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ネット誹謗中傷 弁護士監修記事 更新日:

誹謗中傷の発信者情報開示請求にかかる期間は?いつまでに請求すべき?注意点を解説

ゆら総合法律事務所
阿部由羅
監修記事

SNSや匿名掲示板で、匿名による誹謗中傷を受けて悩んでいる方はいらっしゃいませんか。

誹謗中傷の匿名投稿者を特定する代表的な方法として、「発信者情報開示請求」が挙げられます。

発信者情報開示請求には数ヵ月の期間を要しますので、速やかに弁護士へ相談して対応を依頼しましょう。

本記事では、発信者情報開示請求にかかる期間や、発信者情報開示請求に関連する対応について留意すべき期限などを解説します。

インターネット上で誹謗中傷を受け、発信者情報開示請求を検討している方は、本記事を参考にしてください。

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誹謗中傷の発信者情報開示請求にかかる期間はどのくらい?

誹謗中傷の匿名投稿者を特定するためには、「発信者情報開示請求」をおこなうことが考えられます(プロバイダ責任制限法5条)。

現行の制度における発信者情報開示請求は実務上、「従来型」と「発信者情報開示命令」の2種類の手続きによっておこなわれています。

従来型の発信者情報開示請求

従来型の手続きは、誹謗中傷が投稿されたサイトの管理者(=コンテンツ・プロバイダ)に対する発信者情報開示請求と、投稿に用いられた端末のインターネット接続業者(=アクセス・プロバイダ)に対する発信者情報開示請求を2段階でおこなうというものです。

従来型の発信者情報開示請求の手続きの流れ

従来型の発信者情報開示請求の手続きの流れは、以下のとおりです。

  1. 裁判所に対して、コンテンツ・プロバイダに発信者情報の開示を命じる仮処分を申し立てます。
  2. 権利侵害の事実などを疎明すれば、裁判所が仮処分命令を発します。
  3. 仮処分命令を受けたコンテンツ・プロバイダが、申立人に対して発信者情報を開示します。
  4. IPアドレスの開示を受けられるケースが多いです。
  5. 開示を受けたIPアドレスを基に特定したアクセス・プロバイダに対して、発信者情報開示請求訴訟を提起します。
  6. 権利侵害の事実などを立証すれば、裁判所がアクセス・プロバイダに対して発信者情報の開示を命ずる判決を言い渡します。
  7. 判決によって発信者情報の開示を命じられたアクセス・プロバイダから、誹謗中傷の投稿者の個人情報(氏名・住所など)が開示されます。

従来型の発信者情報開示請求のメリット・デメリット

従来型の手続きには、仮処分命令が発せられた段階で、コンテンツ・プロバイダに対する間接強制を申し立てられるメリットがあります。

コンテンツ・プロバイダの動きが遅く、間接強制を受けなければ発信者情報を開示してもらえないような場合には、従来型の手続きを選択すべきでしょう。

その一方で従来型の手続きは、発信者情報開示命令の手続きに比べて煩雑であり、(特に2段階目の訴訟において)長期間を要することが大きなデメリットです。

2022年10月新設|発信者情報開示命令

従来型の手続きの煩雑さや所要期間の長さを改善するため、プロバイダ責任制限法の改正によって、2022年10月1日から「発信者情報開示命令」の手続きが新設されました。

発信者情報開示命令の手続きは、コンテンツ・プロバイダとアクセス・プロバイダに対する発信者情報開示請求を、実質的に一つの手続きで審理するというものです。

発信者情報開示命令の手続きの流れ

発信者情報開示命令の手続きの流れは、以下のとおりです。

  1. コンテンツ・プロバイダを相手方として、裁判所に対して、誹謗中傷の投稿者のIPアドレスなどの開示を求める発信者情報開示命令を申し立てます。
  2. それと同時に、コンテンツ・プロバイダに対してアクセス・プロバイダに関する情報の提供を求める「提供命令」を申し立てます。
  3. 提供命令は、書面審理のみで数日のうちに発せられるのが一般的です。
  4. 提供命令によって判明したアクセス・プロバイダを相手方として、裁判所に対して、誹謗中傷の投稿者の氏名・住所などの開示を求める発信者情報開示命令を申し立てます。
  5. アクセス・プロバイダにおけるログの保存期間が短いと思われる場合は、ログの消去を禁止する「消去禁止命令」も併せて申し立てます。
  6. アクセス・プロバイダを相手方とする発信者情報開示命令の申立てをおこなった旨をコンテンツ・プロバイダに通知します。
  7. コンテンツ・プロバイダはアクセス・プロバイダに対してIPアドレス等を通知し、その旨を裁判所にも通知します。
  8. この段階で、2つの発信者情報開示命令の申立てが併合され、1つの手続きで審理されるようになります。
  9. アクセス・プロバイダが投稿者に対して意見聴取をおこない、投稿者が開示に同意した場合はその時点で発信者情報が開示されます。
  10. 投稿者が拒否した場合は、裁判所の発信者情報開示命令が発令された後に、発信者情報が開示されます。

発信者情報開示命令のメリット・デメリット

発信者情報開示命令の手続きでは、従来型の手続きでは2段階に分かれていた発信者情報開示請求が、実質的に1つの手続きで審理されます。

そのため、発信者情報が開示されるまでに要する期間が大幅に短縮されました。

その一方で、発信者情報開示命令を得たとしても、コンテンツ・プロバイダに対する間接強制は認められません。

そのため、コンテンツ・プロバイダの動きが遅い場合は、かえって従来型の手続きよりも時間をロスしてしまうおそれがあります。

発信者情報開示請求の所要期間

発信者情報開示請求の所要期間は、従来型の手続きで半年から1年程度、発信者情報開示命令の手続きで3ヵ月から4ヵ月程度かかるのが標準的です。

基本的には発信者情報開示命令の手続きによる方が、所要期間を短縮できることが多いでしょう。

しかしながら、コンテンツ・プロバイダの動きが遅い場合には、発信者情報開示命令を得てもIPアドレスがスムーズに開示されないケースがあります。

この場合は、従来型の手続きによって仮処分命令を得た後に間接強制を申し立てた方が、結果的にIPアドレスの開示を早期に受けられることがあります。

従来型と発信者情報開示命令のどちらを選択すべきであるかは、開示請求先のプロバイダの動向を予想しながら判断しなければなりません。

発信者情報開示請求を豊富に取り扱う弁護士のアドバイスを求めましょう。

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発信者情報開示請求はいつまでにおこなうべき?

誹謗中傷が投稿されたサイトの管理者(=コンテンツ・プロバイダ)は、一定期間が過ぎるとIPアドレスなどのログを消去してしまうケースが多いです。

そのため、誹謗中傷などの投稿を見つけたら、速やかに発信者情報開示請求へ着手しましょう。

コンテンツ・プロバイダのログ保存期間は3~6ヵ月程度 | 速やかに開示請求を

コンテンツ・プロバイダが保存しているIPアドレスなどのログは、3ヵ月から6カ月程度が経過すると消去されてしまうことが多いです。

コンテンツ・プロバイダがログを消去してしまうと、発信者情報開示請求を通じて匿名投稿者を投稿することは難しくなります。

ログが消去されてしまう前に、速やかに発信者情報開示請求をおこないましょう。

発信者情報開示請求の時期が遅れてしまった場合の対処法

発信者情報開示請求の時期が遅れてしまうと、誹謗中傷の匿名投稿者を特定できる可能性は大幅に低くなってしまいます。

それでも、同一の者によると思われる別の投稿について発信者情報開示請求をおこなうなど、誹謗中傷の投稿者の責任を追及する余地は残されていることがあります。

弁護士に相談して、どのような責任追及の方法が考えられるかを検討しましょう。

発信者情報の開示を受けた後、損害賠償請求・刑事告訴ができる期間は?

発信者情報開示請求によって誹謗中傷の投稿者を特定したら、損害賠償請求や刑事告訴をおこないましょう。

ただし、損害賠償請求や刑事告訴にも、法律上の期限が設けられているので注意が必要です。

損害賠償請求ができる期間|消滅時効に注意

誹謗中傷によって受けた精神的損害に関する損害賠償請求権は、以下のいずれかの期間が経過すると時効により消滅します(民法724条)。

  1. 被害者またはその法定代理人が、損害および加害者を知った時から3年
  2. 不法行為の時から20年

時効期間が経過した後に、誹謗中傷の投稿者が時効を援用すると、被害者は投稿者に対して損害賠償を請求できなくなってしまいます。

損害賠償請求権の時効完成を阻止するためには、時効期間内に内容証明郵便の送付や訴訟の提起などをおこなう必要がありますので、お早めに弁護士へご相談ください。

刑事告訴ができる期間|犯人を知った時から6ヵ月間

誹謗中傷は名誉毀損罪(刑法230条1項)または侮辱罪(刑法231条)に当たるため、被害者は投稿者を刑事告訴することができます(刑事訴訟法230条)。

刑事告訴をすると、誹謗中傷に関する捜査が促され、投稿者が摘発される可能性が高まります。

名誉毀損罪・侮辱罪はいずれも親告罪とされているため(刑法232条1項)、被害者が犯人を知った日から6ヵ月が経過して以降は、刑事告訴をすることができません。

誹謗中傷の投稿者の処罰を求めたい場合は、早めに警察署へ足を運んで刑事告訴をおこないましょう。

誹謗中傷に関する開示請求を速やかに認めてもらうためのポイント

誹謗中傷の投稿者に関する発信者情報開示請求を速やかに認めてもらうには、誹謗中傷の証拠を確保することと、経験豊富な弁護士へ早期に相談・依頼することが大切です。

誹謗中傷の証拠を確保する

誹謗中傷に関する発信者情報開示請求は、権利侵害を受けていることが明らかな場合に限って認められます(プロバイダ責任制限法5条1項1号)。

権利侵害を受けている事実を示すためには、誹謗中傷の投稿をスクリーンショットで撮影するなど、客観的な証拠を十分に確保することが大切です。

個々の投稿内容だけでは誹謗中傷に当たるかどうか分かりにくい場合は、その文脈などが分かるように、関連する投稿をすべてスクリーンショットで撮影するなどして証拠を確保しましょう。

経験豊富な弁護士へ早期に相談・依頼する

発信者情報開示請求には迅速な対応が求められる上に、必要となる裁判手続きも専門的かつ複雑です。

そのため、発信者情報開示請求を豊富に取り扱っている弁護士に相談することをおすすめします。

サイト管理者(=コンテンツ・プロバイダ)におけるログの保存期間などを考慮すると、発信者情報開示請求を成功させるためには、早期に弁護士へ相談することが非常に大切です。

「ベンナビIT」を活用すれば、発信者情報開示請求に詳しい弁護士をスムーズに探すことができますので、ぜひご利用ください。

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発信者情報開示請求を依頼した場合にかかる弁護士費用の目安

発信者情報開示請求を弁護士に依頼する場合は、弁護士費用を支払う必要があります。

発信者情報開示請求の弁護士費用は、総額で30万円から100万円程度かかるのが標準的です。

具体的な弁護士費用の金額は、依頼先の弁護士によって異なります。

そのため、正式な依頼の前に必ず見積もりを取得しましょう。

見積もりの内容が妥当かどうかを判断するため、複数の弁護士から見積もりを取得して比較することをおすすめします。

さいごに|誹謗中傷の発信者情報開示請求は弁護士に相談を

SNSや匿名掲示板で誹謗中傷を受けたら、発信者情報開示請求をおこなって投稿者を特定し、損害賠償を請求しましょう。

ただし、発信者情報開示請求は迅速におこなわないと、サイト管理者がIPアドレスを削除してしまうなどして失敗に終わってしまうリスクが高くなります。

そのため、誹謗中傷の投稿を発見したら、発信者情報開示請求に詳しい弁護士へ速やかに相談しましょう。

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また、「ベンナビIT」には無料相談ができる弁護士も多数登録されています。

対応内容や費用に納得した上で弁護士に依頼したい方は、「ベンナビIT」を通じて無料相談を申し込みましょう。

誹謗中傷の投稿者から適切な損害賠償を受けるためには、早期に弁護士へ相談することが大切です。

インターネット上で誹謗中傷の被害に遭った方は、「ベンナビIT」を通じてお早めに弁護士へご相談ください。

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この記事の監修者
ゆら総合法律事務所
阿部由羅 (埼玉弁護士会)
西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て、ゆら総合法律事務所代表弁護士。不動産・金融・中小企業向けをはじめとした契約法務を得意としている。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。
ベンナビIT(旧IT弁護士ナビ)編集部
編集部

本記事はベンナビIT(旧IT弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビIT(旧IT弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。
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