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誹謗中傷で訴訟を起こす方法|加害者を訴えられる状況とは

弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士
監修記事
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他者に対する悪口や嫌がらせも、度が過ぎれば民事訴訟を起こすことで慰謝料請求が認められる可能性があります。

ただ、誰かを訴えた経験なんてない人のほうが多いかと思われます。裁判はどんな状況でどうすれば起こせるのか、判断が難しくお悩みの方も多いのではないでしょうか。

この記事では、誹謗中傷被害で加害者を訴える方法についてご紹介します。訴訟を起こせる被害の内容や手続きの流れなどを解説していますので、裁判を検討されている場合は、参考にしてみてください。

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この記事に記載の情報は2023年11月08日時点のものです

誹謗中傷を訴えられる状況とは

民事訴訟を起こすこと自体は必ずしも難しいことではありませんが、訴訟を起こしても自身の請求・主張が必ず認められるとは限りません。

例えば、「2人切りの個室でバカと言われた」、「SNSでハンドルネームに対する悪評を流された」という内容では、訴えても請求が認められる可能性は高くないと思われます。

裁判で損害賠償(慰謝料)請求が認められるためには、誹謗中傷が違法な権利侵害であることが証明できる場合に限られます

誹謗中傷が名誉権やプライバシー権など他者の権利を違法に侵害するものであれば、民事訴訟を起こすことを検討する余地はあるかもしれません。

誹謗中傷による権利侵害

誹謗中傷が違法行為となり得る例としていくつかの権利侵害行為を紹介します。

誹謗中傷による権利侵害の代表例

名誉毀損

公然の場で具体的な事実を挙げたうえで第三者の評判を落とす行為(例:あいつは不倫している、あいつは前科持ちだ)

侮辱

公然の場で具体的事実を挙げないで第三者の評判を落とす行為(例:昔からずっと根暗、仕事ができない落ちこぼれ)

肖像権侵害

公然の場で撮影や公開を許可していない肖像物を公表する行為(例:隠し撮りの公開、SNS限定写真の公開)

プライバシー侵害

公共の場で公開を望んでいない個人情報や私生活の情報を暴露する行為(例:本名や住所などの個人情報、出社退社の時間帯)

誹謗中傷による裁判では、上記の権利が違法に侵害された事実を立証できれば、何らかの損害賠償請求が認められる可能性はあります。ここでは、それぞれの権利侵害の概要を解説させていただきます。

名誉毀損

名誉毀損とは、多くの人に伝わる可能性がある場所(ネットも含む)で、他者の社会的評価を落とす可能性のある事実を指摘する行為です。

社会的評価を落とす可能性のある事実かどうかは、事案に応じて判断されます。例えば、「元犯罪者」や「不倫している」など、一般的に悪いイメージとして捉えられている事柄は、名誉毀損となりやすい傾向にあります。

【詳細記事】名誉毀損とは|成立する要件と訴える方法をわかりやすく解説

侮辱

侮辱とは、多くの人に伝わる可能性がある場所(ネットも含む)で、具体的な事実を挙げずに、他者の社会的評価を害するような行為のことです。

例えば、「あいつは気持ち悪い」といった個人の主観に基づく誹謗中傷は、具体的な事実が挙げられていないので、名誉毀損になる余地はなく、侮辱となる余地を残すのみです。

すなわち、侮辱は、誹謗中傷のうち名誉毀損に至らないようなものを広く含む概念と言えます。

【詳細記事】ネットで侮辱罪になる発言とは|誹謗中傷による権利侵害について

肖像権侵害

肖像権侵害とは、多くの人に伝わる可能性がある場所(ネットも含む)に、対象人物が特定できる形で当該人物の写真や映像を無断で公開する場合に成立し得ます。

以下のすべての要件を満たすような場合、肖像権の侵害が認められる可能性は相当程度あります。

肖像権侵害が成立する要件

  • 自分であることが明確にわかる
  • 撮影および撮影物の公開を許可してない
  • 不特定多数の目につく場所への公開
  • 個人特定によるダメージが大きい

【詳細記事】肖像権侵害に当たる行為と侵害された時の対処法

プライバシー侵害

プライバシー侵害とは、公表されていない他者の個人情報や私生活の情報を暴露する行為です。

例えば、個人を特定できる形でその健康状態や過去の交際歴など本人が公開されたくないと考えられる情報がプライバシー情報に当たります。

【詳細記事】プライバシー侵害とは|成立要件と事例(判例)で具体例を解説

誹謗中傷被害の訴訟手続きの流れ

誹謗中傷被害で訴訟を起こす際の手続きの流れは、以下の通りです。

訴訟手続きの流れ

  1. 誹謗中傷の証拠を確保する
  2. 加害者の身元を特定する
  3. 裁判での損害賠償請求

①誹謗中傷の証拠を確保する

裁判で権利侵害の被害を立証するには、誹謗中傷を受けた事実を証明するための証拠が必要です。まずは、誹謗中傷の事実が確認できる証拠を用意してください。

ネットでの誹謗中傷であれば、サイトの魚拓を取るのが定石です。難しい場合はスクリーンショットを取る方法で代用します。口頭での誹謗中傷であれば、ボイスレコーダーの記録などが証拠としてあり得るでしょう。

②加害者の身元を特定する

裁判を起こすには、裁判所にどこの誰を訴えたいのかを提示する必要があります。そのため、誹謗中傷をした加害者の身元を特定しなくてはいけません。

ネットで誹謗中傷を受けた場合には、サイト管理者やプロバイダ(ネット事業者)に対して、加害者の情報開示請求の手続きが必要です。

加害者の特定手続きの流れ

  1. サイトへ加害者のIPアドレス開示請求
  2. 仮処分(※開示に応じてもらえなかった場合)
  3. IPアドレスからプロバイダの特定
  4. プロバイダへ投稿者の個人情報開示請求
  5. 裁判(※開示に応じてもらえなかった場合)
  6. 加害者特定

なお、誹謗中傷が書き込まれたサイトへ加害者のIPアドレス情報が記録されている期間は、3ヶ月が目安と言われています。この期間を過ぎると、加害者を特定できず、訴訟は不可能になるのでご注意ください。

【詳細記事】ネット誹謗中傷の特定方法|書き込み犯人を調べる費用の相場は?

 

また、2022年10月27日までに改正プロバイダ責任制限法が施行されます。改正プロバイダ責任制限法では、従来2段階の裁判手続が必要だった発信者情報開示請求を、1回の非訟手続によって行うことができるようになります。これにより、被害者側の負担が軽減すると考えられるでしょう。また、ログイン時情報の発信者情報開示請求は、一定の条件はあるものの、明文で認められるようになります。

③示談または裁判での損害賠償請求

加害者を特定したら、示談または裁判で損害賠償(慰謝料)請求を行います。加害者が損害賠償の支払いに素直に応じるなら示談、応じない場合は裁判を通じての請求になるでしょう。

誹謗中傷の被害で請求できる慰謝料の目安は、以下の通りです。

誹謗中傷の内容

慰謝料の相場

名誉毀損(一般人)

10〜50万円

名誉毀損(事業主)

50〜100万円

侮辱

10〜50万円

プライバシー侵害

10〜50万円

プライバシー侵害(ヌード写真の公開)

100万円以上

訴訟の手続き依頼は弁護士へ

加害者特定や損害賠償請求の裁判には、ITと法律の知識が不可欠です。ご自身の主張が認められる可能性を少しでも高めたいのであれば、弁護士へ手続きを依頼するべきでしょう。

個人でも訴訟を起こせないわけではありませんが、専門知識がないと難しいのが実情です。そのため、誹謗中傷に関する訴訟は、弁護士に依頼するケースが一般的といえます。

まずは、誹謗中傷の被害が訴訟できる案件かどうかを法律相談で確認し、弁護士のアドバイスを参考にして訴訟を起こすべきか判断されることをおすすめします。

訴訟にかかる費用の目安

誹謗中傷被害の訴訟にかかる費用の目安は、以下の通りです。

手数料

10〜20万円

報酬金

損害賠償の16%

また、ネット上での誹謗中傷で加害者の身元特定も必要になる場合には、以下の費用も必要になります。

 

着手金

報酬金

裁判費用

削除依頼・IP特定

裁判外

5~10万円

5~10万円

×

裁判

約20万円

約15万円

3万円

発信者の身元特定

裁判外

約5~10万円

約15万円

×

裁判

約20~30万円

約15~20万円

6万円

※法律事務所によって金額や料金体系は異なります。あくまで目安として参考にしていただければ幸いです。

訴訟を依頼する弁護士の選び方

弁護士へ法律問題の解決を依頼する際には、弁護士が得意とする法律分野を意識する必要があります。誹謗中傷被害の依頼は、誹謗中傷トラブルの解決実績がある弁護士から検討しましょう。

また、ネット誹謗中傷の加害者特定手続きには、法律だけでなくITの知識も必要になります。ネットでの被害を相談する場合には、IT分野に注力をしている法律事務所への相談がおすすめです。

ネット誹謗中傷被害を依頼する弁護士の選び方については、以下の記事で解説をしています。詳細を確認したい場合は、あわせてご参照ください。

まとめ

誹謗中傷の内容が、他者の権利を侵害する内容である場合には、訴訟で損害賠償の請求が認められる可能性があります。訴訟手続きの流れは、以下の通りです。

  1. 誹謗中傷の証拠を確保する
  2. 加害者の身元を特定する
  3. 裁判での損害賠償請求


訴訟にはITや法律の専門知識が必要になります。ご自身だけでの対応が難しいと感じる場合は、一人で悩まずに弁護士の法律相談サービスをぜひご活用ください。

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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。
ベンナビIT(旧IT弁護士ナビ)編集部
編集部

本記事はベンナビIT(旧IT弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビIT(旧IT弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。
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