用や時間をかけるリスクも、着手前に避けられるのがメリットです。
無理に進めるべきか様子を見るべきかまで含めて、現実的な見通しを示してくれます。
弁護士に相談すると、証拠の集め方や今後の交渉方針など、状況に合わせた個別のアドバイスを受けられるのが強みです。
具体的な指示をもらえるため、証拠の不備で特定に失敗するリスクを減らせるでしょう。
被害を受けた直後は、冷静な判断が難しくなりがちです。
相手からの連絡に反論すべきか無視すべきかといった対応も、法的な観点で助言してもらえます。
弁護士に依頼すると、複雑な手続きを正確かつ迅速に進められるため、特定できる可能性が高まります。
発信者情報開示命令は迅速に進めてくれる特徴がありますが、申立書の作成や権利侵害の立証には高度な専門知識が欠かせません。
個人では数ヵ月かかる準備も、弁護士ならすぐに着手できます。
通信ログを消させないための手続きもおこなってくれるため、証拠が消えるリスクも減るでしょう。
弁護士に依頼すると、慰謝料請求や示談交渉、刑事告訴の手続きまで一貫して任せられるのが強みです。
加害者と直接やり取りすると、逆上されたり、より侮辱的な内容を投稿されたりなどの二次被害を受ける恐れがあります。弁護士が代理人として間に入れば、相手と顔を合わせずに交渉を進められます。
妥当な慰謝料額の算定や、相手が支払いに応じない場合の裁判対応まで任せられるのも心強い点です。
手続きを一任できるため、被害者は心の負担を抱えず日常を取り戻すことに専念できます。
ネットトラブルや開示請求に詳しい弁護士を効率よく探すなら、ポータルサイト「ベンナビIT」の活用がおすすめです。
「ベンナビIT」なら、地域別や相談内容別に、ネット問題の解決実績が豊富な弁護士を簡単に探せます。
条件を絞り込めるため、自分の状況に合った法律事務所を効率よく比較できるのも魅力です。
初回相談が無料の事務所や、休日に対応してくれる事務所も多く掲載されています。
まずは気軽に活用してみましょう。
「ベンナビIT」を通じて開示請求を依頼し、被害の回復につながった事例を2件紹介します。
依頼者は、個人ブログに自分の個人情報とともに名誉を傷つける記事を公開された個人の方です。
個人情報がインターネット上に広がり、仕事と私生活の両方に支障をきたしていました。
弁護士は、記事の削除とブログ運営者の特定を目指して発信者情報開示請求訴訟を起こしました。
プロバイダからの意見照会をきっかけに手続きが進み、記事の削除とブログ運営者の特定に成功しています。
依頼者は、配信で生計を立てていた男性です。
炎上をきっかけに5ちゃんねるへ営業妨害や誹謗中傷の書き込みが相次ぎ、大きな損害を受けていました。
弁護士は投稿者の選定を迅速に進め、発信者情報開示によって書き込んだ相手を特定しました。
そして、特定した相手に同じ書き込みを繰り返さないと誓約させたうえで、示談金として約150万円を獲得しています。
最後に、発信者情報開示請求についてよくある質問とその回答を紹介します。
残念ながら、1対1のメールやダイレクトメッセージ(DM)は、開示請求の対象になりません。
名誉毀損や侮辱は、不特定多数が認識できる状態という公然性が要件になっており、1対1のやり取りは要件を満たさないためです。
ただし、脅迫罪やストーカー規制法違反にあたる悪質な内容であれば、刑事事件として警察経由で対応できる可能性があります。
複数人が閲覧できるグループチャットであれば、公然性が認められて開示の対象になる場合もあります。
自分の状況で開示請求ができるかどうかは、無料相談を活用して弁護士に相談してみてください。
開示請求は個人でも可能ですが、現実には極めて難しいのが実情です。
裁判所へ提出する申立書の作成や、権利侵害を立証するための証拠集めには、高い法的スキルが求められます。
個人で手続きを調べている間に、ログの保存期間が過ぎるリスクも高くなります。
確実性と精神的な負担を考えると、弁護士に任せるのが現実的です。
発信者が使ったプロバイダが判明すれば、接続元が行政機関や企業であっても開示請求の対象になります。
IPアドレスから「◯◯市役所」や「株式会社◯◯」のネットワークからの投稿だと判明するケースも少なくありません。
判明したあとは、組織に対して誰が使っていた端末かの開示を求めていく流れです。
企業や行政では内部調査が進みやすく、投稿した従業員の懲戒処分につながる可能性もあります。
インターネット上の誹謗中傷は、発信者情報開示請求によって相手を特定し、損害賠償や刑事告訴で責任を追及できます。ただし、特定までには最短で3ヵ月ほどかかるのが実情です。
手続きは、証拠の確保から始まり、裁判所への申立てやプロバイダへの開示命令を経て、発信者の特定に至る5つのステップで進みます。
費用は裁判所費用と弁護士費用を合わせて数十万円が目安で、依頼する事務所によって幅があります。
注意してほしいのが、3~6ヵ月で消える通信ログの保存期間です。
悩んでいる間に期限が過ぎると特定そのものができなくなるため、被害に気づいたら1日でも早く動いてください。
開示請求は複雑なうえにスピードが求められるため、ネット問題にくわしい弁護士へ早めに相談するのがおすすめです。
発信者情報開示に強い弁護士を探すなら、無料相談にも対応する「ベンナビIT」を活用してみましょう。
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