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名誉毀損で警察は動かない?警察の取り締まり状況や成立条件などを解説
名誉毀損 2018.8.23 弁護士監修記事

名誉毀損で警察は動かない?警察の取り締まり状況や成立条件などを解説

弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士
監修記事
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名誉毀損(めいよきそん)とは、具体的な事実を摘示することで人の社会的地位などを落とす行為を公然に行うことを指し、最近では、インターネット上での被害も発生しています。

『名誉毀損で警察は動かない』という印象を抱いている方もいるようで、『告訴状を提出したが受理されなかった』というケースもゼロではないようです。

この記事では、名誉毀損の成立条件や事例、警察の取り締まり状況などについて解説します。

 

名誉毀損の基本概要

まずは、名誉毀損の定義について解説します。

 

名誉毀損の定義

名誉毀損とは、『人の社会的な地位や評価を落とす行為を公然に行う』ことを指し、刑法では次のように記されています。

(名誉毀き損)

第二百三十条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀き損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。

第二項:死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。

引用元:刑法第230条

 

名誉毀損の成立条件

名誉毀損については、以下が成立条件として挙げられます。

  • 行為が公然に行われている
  • 行為の内容が具体的かつ、社会的な地位・評価を落とすもの
  • 行為の対象が特定されている

 

以下の事例のように、『Aという女性は、風俗店で働いている』などとビラまき行為を行った場合は、名誉毀損が成立することがあります。

<事例>

2016年11月に千葉県にて、男性が『女性Aの風俗勤務の事実』について記載されたビラをまいたとして、名誉毀損容疑で逮捕された事件です。男性は、「Aに対して好意を持っていたが、連絡が取れなくなって探していた」として、容疑を認めているとのことです。

参考元:「風俗店で働いている」と中傷ビラまき 風俗店通い千葉の中学教頭逮捕|産経ニュース

 

また、もし上記の条件を満たしていたとしても、以下の3点すべてを満たしている場合は名誉毀損罪に問われることはありません

  • 公共に利害にかかわる事項である場合
  • 公共の利益を図る目的である場合
  • 内容が真実であるか、真実と信じる相当な理由がある場合

参考元:刑法第230条の2

 

<判例>

1977年に、被告が新聞社に対して『京都の病院にて行われた医療行為は、犯罪行為に該当する』と内部告発し、さらに同内容の記事が掲載されたことなどについて、病院側が『名誉毀損にあたる』として訴えた事件。裁判所は、「被告側の行為は、名誉毀損の不成立条件を満たしている」として、訴えを棄却しました。

参考元:1983年10月最高裁の判決|文献番号1983WLJPCA10200002

 

名誉毀損で警察が動かないこともある

名誉毀損は、『起訴時に被害者の告訴が必要』という親告罪にあたります。

基本的に、告訴状を提出した際は速やかに受理されて手続きが進められますが、中には『告訴状(※)を提出したのに受理されなかった』というケースもあるようです。

警察による告訴状の不受理については、特に規則などで認められている行為ではありません。もし不受理となるような場合は、理由として以下のものが考えられます。

  • 告訴内容の中に犯罪の構成要件を満たすものがない
  • 告訴内容が立証できる証拠が存在しない
  • 告訴期間が経過している

 

特にインターネット上で名誉毀損されたケースなどは、犯罪が成立しているか判断する際に、専門的な知識が求められることもあります。『インターネットに強い担当者がいなかった』という場合なども、理由の1つとして考えられるでしょう。

 

※告訴状

犯罪の被害者が、加害者に対して処罰を求めるために捜査機関へ提出する書類のこと。

告訴日・告訴人・被告訴人・告訴趣旨・告訴事実などを記載する。

関連記事:親告罪の仕組みと該当の罪一覧|親告罪では示談が有効|刑事事件弁護士ナビ

 

名誉毀損に関する警察の取り締まり状況

引用元:平成29年中におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について|警察庁

 

名誉毀損に関する警察への相談件数・検挙件数は、2013(平成25)年以降やや増加傾向にあります。

2017(平成29)年についてみると、名誉毀損などに関する相談が1万1,749件あった一方で、検挙された数は223件となっています。実際に、警察が取り締まりに向けて動くようなケースは比較的少ないといえるでしょう。

それでも、実際に名誉毀損で逮捕されたケースも存在します。次の項目では、名誉毀損で有罪判決が下された事例についてご紹介します。

 

2009年3月札幌地裁の判決

2005年8月に北海道にて、定期刊行誌Aに掲載する記事の企画・執筆・編集・発行などを担当していた被告人が、株式会社Bの名誉を毀損するような内容の記事を掲載したとして、名誉毀損容疑で逮捕された事件です。

裁判所は「名誉を大きく害する悪質な犯行」として、被告人に対して懲役1年2ヶ月との判決を下しました。

裁判年月日 平成21年 3月17日

裁判所名 札幌地裁 裁判区分 判決

事件番号 平19(わ)1048号

事件名 名誉毀損被告事件

裁判結果 有罪

参考元:文献番号 2009WLJPCA03179006

 

2006年4月東京地裁の判決

2004年から2005年までの間、被告人がPCを使って、被害者(計13名)の顔写真を別人の裸体と重ねた卑猥な合成画像を作成し、インターネットサイトAにて不特定多数に閲覧させたとして、名誉毀損容疑で逮捕された事件です。

裁判所は、「被害者の精神的苦痛を量刑に反映させるには限度があり、被告人には更生の余地がみられる」として、被告人に対して懲役1年と執行猶予3年との判決を下しました。

裁判年月日 平成18年 4月21日

裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決

事件番号 平17(刑わ)5073号 ・ 平18(刑わ)989号

事件名 名誉毀損被告事件

裁判結果 有罪

参考元:文献番号 2006WLJPCA04210003

 

2002年11月福岡地裁の判決

2001年8月に福岡県にて、被告人がPCを使って、被害者の名誉を毀損するような内容の文章をインターネットサイトAに掲載したとして、名誉毀損容疑で逮捕された事件です。

裁判所は、「身勝手な犯行動機で酌量の余地はない」として、被告人に対して懲役1年との判決を下しました。

裁判年月日 平成14年11月12日

裁判所名 福岡地裁 裁判区分 判決

事件番号 平14(わ)651号

事件名 名誉毀損被告事件

裁判結果 有罪

参考元:文献番号 2002WLJPCA11129009

 

名誉毀損の罰則と類似する罪

名誉毀損を罰するものとして名誉毀損罪がありますが、ほかにも類似した罪がいくつかあります。

以下の記事でも名誉毀損について取り上げているので、ご覧ください。

関連記事:名誉毀損で逮捕されるケース|刑事と民事の名誉毀損の違いと対処法|刑事事件弁護士ナビ

 

名誉毀損罪

名誉毀損罪の法定刑は、3年以下の懲役や禁錮、または50万円以下の罰金と定められています。

刑事事件については、犯罪終了時から一定の期間を過ぎると起訴不可能になるという、公訴時効が定められており、名誉毀損罪は3年と定められています(刑事訴訟法第250)。

(名誉毀損)

第二百三十条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀き損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。

第二項:死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。

引用元:刑法第230条

 

侮辱罪

侮辱罪は、『社会的な評価を下げる言動を罰する』という点で名誉毀損罪と共通していますが、この2つは言動の内容が具体的か抽象的か、という点で異なります。

内容が具体的であれば名誉毀損罪、抽象的であれば侮辱罪が成立することが多いでしょう。例として「お前は嫌なヤツだ」という発言であれば、内容が抽象的な意見であるため、侮辱罪が成立する可能性が高いといえます。

(侮辱)

第二百三十一条 事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。

引用元:刑法第231条

 

信用毀損及び業務妨害罪

信用毀損及び業務妨害罪は、うその風説を流して相手の信用を落とし、業務に悪影響を与えた場合に成立し、特にお店に対する侮辱行為があった場合などに適用されることが多いようです。

例として、「A店では料理に髪の毛を混ぜている」などと根も葉もないうわさを流して、相手の業務を妨害した場合に成立します。

(信用毀損及び業務妨害)

第二百三十三条 虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

引用元:刑法第233条

 

まとめ

名誉毀損罪で起訴されると、懲役罰金の刑罰が科せられます。場合によっては実刑判決が下ることもあるでしょう。

『名誉毀損で警察は動かない』というイメージが抱かれているところもあるようですが、名誉毀損の成立条件を満たしており、告訴内容にも問題がない場合については、警察も速やかに事件解決に向けて動くでしょう。

 

参照元一覧

刑法

警察に告訴状を出したら、かならず捜査してくれますか?|Yahoo!知恵袋

平成29年中におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について|警察庁

刑事訴訟法

この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。

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相護士ナビ編集部

本記事はIT弁護士ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※IT弁護士ナビに掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。
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