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システム開発訴訟の手引き|ベンダーに対して訴訟を起こすには?
IT・ネット法務 公開日:2018.7.17 弁護士監修記事

システム開発訴訟の手引き|ベンダーに対して訴訟を起こすには?

弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士
監修記事
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システム開発には、その規模にかかわらず、多かれ少なかれトラブルがつきものです。

システム開発訴訟の争点として注目されるのが、ユーザー側とベンダー側のどちらに責任の所在があるのかということです。

業界・業種にもよりますが、ユーザー側は得てしてシステム開発に関してはベンダー側よりも知識や経験が乏しかったり、勝手がわからなかったりするもの。

何らかのトラブルが起こっても、それに対して意図せず不利な立場になって泣き寝入りしてしまうケースもあります。

この記事では、システム開発訴訟の事例と主な紛争内容をはじめ、訴訟を起こす際の手順についてご紹介します。

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システム開発における訴訟事例3つ

まずはシステム開発における訴訟事例を見てみましょう。

システム開発訴訟にはいろいろなケースがありますが、争点はケースによって異なります。

瑕疵対応を理由に定額の保守費用を減額した事例

事件概要

とあるITベンダーが定額制で請け負った、ユーザー企業の基幹システム保守作業。

工数にかかわらず、毎月約299万円が支払われる契約でしたが、実際には瑕疵(かし)対応や開発依頼の未完成を理由に減額され、ベンダー側は赤字状態に。

そこで、工数に応じた請求に契約内容を変更するようユーザー企業に求めましたが、応じてもらえませんでした。

その後、ベンダー側は3ヶ月分の工数に基づく保守費用1,057万円を請求。それでも、ユーザー企業は前述の契約を盾に446万円しか支払わず、ベンダー側はユーザー企業を提訴。保守作業は準委任契約で瑕疵対応や開発依頼の未完成は支払い拒否の理由にならないとして、残金約600万円の支払いを求めました。

結果

ベンダー側には、請求した約600万円の半額である300万円が支払われることになりました。

東京地方裁判所は、契約自体は業務内容ではなく稼働時間によって報酬を定めていたことから、準委任契約に近いものと判断。

しかし、運用実態は、本来請負とすべきソフトウェア開発を行なっており、ユーザー企業の検収を挟むことで、実績工数を大幅に下回る工数請求となっていたことから、当事者間の黙示的な合意により契約内容が請負へ変更されたと判決しています。

そのため、見積もりで想定されていなかった作業は、追加費用を支払うべきとして、ベンダーの行なった作業が本当に想定外であったかどうかも加味し、ユーザー企業に請求額の半額である300万円の支払いを命じました。

裁判年月日 平成24年 4月25日

裁判所名 東京地裁

裁判区分 判決

事件番号 平21(ワ)28869号

裁判結果 一部認容

文献番号 2012WLJPCA04258017

レンタルサーバー業者に損害賠償金1億円を請求した事例

事件概要

建築業者がISP(インターネットサービスプロバイダ)のレンタルサーバーを借りて、Webサイトを開設。

しかし、ISPが運用上の事情で、建築業者のWebサイトデータを別のディレクトリに移設した際、誤ってデータを滅失してしまいました。

建築業者、ISPともに滅失したデータのバックアップは取っておらず、Webサイトは建築業者側で再構築することに。これに対して、ISP側は建築業者に作業料として仮払金3,000万円を支払いました。

その後、無事にWebサイトは再公開されましたが、建築業者はISPに対して再構築費用と公開中断による逸失利益の損害賠償として約1億円(サーバーの再構築費用と逸失利益の合計額から仮払金を引いた額)を請求。最終的に訴訟を起こしました。

結果

裁判所はISPにデータ保全について『善管注意義務(善良なる管理者として注意する義務)』違反があるとして、建築業者に合計800万円(Webサイト再構築費用400万円、逸失利益400万円)を支払うよう命じました。

しかし、仮払金3,000万円を受け取りながら、約1億円の損害賠償を請求した建築業者のWebサイト再構築には、実質400万円しかかかっていなかったことが判明。

建築業者は、3,000万円の仮払金から、判決で決まった賠償金800万円を引いた2,200万円を返還することになってしまいました。

裁判年月日 平成13年 9月28日

裁判所名 東京地裁

裁判区分 判決

事件番号 平12(ワ)18753号 ・ 平12(ワ)18468号

事件名 損害賠償請求、仮払金返還請求事件〔レンタルサーバーデータ消滅事件〕

裁判結果 甲・請求棄却、乙・一部認容

文献番号 2001WLJPCA09280009

病院情報管理システムプロジェクト破綻事件

事件概要

旭川医大が2008年8月、NTT東日本に依頼した病院情報管理システムの刷新開発。2017年、プロジェクトが破綻し、訴訟に発展したことで大きく報道されました。

開発プロジェクトは、旭川医大側の膨大な追加要件により作業が思うように進まず、NTT東日本は一度仕様を凍結し、納期も延長。

しかし、旭川医大側の追加要件は止まらず、開発はさらに遅延。結果、納期どおりに納品できなかったことを理由に、旭川医大はNTT東日本に契約解除を通告。

それを受けて、NTT東日本側は損害賠償を請求し、裁判になりました。

結果

第一審では、プロジェクト破綻についてNTT東日本側に8割の責任があるとされていましたが、第二審では逆転。

札幌高等裁判所は、旭川医大にすべての責任があるとして約14億1,500万円の支払いを命じました。

2017年9月、旭川医大は判決を不服として最高裁に上告しましたが、最高裁は2018年5月に上告を受理しないことを決定。

札幌高等裁判所の判決が確定しました。

裁判年月日 平成28年 3月29日

裁判所名 旭川地裁

裁判区分 判決

事件番号 平23(ワ)99号 ・ 平23(ワ)148号

事件名 損害賠償請求事件

裁判結果 一部認容(第1事件)、一部認容(第2事件)上訴等 控訴

文献番号 2016WLJPCA03296018

 

システム開発訴訟における主な紛争内容3つ

それでは、システム開発訴訟における紛争内容はどういったものが多いのでしょうか。

特に訴訟の要因となり得る3つの事項をピックアップしました。

ベンダーの納期遅れに対する報酬の未払いなど

中でも多いのが、ベンダーの納品が期日までに行なわれなかった、または遅れた場合にユーザーが報酬を支払わなかったり、減額したりすることです。

ベンダー側の責任によってプロジェクトが完遂できなかった場合、ベンダーの債務不履行を理由として契約解除や損害賠償を請求することができます。ただし、プロジェクトの完遂ができなかったことにベンダーに帰責性がない場合はこのような責任追及はできません

契約解除が認められた場合、ベンダーはユーザーに対して報酬の全額を請求することは困難でしょう。

なお、システム開発において、ベンダーはプロジェクト体制と進行管理の義務が求められ、ユーザーにはベンダーへの協力義務が求められます。そのため、プロジェクトが完遂されなかったことがユーザー側の協力義務違反によるものと評価された場合、ユーザー側がベンダーに対して債務不履行責任を負うということもあります。

瑕疵担保責任の問題

システム開発訴訟事例でも取り上げましたが、瑕疵担保の有無も紛争内容として多く取り扱われる問題です。

システム開発における瑕疵担保責任とは、完成したシステムを実際に稼働させてみたところ、『バグが見つかった』『仕様書どおりに動かない』『遅い』など一定の不具合が生じたときにベンダーがユーザーに対して負う責任のこと。

ユーザーがベンダーに瑕疵担保責任を追求したことを機に訴訟に発展するケースが多く見られます。

ほとんどのシステムは複数の機能が組み込まれた複雑な構造をしており、テストや検証を十分に行ったとしてもバグの完全な排除はほぼ不可能です。

また、システムを動かすためにはサーバーやパソコンなどの性能も影響します。したがって、どんな場合に瑕疵があるといえるのかは一概には言えず、契約ごとに判断せざるを得ないでしょう。

仕様変更による契約内容の変更、追加

システム開発においては、途中であっても、ユーザー側からの仕様変更要望は多く、一般的にある程度の仕様変更は仕方ないという見方もあります。

しかし、この仕様変更が行き過ぎた現場では、契約で定めた内容ではない作業を無償で求められたり、別途有償請負となるべきものでも請求が認められなかったりします。

それらの損害が多額に上る、またはベンダー側とユーザー側の権利や責任主張の食い違いが生じることで、訴訟に発展します。

その場合、そもそもの『仕様』の内容が明確ではなかったり、要件定義が適切ではなかったりして、複雑かつ深刻な争点になることがあります。

 

損害賠償請求で訴訟を起こす際の手順

システム開発訴訟において損害賠償請求をする際は、民事訴訟を起こします。

ユーザー側からベンダー側に訴訟を起こすことを想定した手順を確認していきましょう。

何を根拠に訴えを提起するか(民事訴訟)

民法第415条(※)では、以下のように記されています。

債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責に帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。

引用元:民法第415条

つまり、ベンダーは、故意や過失でシステム開発に失敗した場合、法的に責任をとらなければなりません。

ユーザーはベンダーに対し、以下の費用を損害として請求できる可能性があります。

  • ベンダーに支払った前金などの開発委託料
  • ハードウェアやソフトウェアの購入費用
  • 開発失敗によりユーザー側で発生した広報やCS対応などの費用

ケースによっては、損害賠償請求をするよりも、原状回復請求(民法第545条)を検討したほうがよい場合もあります。

※民法は2017年5月29日に民法の一部改正法が成立し、同年6月2日に公布されていますが、施行は2020年4月1日からになります。上記条文および説明は、現行法である改正前の民法条文を引用し、説明しています。

 

訴状の準備

訴訟の申立をするために、訴状を作成しましょう。インターネットで検索すれば、いくつかのひな形が手に入りますが、システム開発は複雑な紛争になる場合もあります。

正確な訴状を作成するためにも、IT業界に詳しい弁護士などに相談するとよいでしょう。

証拠の準備

訴状を作成したら、申請書に添付する証拠を準備します。契約書はもちろん、手形や借用書、領収書、納品書などが該当します。

特にベンダーの捺印や署名が入った書類、ベンダーから提出された報告書などは、有力な証拠となることがあります。

なお、民事訴訟では提出する証拠に特段の決まりはありません。捺印や日付が欠けていたり、不明瞭だったりしても、思いあたる書類はすべて提出しておきましょう。

裁判費用

訴訟の申立をするには、『収入印紙代』『郵券(切手)代』『証人への日当』がかかります。

収入印紙代は、訴訟の金額によって変わります。以下の表を目安にしてください。

訴訟金額

手数料

100万以下

10万円につき1,000円

100万円超、500万円以下

20万円につき1,000円

500万円超、1,000万円以下

50万円につき3,000円

1,000万円超、10億円以下

100万円につき3,000円

10億円超、50億円以下

500万円につき1万円

50億円超

1,000万円につき1万円

参考:裁判所|手数料

郵券は当事者の人数や裁判所によって金額が変わりますが、通常は6,000~8,000円程度です。また、証人を召喚する場合は、日当や交通費の負担が生じることがあります。

和解

被告が訴状の内容を全面的に認めた場合や、答弁書を提出せず期日にも出席しない場合は、訴状のとおり請求が認められますが、企業同士の争いでそのような自体はまず起こりません。

通常は、原告と被告がそれぞれ主張内容をまとめた書面を裁判所に提出し、これを裏づける証拠を提出することで、審理が重ねられます。

ある程度期日を重ねた時点で裁判所から原告・被告双方に和解が勧告されることがほとんどです。各当事者が和解を受け入れ、和解条件で妥結すれば、手続きは和解成立により終了します。

和解が成立した場合、書記官が和解調書を作成します。各当事者は和解調書記載の約束事項を遵守する必要があり、これを守らない場合、紛争が蒸し返される可能性もあります。

判決

当事者が和解を受諾せず、これが成立しない場合、裁判所は判決による解決に移行します。

通常は、主張・立証が尽きた段階で必要な範囲で証人尋問を行い、弁論を集結します。弁論を終結後、2~3ヶ月後に判決期日を指定し、判決を言い渡します。

もし、判決で自身の請求が認められなかった場合、判決書の送達から14日以内であれば控訴することができます。判決内容に不服がある場合は控訴を検討しましょう。

この場合、事前に弁護士や法律の専門家に意見やアドバイスを求めておくとよいでしょう。

 

システム開発訴訟を弁護士に依頼する場合

システム開発訴訟を最後まできちんと解決したい、損害賠償請求をしたい場合は、弁護士に依頼することをおすすめします。

依頼のメリット

相手への請求を法的に整理してもらえる

弁護士に依頼するメリットは、相手に対する請求を法的に整理して主張してもらえることです。

訴訟手続は事実と証拠を突き合わせて当事者間の権利法律関係を確定する手続きです。訴訟を遂行する上では、請求を基礎づけるような法理論について相当の知識が必要ですし、必要な証拠を見極める目も必要です。そのため、法律・裁判の専門家である弁護士のサポートは極めて有用です。

特に、システム開発訴訟は金額が大きい場合もありますし、契約内容や契約処理が複雑であったりします。

必要な主張や証拠の立証

弁護士に依頼しなければ必要な主張立証が十分にできなかったり、相手の反論に対して的確な対応ができなかったりと、適切な対応ができず、結果的に敗訴してしまうということは十分あり得ます。

和解のサポート

また、和解の際にも見通しを踏まえた適切な判断ができず、結果的に損をしてしまうということもあり得ます。訴訟の規模が大きいと、このような場合に各当事者が被る不利益は比例して大きくなっていきます。したがって、システム開発訴訟では弁護士のサポートは必須といえるでしょう。

弁護士費用の例

システム開発訴訟を弁護士に依頼する際の費用には、『相談料』『着手金』『報酬金』の3つが含まれます。

相談料

弁護士に訴訟相談をした際に発生する費用です。相場は、1時間あたり5,000円~1万円です。

着手金

弁護士が訴訟の案件を引き受けたときに発生します。裁判の結果に関係なく、必ず支払います。訴訟の請求金額に応じて金額が変わり、場合によっては高額になることもあります。費用の相場は請求金額の5~10%です。

報酬金

勝訴を勝ち取った場合に発生し、相手が弁済する債権額に応じて算出されます。相場は債権額の10~20%です。

どのような弁護士を選べばよいか?

損害賠償請求が絡む、企業間の訴訟実績が豊富な法律事務所を選ぶとよいでしょう。弁護士によって専門分野が異なるので、システム開発訴訟においてはIT業界に明るい弁護士に依頼することをおすすめします。

【関連記事】ネットに強い弁護士とは|IT分野に実績ある弁護士探し方

 

まとめ

インターネットが発達し、テクノロジーが進化している現代、今後もシステム開発訴訟は増えていくことでしょう。

新しい技術や開発手法も増え、さらに開発実態が複雑化し、紛争が深刻化する可能性もあります。

対岸の火事と思わず、この記事でご紹介した訴訟手順はもちろん、さまざまなシステム開発訴訟のニュースで動向を把握しておくことも大切です。

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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。

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相護士ナビ編集部

本記事はIT弁護士ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※IT弁護士ナビに掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。
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