秘密保持契約書(ひみつほじけいやくしょ)とは、自社の秘密情報を業務委託者や取引先企業などの外部に渡す際に、情報を漏洩しないよう取引相手に約束させる契約書です。
英語表記からNDA(Non-Disclosure Agreementの略称)ともいいます。
秘密情報とは、機密情報や営業秘密ともいわれ、企業が秘密として管理・保護している情報のことです。
営業秘密について、不正競争防止法という法律で別途保護される場合もあります。
なお、不正競争防止法で保護されるのはすべての『営業秘密』ではなく『営業秘密の3要件』を満たす一部の秘密です。
しかし、経済産業省の調査資料によると、大企業であっても『不正競争防止法の措置』『営業秘密の3要件』について知らない企業が調査対象540社全体のうち約2割存在していることが明らかになりました。
仮に、営業秘密が法律上保護されるものである場合、自社の従業員等が自社の営業秘密を不正に取得したり、これを第三者に漏洩した場合に、不正競争防止法によってさまざまな措置を講じることができます。
逆にこれで保護されない場合は、そのような法律上の強力な保護を享受することはできません(契約上の義務違反責任を追及することはできるかもしれません)。
秘密保持契約書は、自社の重要情報を適切に管理する方法の1つです。
この記事では、秘密保持契約書に関する基本的な知識と作成方法などをご紹介します。
事業提携時や業務委託時など、企業活動の中でやむを得ず自社の秘密情報を外部に開示しなければならない場面は多々あることでしょう。
そして、外部に渡した情報は、相手側の管理体制下で取り扱われることになります。
そのときに、どこまでの情報が秘密であるのか、どのように取り扱うべきか、ルールを決めておかなければ、勝手に情報を利用されたり、漏洩または開示されたりする危険性があります。
秘密保持契約書は、具体的に以下のような目的のために結びます。
秘密保持契約(NDA- Non-disclosure agreement)とは、秘密情報を他の企業に提供する際に、当該企業に対して秘密情報を他社に漏らしたり不正に利用されたりすることを防止するために締結する契約です。
一般的には、自社の情報を開示する前に締結します。
秘密情報の定義を明確にすることが重要です。
「機密保持契約書」と呼ばれることもあります。
まずは秘密情報を預けた先の企業や自社の秘密情報を知っている従業員などから、さらに外部へ情報が漏れないようにするためです。
雇用契約をはじめ、共同開発や事業提携、業務委託など業務上の契約を結んだ二者間のみで情報が共有されていることを明確にし、情報の利用目的を限定することで、意図しない漏洩を防ぐことができます。
経済マーケットのグローバル化が進む中、懸念されているのが日本国内で培われてきた“モノづくり”などにおけるノウハウや技術の流出です。
2012年、とある大手電機メーカーの製品仕様や検査方法などが、業務提携先にいた元社員に無断複製され、海外の競合他社に不正に開示される事件がありました。
大手電機メーカーは業務提携先に約1,100億円の損害賠償を請求。
その後、2014年12月に約300億円で和解しましたが、情報漏洩をした元社員は逮捕。
懲役5年の実刑判決、罰金300万円が科されました(2015年9月東京高裁)。
今はコストをかけず、容易に模倣品や競合事業を生成できる時代。
技術情報が一度でも国内のみならず海外に流出してしまえば、応用技術や事業発展など将来的な経営計画も窮地に立たされる恐れがあります。
特に海外事業を展開している、または今後、海外進出を計画している企業にとって、秘密保持契約書は重要な役割を果たすものなのです。
渡した情報をどのような目的かつ業務範囲で利用するのか明示しておかなければ、意図しない目的で利用されたり(目的外利用)、他の業務に転用されたりしてしまう可能性があります。
あらかじめ秘密保持契約書で利用目的を明らかにしておけば、目的外利用を防ぐことができ、万が一トラブルがあった際の争点の整理にも役立ちます。
秘密情報の中には著作権や商標権など知的財産権が含まれるものや、開発や研究などが終わったあとも一定期間保護されるべきものもあります。
そのため、秘密保持義務の期間はいつまでなのか、返還や破棄方法など秘密情報を受け取った側が負わなければならない義務の内容はもちろん、法的な権利がどちら側にあるのかも両者であらかじめ確認しておく必要があります。
秘密保持契約を締結していたとしても、締結相手が秘密情報の漏洩・不正利用等の契約違反を起こす可能性があります。
この場合には、訴訟を提起することで、損害賠償を求めることができます。
その際、秘密情報の漏洩・不正利用等により生じた損害額を立証する必要があります。
なお損害額の立証は困難なケースがほとんどです。
秘密保持契約を締結すれば安全というわけではない点は注意しましょう。
自社の業務の一部を他社に外注したり、業務委託したりする場合、自社の社内情報や顧客情報を委託先に開示する必要が生じることがあります。
この場合は、業務委託先と秘密保持契約書(NDA)を締結します。
他社との業務提携やアライアンスの場面では、自社の顧客情報を業務提携先と共有したり、自社のビジネスモデルを業務提携先に開示したりするケースが多くの場面で生じます。
この場合も、業務提携先やアライアンス先と秘密保持契約書(NDA)を締結します。
他社と新規取引を検討する場面では、当該他社との取引検討のために他社に自社ノウハウや技術の一部を開示しなければならないケースもあります。
また、相手に自社の決算書を開示するケースもあり得ます。
こうした場合も、取引を検討する相手との間で秘密保持契約書(NDA)を締結します。
M&Aを検討する場面では、M&Aの対象となる会社の財務内容やビジネスモデル、技術内容を開示してもらいつつ自社とのシナジーの有無や買収金額等について検討します。
このような場合、M&Aを検討する相手との間で秘密保時契約書(NDA)を締結します。
WebサイトやECサイトの制作を制作会社に委託する際には、自社のビジネスモデルや制作を依頼したい内容等を制作会社に開示しなければならないことがあります。
このような場合、制作会社との間で秘密保持契約書(NDA)を締結します。
秘密情報に関して特許申請が予定されている場合、秘密保持契約を締結しておく必要があります。理由は下記の通りです。
特許法では、「公然知られた発明」(公知の発明)は、特許の要件を満たしません(特許法第29条第1項第1号)。
「公然知られた発明」とは、「不特定の者に、秘密でないものとしてその内容が知られた発明」を意味し、守秘義務を締結していない者に情報が知られた場合、「公知」となる危険性があります。
そのため、秘密保持契約を締結していないと、発明に関する情報が漏洩したときは、その発明の特許を取得できなくなる可能性があります。
こうした事態を防ぐため、秘密保持契約の締結が必要となります。
不正競争防止のために、秘密保持契約が役立つケースがあります。
自社が新しい製品やサービスを開発していて、秘密情報が漏洩したことにより、第三者が同等の製品やサービスを作ったとします。
その秘密情報が不正競争防止法の「営業秘密」に該当した場合は、その製品やサービスの販売に対して、差し止め請求や損害賠償請求が可能です。
しかし漏洩した秘密情報が、不正競争防止法が定める営業秘密として認められるためには、その情報が秘密として管理されていることが条件になります。
秘密保持契約を交わしていないと、秘密として管理されていなかった証拠となり、秘密情報という根拠が弱くなります。
秘密保持契約を締結しておくことで、情報の秘密管理性を主張できます。
秘密保持契約は、遅くとも相手方に秘密情報を開示する前までに締結しておく必要があります。
秘密保持契約を締結する前の商談中に秘密情報を開示し、開示先の企業と最終的に取引につながらなかった場合、相手方に秘密情報をもらしただけとなってしまいます。
秘密保持契約を締結する前は、秘密情報は開示しないようにしましょう。
それでは、秘密保持契約書にはどんな項目を設ければよいのでしょうか。
安心して業務取引を行う上で、最低限記載しておきたい項目と留意したいポイントをピックアップしました。
秘密保持の対象となる情報の内容と『秘密情報』『企業秘密』など契約書上の呼び方を定義します。
どんな目的または業務で知り得た情報が秘密情報にあたるのか特定できるのであれば、可能な限り具体的に書きましょう。
できる限り広範に秘密情報としての保護を受けたい当事者は、定義によって秘密情報があまり限定されないようにするべきですが、反対に、秘密情報を限定したい当事者は、提供者側において秘密であることを明示された情報が秘密情報に当たる、などと定義に盛り込むべきということになります。
秘密保持契約書において最も重要な項目で、相手に秘密保持の義務を課す条項です。
知り得た情報を第三者に開示または漏洩してはいけない旨を記載します。
また、第1条の『秘密情報の定義』でどんな利用目的で知り得た情報が秘密情報か定めていれば、それ以外の目的で秘密情報を使用することを禁止する内容も入れておきましょう。
渡した秘密情報がどのように相手側で利用されているのか、検査することができる権利を定めておく条項です。
検査の結果、問題のある利用方法や管理実態が発覚した場合は、情報利用の差し止め請求ができることも併せて記載しておきましょう。
この事項を定めておくことで、秘密情報の第三者提供や漏洩、流出が起こったときに、情報利用を差し止めることができます。
契約終了時、または契約期間中に秘密情報の破棄・返却を求める条項です。情報の性質や内容により、破棄や消去を求めることもできます。
形式上の取引では、渡した情報が完全に返却、破棄、消去されたのか確認することは難しいものです。
必ず、相手から返還・破棄・消去したという証明や確認書類を提出してもらうことも記載しておきましょう。
契約時に渡した秘密情報を保有していない旨を相手に担保してもらうことで、契約終了後の情報漏洩や不正使用を防ぐほか、万が一事故が発生した事態にも備えておくことができます。
秘密保持義務違反があったときに、損害の賠償や業務契約解除などの制裁事項を定める条項です。
どのような違反があったら、責任を負ってもらうのか具体的に記載しておきましょう。
最後に秘密保持契約書の有効期間を設定し、記載しましょう。
1年などおおよその期間ではなく、業務提携中や取引中などプロジェクトが終わるまでは効力が保持できるような期間を定めましょう。
また、秘密保持契約終了後も一定期間は契約の効力を維持したい場合、その期間も併せて記載しておきます。
『契約終了のいかなる事由を問わず、本契約終了後も2年間は効力を有するものとする』など、残存条項を明記しておくことで、契約終了後も相手は定めた期間が過ぎるまで秘密保持の義務を負うことになります。
ただし、秘密保持義務を半永久的に義務づける目的で契約の有効期間を定めない場合、法律上はいつでも解約できる契約という認識になる可能性があるので注意しましょう。
秘密情報が含まれているデータや資料について、相手に複製を認めるかどうか定める条項です。
複製を認めた場合、秘密情報漏洩の危険性は当然高くなります。
ただし、複製できないと業務に支障が出てしまう場合もあるので、『開示者の承認があれば複製は可とする』など、業務の性質によって柔軟に定める必要もあるでしょう。
取引相手が反社会的勢力である場合、契約解除を可能と定める条項です。
必須ではなく努力義務になりますが、法務省の『企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針』によると、近年のコンプライアンス重視の潮流から、企業も社会的責任を踏まえて反社会的勢力との関係遮断や企業防衛をすることが必要と記載されています。
この条項を設けなくても、反社会的勢力による不当な要求を受けた場合は、警察などに相談して対処することができます。
しかし、法律上違法にはならないような巧妙な取引を仕掛けられる場合もあります。
企業の信用やブランド価値を下げないためにも、定義しておくことが望ましいでしょう。
ただし、相手が反社会的勢力に該当するかどうかは、契約を解除する側が立証しなければなりません。
そのため、下記の定義を取り入れ、反社会的勢力の排除条項を適切に定める必要があります。
ここまでが秘密保持契約書において、最低限設けておきたい項目です。
さらに、必要に応じて、以下の項目も追記しておくとよいでしょう。
『合意管轄』とは、秘密保持契約を結んだ相手と万が一裁判になった場合、どこの裁判所で裁判を行うかを合意の上で決めておくことです。
契約書で『専属的合意管轄』を明記した場合、それ以外の裁判所に訴えを提起することができなくなります。
『専属的合意管轄』とは、この条項で決めた裁判所のみで裁判を行い、それ以外の裁判所への提訴は認めないというものです。
例えば、東京にあるA社が大阪にあるB社と秘密保持契約を結んで業務提携を開始したところ、A社社員による情報漏洩が発覚し、B社が訴えたとします。
このとき、専属的合意管轄裁判所を決めていなかった場合、B社は本社所在地である大阪で訴訟を起こすことができます。
当然、A社は大阪で裁判に対応しなければならず、事業責任者などの社員はもちろん、弁護士も含めた出張費用と移動などの労力がかかることになります。
そのため、『専属的合意管轄』として自社が対応できる管轄の裁判所を定めておく必要があります。また、専属的合意管轄裁判所を定めるにあたっては、以下の事項を記載する必要があります。
民事訴訟法第11条1項によって、合意管轄裁判所を定めることができるのは第一審に限られるため、定義しておくことが必要です。
民事訴訟法第11条2項では、『前項の合意は、一定の法律関係に基づく訴えに関し、かつ、書面でしなければ、その効力を生じない。』とあるため、契約書面上で『本契約に関する紛争』など訴訟内容が法律関係に準ずるものであることを定義しておきましょう。
本条項の主要項目であり、トラブルが発生した場合に裁判を行う裁判所を記載します。
自社がプライバシーマーク(Pマーク)を取得している場合は、一般的な秘密保持契約書の内容に、以下の項目を追加する必要があります。
プライバシーマークの要求事項上、個人情報の取り扱いを委託する際、委託先から第三者へ個人情報の取り扱いを再委託する場合のルールを設けなければなりません。
再委託とは、A社がB社に個人情報を含むシステムの保守業務を委託していたとして、さらにB社からC社へ一部の保守業務を委託した場合などが該当します。
こういった再委託が勝手に行われてしまっては、情報漏洩や不正利用の危険性が高まります。そのため、許可・不許可や許可する場合の条件(書面申請等)といった、再委託に関するルールをあらかじめ決めておくことが重要です。
このような再委託の場合を想定して下記のような規定を設けることが重要となります。
個人情報の取り扱いを委託した委託先に、預けた個人情報の取り扱いに関する管理状況などを定期的に報告してもらうことを義務づける事項です。
これもプライバシーマークの要求事項で求められているため、報告頻度などをきちんと決めておきましょう。
最後に個人情報の取り扱いを委託する際に、預けた個人情報を委託先が適切に取り扱っているかどうか確認を行うという規定も定めておく必要があります。
確認方法は、業務の性質や必要性に応じて、作業所やオフィスに立ち入り調査などを実施します。
この権限が情報提供者側にあることと、どのような確認作業を行うのか定めておきましょう。
秘密保持契約書 株式会社○○○(以下「甲」という)と、株式会社○○○(以下「乙」という」)とは、甲との取引(以下「本件取引」という)に関連して相互に開示される秘密情報等の取り扱いについて、次のとおり合意し、契約(以下「本契約」という)を締結する。なお、本契約の当事者のうち、秘密情報を開示する立場にある者を「開示者」といい秘密情報の開示を受ける立場にある者を「受領者」という。 第1条 (秘密情報の定義) 1. 本契約において「秘密情報」とは、本契約有効期間中に本件取引を遂行するにあたり、開示目的に関連して受領者が開示者より知り得た技術・営業・顧客・業務などの情報、その他の事項に関連する一切の情報をいう。口頭・書面・データなどの形態を問わず、受領者が当該情報に基づいて判明または推知された事実や情報も含むものとする。 2. 次の各号に掲げる情報は秘密情報に該当しないものとする。 1)情報受領者がすでに保有していた情報等 2)公知の情報又は当事者の帰責事由によらず公知となった情報等 3)情報受領者が本件取引と関わりなく独自に開発・取得した情報等 4)秘密保持義務に違反しない第三者から正当に取得した情報等 5)法令に基づき官公庁又は裁判所から開示を義務付けられた情報等 第2条 (秘密保持・目的外使用の禁止義務) 1.受領者は原則、秘密情報等の秘密を保持し、開示者の事前の承認を得た場合を除き、いかなる第三者にも開示および漏洩しないものとし、また複製しないものとする。 2.受領者は、秘密情報を本契約および開示目的以外に使用してはならないものとする。 3.受領者は、本契約の規定を遵守させることを条件として、受領者側の社内において、本契約目的の遂行に必要な従業員に対してのみ、秘密情報を開示できるものとする。 第3条 (検査・差し止め請求) 1. 開示者は、開示した秘密情報が受領者側において適切に取り扱われているか、必要に応じて検査できるものとする。 2. 検査の結果、受領者が本契約に違反していること、または不適切と判断される事実が発覚した場合、開示者は受領者に対し、開示した秘密情報の使用の差し止め請求を行うことができるものとする。 第4条 (秘密情報の返却) 1. 受領者は、本契約の終了または開示者が要請した場合に、速やかに秘密情報の使用を停止し、その秘密情報(全てもしくは一部を問わず、その複製物を含む)を開示者に返却するものとする。また、電子的記録については消去し、文書などは破棄するものとする。 2. 返却および消去、破棄については、受領者から開示者へその旨を証明する書面を発行すること。 第5条 (損害賠償) 1. 受領者が本契約に違反した場合、直ちに本契約及び関連する取引または業務を解除できるものとする。 2.受領者の責に帰すべき事由により、秘密情報が漏洩し、開示者が損害を被った場合、受領者は開示者に対して賠償責任を負うものとする。 3.甲および乙は前項のほか、本契約に違反し、相手方に損害を与えたときは、賠償責任を負うものとする。 第6条 (有効期間) 1.本契約の有効期間は、本書末尾に記載される締結日から○年間とする。 2.本契約の有効期間終了後も、第2条及び第5条の規定は期間終了以後○年間有効に存続する。 第7条 (複製に関して) 1.開示者が開示した秘密情報に関して、受領者が紙、電子データなど形態を問わず、複製物を作成することは原則認めないものとする。 第8条 (反社会的勢力の排除) 1.甲および乙は、それぞれ相手方に対し、次の各号に掲げる事項を確約する。 1)自らが、暴力団、暴力関係企業、総会屋もしくはこれらに準ずる者または構成員(以下「反社会的勢力」という)ではないこと。 2)自らの役員(業務を遂行する社員、取締役、執行役員またはこれらに準ずる者)が反社会的勢力ではないこと。 3)本契約締結に際して、反社会的勢力に自己の名義を利用させていないこと。 4)本契約に関して、自らまたは第三者を利用して、脅迫、暴力、偽計、威力を用いた業務妨害、信用毀損などの行為(および、それらに準ずる行為)をしないこと。 2.甲および乙の一方が、前項に反したことが判明した場合、相手方は何らの催告を要せずして、本契約を解除することができる。 3.前項により本契約が解除された場合、解除された者は、解除により生じる損害について、相手方に一切の請求を行わないこと。 第9条(専属的合意管轄裁判所) 1.本契約に関する一切の訴訟については、○○地方裁判所または○○簡易裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。 以上、本契約締結の証として本書2通を作成し、甲及び乙が記名捺印の上、各1通を保有する 年 月 日 甲:所在地 会社名 代表取締役名 乙:所在地 会社名 代表取締役名 |
秘密保持契約書は、業界や業務の性質によって条項を増やしたり、相手の行動を制限する条項を厳格にしたりすることもあります。
秘密保持契約書の条項に自社で判断がつかない場合は、無理に内容を決めず、弁護士に相談してみましょう。
弁護士に相談するメリットは自社の業界や業務性質にあったひな形を作成してもらえることと、契約の内容について法的な観点からのアドバイスを得られるということです。
相談する際は、ITや製造など自社の業界事例を扱ったことのある弁護士に任せるとよいでしょう。
すでに自社で作成した秘密保持契約書がある場合は、契約内容のリーガルチェックのみでも相談が可能です。
条項の抜け漏れチェックはもちろん、最近の事件や訴訟傾向から盛り込んでおいたほうがよい条項の追加など、専門的なアドバイスが得られるでしょう。
情報を開示する側、受領する側、いずれの場合においても契約書の内容を確認し、秘密保持対策や漏洩予防策などを実務に落とし込むことが必要です。
秘密情報の中でも、不正競争防止法において秘密管理性・有用性・非公知性の3要件を満たした『営業秘密』の漏洩や不正利用となると、不正競争防止法違反で民事もしくは刑事上の措置に発展する場合があります。
過去の違反事例や訴訟事例など業界での判例を知っておき、どのような契約内容にしておくべきか、管理方法や保護体制なども含めたアドバイスを聞いて実務的な対策も立てておきましょう。
弁護士事務所の規模や相談プランによって変わってくるため、事前に弁護士へ問い合わせ、見積もっておくと安心ですが、相場としては下記のようになるでしょう。
最後に秘密保持契約書を締結するまでの流れをご紹介します。
まずは、秘密保持契約書のひな形を参考に相手方と契約内容について協議し、内容を固めていきます。
開示する情報がどこまで秘密保持対象となるのか、秘密保持義務を負う関係者の範囲、情報漏洩や発覚した際の差し止め請求や損害賠償請求の詳細、契約書の有効期間、複製許可の有無、トラブルがあった際の管轄裁判所など決めておかなければならない条項は多岐に渡ります。
契約締結後に抜け漏れが発覚し、業務が思うように進行できなかった、トラブルが起きてしまった…ということにならないためにも、あらかじめ双方の事情をヒアリングし、内容をきちんと決めておきましょう。
秘密保持契約締結にあたっては、両社ないし一方の会社が契約書のひな型を持っている場合、どの契約書をベースとして締結するかを決めます。
自社のひな型がある場合はそれを使えるように進めることも重要です。
自社に不利な内容でないことが予め分かっているからです。
契約内容が決まったら、自社の法務だけでなく、相手方企業の法務とのすり合わせも必要です。
一方に不利な契約内容になっていたり、相手方が対応できない条項などがあったりすると、後々トラブルになりかねません。
内容確認と修正作業を重ねて、双方が合意できる契約内容をつくりましょう。
秘密保持契約書の内容が確定できたら、両社の記名と押印をしたものを2部(同じ内容の原本を締結する会社(人数)分)作成し、両社の代表者が署名(または記名押印)を行い当事者が1通ずつ原本を保管します。
さらに契約書の偽造や改ざん、差し替えを防ぐため、割印を押します(秘密保持契約書が1枚で構成されていれば、署名や記名押印、契約日などがあるため、割印が不要となる場合もあります)。2通の契約書を重ねて少しずらした部分に、両社が押印したものが割印です。契約書が1枚以上になる場合は、各ページのつなぎ目にも割印を押しましょう。
なお、割印がなくても契約書そのものはそれぞれ独立して法的な効力を持ちますが、トラブルを避けるためにもしっかりと割印を行っておきましょう。
秘密保持契約書が複数ページで構成される場合には、ページの一部を抜く・差し替える等の改ざんを防ぐため、ページ見開き部分に「契印」を押します。
しかし多くのページがある場合は必要な契印が多くなるため、製本テープなどを使って製本するのが良いでしょう。
製本している場合は全ての見開きページに契印せず、帯と表紙または裏表紙に行うだけで済みます。
企業の業務性質や契約内容によって変わってくるため、秘密保持契約書の作成から締結までに、法的に定められた期間はありません。
お互いの業務に関する要件や予定を踏まえた最適な期間を設定して、契約書作成から締結まで行えるとよいでしょう。
秘密保持契約書に収入印紙を貼る必要はありません。
秘密保持契約書は、印紙税法上の課税文書要件に該当しないため、印紙税が課せられません。
秘密保持契約書を作成後、契約相手に郵送で、署名と捺印を依頼する場合があります。
その際には、郵便の種別を「簡易書留」等にして配達記録を残しておきましょう。
普通郵便で郵送した場合、確実に届いたかどうかの証拠が残りません。
簡易書留や配達記録郵便にしておけば、郵送相手に手渡しで届けてくれますし、配達状況をインターネット上で確認でき、配達した事実を証明してくれたりするので安心です。
返送用の封筒も同封して郵送することもマナーとなっています。返信用切手を貼付することも忘れないようにしましょう。
業務提携や取引をする上で、秘密保持契約書はとても重要な契約です。
自社の大切な秘密情報を守るためにも、業界や業務性質に適合した契約内容を決めることが大切です。
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