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名誉毀損の対処法 弁護士監修記事 更新日:

借金をばらすと名誉毀損になるケース|相手を訴えられる状況とは

弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士
監修記事

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個人的な事で、できれば秘密にしておきたい悩みは誰にでもあるものです。

それをネット上でばらされてしまったら、精神的ショックを受けても無理はないでしょう。

特に借金問題はプライバシー性の高い情報ですし、個人の信用問題にもなりますので、これが公になれば実際の生活に大きな支障となりかねません。

したがって、正当な理由なく個人の借金状況を公表するような行為は、場合によっては名誉毀損として民事・刑事の問題となる可能性もあります。

この記事では、名誉毀損が成立する条件やネットで借金をばらされた時の対処法をご紹介します。

借金トラブルでお悩みの場合は、参考にしてみてください。

ネット上で借金があることをばらされてしまったあなたへ

ネット上で借金があることをばらされてしまったけど、名誉棄損に当たるかわからず悩んでいませんか?

 

結論からいうと、借金をばらすことで社会的評価を下げるような場合、名誉棄損に当たる可能性があります。

もし、今すぐ投稿者を名誉毀損で責任追及したい場合、弁護士に相談・依頼するのをおすすめします

 

弁護士に相談・依頼すると以下のようなメリットを得ることができます。

  • 借金をばらすことが名誉毀損に当たるか判断してもらえる
  • 依頼すれば、発信者情報開示請求をしてもらえる
  • 依頼すれば、投稿者に損害賠償請求できる

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借金をばらす行為は名誉毀損になる可能性がある

名誉棄損には、民事的なものと刑事的なものがありますが、いずれの場合でも以下の3つの成立要件があります。

  • 社会的評価を下げる可能性があること
  • 具体的な事実を挙げていること
  • 公然の場であること

<①社会的評価を下げる可能性があること>

ここでいう社会とは会社や学校などの団体だけに限らず、一般的なという意味のこと。

つまり、周囲からの外部評価を下げてしまったらという意味を持っています。

具体的な基準はありませんが、常識的に見て「社内で不倫している」や「借金の末自己破産した」など「世間的に後ろめたいと思われている内容」であれば、社会的評価を下げる可能性があるといえるでしょう。

<②具体的な事実を挙げていること>

ネットでばらされた内容が感想や評価ではなく、具体的な事実である必要があります。

すなわち、その内容について事実確認の対象となり得るものかどうかということです。

例えば、「誰々は借金で首が回らない」という内容は、借金の有無や返済の可否について事実確認の対象となりますので、具体的事実といえそうです。

他方、「誰々は気持ち悪い」「誰々は馬鹿」というような内容は、個人の感想(誹謗中傷)であり、事実確認の対象となるものではありませんので、具体的事実とはいえません。

この場合は侮辱行為となる余地はありますが、名誉毀損にはなりません。

<③公然の場であること>

公然とは不特定又は多数の人間が知りうる状況にあるということです。

ネット(掲示板、SNS、ブログなど)に書き込まれた内容は不特定又は多数の人の目に触れる可能性が高いです。

したがって、基本的には、『ネット=公然の場』と認識して問題ないでしょう。

以上のことから、インターネット上で個人を特定したうえで、当該人物について借金トラブルが有ることを具体的に摘示したような場合には、上記の3つの要件を満たし名誉毀損となる可能性は高いです。

記載の内容が真実でも虚偽でも名誉毀損は成立する

名誉毀損の成立要件である具体的事実は、真実であるか虚偽であるかを問いません

名誉棄損とは人の社会的信用を低下させる行為をいい、具体的事実が真実であっても虚偽であっても信用を失うような内容であれば、これに該当するのです。

したがって、個人の借金トラブルが真実であっても、虚偽情報であっても、これを公然と摘示するようなことがあれば名誉毀損行為として民事・刑事の責任を負う可能性があります。

もっとも、摘示した内容が真実である(真実と信じるに足る相当の理由がある)場合で、当該行為が公共性・公益性のあるものであれば、名誉毀損としての違法性や故意・過失が否定される可能性はあります。

公然性について

名誉毀損に公然性が必要であることは上記のとおりです。

したがって、特定個人の名誉毀損となる情報を、特定個人間でやり取りしたような場合であれば、名誉毀損とならない可能性もあります。

例えば、友人感のLINEのやり取りで、「誰々は借金トラブルで破産寸前らしいよ」という情報を提供しても、特定個人間のやり取りであり、不特定又は多数に伝播する可能性が乏しいため、名誉毀損は成立しにくいといえます。

事例紹介

<『Yomiuri Online』の人気コーナー『発言小町』によせられた投稿より>

元同棲相手が滞納している家賃と鍵の返却をX(旧Twitter)上でおこなった事例です。

X(旧Twitter)の中で「借金を返せ」「家賃を払え」「鍵を返せ」という表現が多数用いられており、一般的読者からすれば、X(旧Twitter)主について「金を返していないらしい」「家賃の滞納をしているらしい」と認識されるのが通常でしょう。

しかし、このようなX(旧Twitter)ではX(旧Twitter)主がどこの誰かは全く分かりません

そうすると、結局、特定個人の外部的評価が下がったとはいえなさそうです。

要するにX(旧Twitter)主と現実世界の某がつながって初めて、当該某の名誉が毀損されるのであり、ここがつながらなければ名誉毀損とはなりません

<佐賀県武雄市長と市、賠償命令確定へ 名誉毀損訴訟(佐賀新聞 H28.5.7)>

当時佐賀県武雄市長であった樋渡啓祐氏が、自身のブログにおける投稿記事が他議員に対する名誉毀損に当たるとして、損害賠償及び記事の削除を命じられたようです。

報道では、市長は、武雄市議員の谷口市議と妻について「高齢者からの借金を返さない市議」「借金は返しましょう」などの言動を市議会で繰り返したうえ、個人ブログの中で「借金踏み倒し議員の配偶者」などいう書き込みをしたようです。

市議会の内容は議事録等で公表されますし、ブログもインターネットを通じて全世界に発信されますので、上記事例では公然と具体的事実を摘示して特定個人の評価を下げる恐れのある行為をしたといえそうです。

借金を周囲にばらされた時の対処法

借金していることを周囲にばらされてしまったときには、以下のような対応が考えられます。

サイト(掲示板・SNS等)へ削除依頼を出す

掲示板・ブログ・SNSなど、ほとんどのネットサービスが利用規約で、名誉毀損に該当する投稿を禁じています。

したがって、自身の借金についての投稿が名誉毀損となるような場合には、当該利用規約に従ってコンテンツ管理者に対して削除依頼を出すことで、削除に応じてもらえる可能性が高いでしょう。

もっとも、名誉毀損であることが明白ではなかったり、公共性・公益性のある内容であった場合には、削除依頼に応じてもらえない可能性もあります。

この場合は法的手続(仮処分手続)を通じて削除を試みることを検討せざるを得ません。

この場合は弁護士への相談を検討してみてください。

投稿者を特定して責任追及する 

投稿内容が名誉毀損となる場合は、投稿者に対して民事的・刑事的責任を追及する余地があります。

ここでは主に民事的責任を追及する場合(具体的には損害賠償請求をおこなう場合)について簡単に説明します。

投稿者に対して損害賠償請求をおこなう流れ

  1. 名誉毀損の証拠を保存する
  2. 投稿者の身元特定
  3. 損害賠償(慰謝料)請求

まずは証拠の確保が急務です。具体的には投稿内容を保全しつつ、投稿に用いられたIP情報を確保する必要があります(IP情報の取得について法的手続が必要となることも多いです)。

そのうえで、投稿者の身元を特定するための法的手続(発信者情報開示請求訴訟)をおこないます。

結果、投稿者が特定できれば、当該投稿者に対して民事的な請求をおこなうという流れです。

このように、一連の流れの中で複数の法的手続が必要となる可能性があります。

したがって、投稿者への責任追及まで考えるのであれば、弁護士に相談するのが適切です。

なお、2022年10月27日までに改正プロバイダ責任制限法が施行されます。

改正プロバイダ責任制限法では、従来2段階の裁判手続が必要だった発信者情報開示請求を、1回の非訟手続によっておこなうことができるようになります。

これにより、被害者側の負担が軽減すると考えられるでしょう。

また、ログイン時情報の発信者情報開示請求は、一定の条件はあるものの、明文で認められるようになります。

名誉毀損の慰謝料と請求費用の相場

ネット名誉毀損の被害で請求できる慰謝料の相場は以下のとおりです。

あくまで目安であり、必ずこうなるというものではありません。

名誉毀損(一般人)

10万円~50万円

名誉棄損(法人)

50万円~100万円

次に、弁護士への依頼費用ですが、相場は以下の通りです。これもあくまで目安です。

 

着手金

報酬金

裁判費用

投稿者の身元特定

裁判外

約5万円~10万円

約15万円

×

裁判

約20万円~30万円

約15万円~20万円

6万円

慰謝料請求

裁判外

約10万円

慰謝料の16%

×

裁判

約20万円

慰謝料の16%

3万円

弁護士費用は、法律事務所によって費用の算出方法はさまざまです。費用の詳細は依頼前の法律相談で念入りに確認しておきましょう。

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借金の揉め事を回避する方法

古くから「金の貸し借りは不和の元」といわれているように、金銭の貸し借りはもめ事になりやすく、親しい関係も壊してしまうことになりかねません。

そこで、金銭の貸し借りのトラブルを回避するために、どうすればよいのかを考えてみましょう。

個人間で金の貸し借りをしない。

親しい個人間(職場の同僚、私的な友人、親族など)では、金の貸し借りをそもそもしないというのが鉄則です。

1000円とか1万円とか少額であれば問題ないでしょうが、10万、100万などのまとまった金を個人間で貸し借りするとトラブルの元になります。

※もし金融機関からの借金を抱えており、返済がどうしても難しそうであれば、姉妹サイトの『ベンナビ債務整理』での相談も検討してみてください。

書面化する

どうしても個人間で貸し借りが必要であれば、必ず書面化しましょう。

口約束はかなりの確率でトラブルに発展します。

借用書には少なくとも、貸付日、貸付額、返済日を明記してサインをしてもらいましょう。

なお、書面を取っておけば大丈夫と考えている方が多数いますが、書面があるから必ず回収できるわけではありません。

相手が任意に返済しない限りは、書面に基づいて訴訟を提起し、相手の財産を差し押さえ、強制的な回収を図る必要があります。

これ自体かなり大変ですし、そもそも相手に財産がなければ回収自体できません

金を返さないということで相手が犯罪に問われることもないので、警察の力を借りることもできません

したがって、書面化したからといって借金トラブルを回避できるわけではないので、十分注意してください。

まとめ

借金と名誉毀損の関係について簡単に説明しました。参考となれば幸いです。

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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。
ベンナビIT(旧IT弁護士ナビ)編集部
編集部

本記事はベンナビIT(旧IT弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビIT(旧IT弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。
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