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ネット上で誹謗中傷をしてきた相手を特定したいと考えている方のなかには「発信者情報開示命令」という言葉を見たことがある方もいるでしょう。
発信者情報開示命令は、誹謗中傷をしてきた投稿者の情報を開示するための制度です。
2022年に新しく導入された制度のため、具体的にどのような手続きなのかわからない方もいるのではないでしょうか。
本記事では、発信者情報開示命令について解説します。
従来の発信者情報開示請求との違いや手続きの一般的な流れも紹介するので、ネット上の誹謗中傷で悩んでいる方はぜひ参考にしてください。
発信者情報開示命令とは、2022年10月1日から導入された新しい制度です。
従来の「発信者情報開示請求」よりも少ない手続きで、投稿者の情報を開示できる仕組みとなっています。
手続きの手間が減るうえ、プロバイダを素早く特定できるため「手続きをしている間にログが消され、投稿者を特定できなかった…」というリスクを抑えられます。
(発信者情報開示命令)
第八条 裁判所は、特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者の申立てにより、決定で、当該権利の侵害に係る開示関係役務提供者に対し、第五条第一項又は第二項の規定による請求に基づく発信者情報の開示を命ずることができる。
引用元:特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律 | e-Gov法令検索
ここからは、発信者情報開示命令の特徴を、従来の発信者情報開示請求との違いも含めて解説します。
発信者情報開示命令では、1回の手続きで投稿者の情報を開示できます。
従来の発信者情報開示請求は、サイト管理者とプロバイダのそれぞれに対して審理が必要だったため、投稿者を特定するのに時間と手間がかかるのがネックでした。
しかし、発信者情報開示命令であれば、サイト管理者とプロバイダに対する審理を1回でまとめておこなうことができます。
投稿者を特定するまでの負担が少なくなり、投稿者を特定するまでの時間も短縮されました。
発信者情報開示命令の申し立てと同時に、ログの提供命令や消去禁止命令の申し立てもおこなえます。
ログの提供命令とは、サイト管理者に対して投稿のログをプロバイダに提供するよう求めることです。
また、消去禁止命令は、プロバイダに対して投稿のログを削除しないよう命じることを指します。
上記2つの命令が出されることで、サイト管理者がログの開示を拒否したり、プロバイダがログを削除したりできなくなります。
一度の手続きで開示命令・提供命令・消去禁止命令をまとめて申し立てることができるため、投稿者の特定に必要なログを迅速に保全することが可能となりました。
発信者情報開示命令と発信者情報開示請求のどちらを選ぶべきかは、ケースによって異なります。
基本的には、発信者情報開示命令を選択したほうがよいでしょう。
発信者情報開示命令は、従来の発信者情報開示請求に比べ手続きにかかる負担が少ないうえ、投稿者を素早く特定できます。
手続きに時間がかかってしまうと、その間に投稿が削除されて「結局投稿者を特定できなかった…」という事態にもなりかねません。
このような泣き寝入りを防ぐためにも、基本的には負担が少なく迅速性が高い発信者情報開示命令を選びましょう。
基本的には発信者情報開示命令を選択したほうがよいものの、ケースによっては発信者情報開示請求を選んだほうがよいこともあります。
以下のケースに該当する場合、発信者情報開示請求のほうがメリットが大きいでしょう。
上記の場合、発信者情報開示命令が出されても、かえって時間がかかってしまうおそれがあります。
どちらの方法がよいのかわからない場合は、弁護士に相談してみましょう。
ここからは、発信者情報開示命令で加害者を特定するまでの一般的な流れを紹介します。
まずは、誹謗中傷を受けた事実を証明するため、投稿内容を記録しましょう。
投稿はいつ削除されるかわからないので、見つけた時点で証拠を残しておかないと、誹謗中傷を受けたことを立証できません。
画面の写真やスクリーンショットを撮影するなどして、以下の内容を必ず証拠として残すようにしましょう。
発信者情報開示命令に必要な書類を作成します。
必要書類は以下のとおりです。
申立書のサンプルは裁判所のホームページに掲載されているので、作成する際に参考にするとよいでしょう。
必要書類を準備したら、サイト管理者に対して発信者情報開示命令とログの提供命令を申し立てます。
申し立て先は、以下のいずれかの裁判所です。
提供命令により、サイト管理者から発信者情報が開示されます。
サイト管理者から開示されるのは、投稿者のIPアドレスやタイムスタンプ、投稿者のメールアドレスなどです。
この情報を基に、投稿者が投稿時に使用したプロバイダを特定します。
特定したプロバイダに対して、発信者情報開示命令と消去禁止命令を申し立てます。
プロバイダが任意でログを保存している場合は、消去禁止命令の申し立てをしない、もしくは取り下げることが可能です。
申し立て先は、サイト管理者に発信者情報開示命令を申し立てた裁判所と同じです。
プロバイダに発信者情報開示命令を申し立てたら、サイト管理者に申し立てをした旨を通知します。
通知を受けたサイト管理者は、プロバイダに対して投稿者のIPアドレスやタイムスタンプなどの情報を提供します。
この情報がないと、プロバイダが投稿者の氏名・住所などを特定できず、事案を先に進めることができません。
サイト管理者への通知は忘れずおこなうようにしましょう。
サイト管理者とプロバイダへの発信者情報開示命令の申し立てが一つの事件として併合され、一体的な審理がおこなわれます。
審理では、サイト管理者やプロバイダの意見も考慮し、裁判所が発信者の情報を開示すべきかどうかを判断します。
裁判所が発信者の情報を開示すべきと判断した場合は開示決定が出され、投稿者の氏名・住所などが開示されます。
投稿者を特定したら、損害賠償請求などの手続きをおこなうことになります。
ただし、開示された発信者情報は、必ずしも投稿者の特定に結びつくものとは限りません。
投稿者がお店やホテルの備え付けのパソコンを使っていた場合、開示されるのはそのプロバイダの契約者であるお店・ホテルの情報のみです。
発信者情報開示命令をおこなっても、投稿者の特定に至らない可能性がある点は留意しておきましょう。
ここでは、発信者情報開示命令についてよくある質問をまとめています。
発信者情報開示命令は、以下の要件を満たさなければ認められません。
投稿者を特定したら、損害賠償請求や刑事告訴などの手続きをおこないます。
損害賠償を請求する場合は、まずは相手に任意の支払いを求めます。
相手が支払いに応じない場合や、希望する金額を支払ってくれない場合は裁判所で訴訟を提起することになります。
相手に確実に支払ってもらいたい場合は、最初から訴訟を提起することも可能です。
また、投稿内容が悪質な名誉毀損にあたる場合や、誰かの身に危害を与える内容だった場合には刑事告訴することもできます。
刑事告訴をした場合、投稿者は脅迫罪や名誉毀損罪などに問われ、刑に処せられる可能性があります。
発信者情報開示命令では、投稿の削除依頼まではできません。
投稿を削除したい場合は、投稿者やサイト管理者に削除依頼をする、裁判所に削除命令を出してもらうなどの方法をとる必要があります。
削除依頼の方法について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
発信者情報開示命令は、従来の発信者情報開示請求に比べ時間や手間がかからず、投稿者を迅速に特定することができます。
ネットで誹謗中傷をしてきた相手を特定したい場合、基本的には発信者情報開示命令を選択するとよいでしょう。
しかし、なかには発信者情報開示請求を選んだほうがよいケースもあります。
どちらを選べばよいかわからないときは、ひとりで悩まず弁護士に相談しましょう。
弁護士に相談・依頼すれば、個別の事情や意向を基に最適な方法を一緒に考えてもらえます。
また、損害賠償請求や刑事告訴などの複雑な手続きも弁護士に一任できるので、早く確実にトラブルを解決できるでしょう。
ネット上の誹謗中傷で悩んでいる方は、ぜひ一度弁護士に相談してみてください。
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