X(旧Twitter)やYouTubeなどのSNSを用い、わずかな情報をもとに投稿者の住まいなどの個人情報を特定するのが「特定班」です。
特定班は、発信者の個人情報を無償で調べて拡散する場合もあれば、そうした情報を売却する場合もあります。
特定班が入手した情報は、扱い方によっては以下のような違法行為に当たることがあります。
特定班が流した情報による損害が大きい場合には、損害賠償請求が可能な場合もあります。
本記事では、特定班とはどのようなものか、特定されてしまった場合の対処法や、被害に遭わないための予防策などについて詳しく解説します。
ご自身の大切な個人情報を守るためにも、ぜひ最後までご覧ください。
この章では、特定班の定義や具体的な活動の内容などについて、詳しく解説します。
特定班とは、インターネット上のわずかな情報を用いて、有名人や炎上した人物などの個人名や住所といった個人情報や、その他個人に関する情報を特定するユーザーのことを指します。
もともとは、マンガやアニメのストーリーや描写を調査して、そのモデルとなったと推測される場所やものを特定することを指して使われ始めた言葉です。
現在では、わずかな情報からSNS上の有名人や炎上したアカウントの個人情報を特定して晒したり、場合によってはその情報を売却したりといったことがなされます。
これは特にユーザーのプライバシーに関わる問題となる場合があり、慎重な扱いが求められる問題でもあります。
ただし、特定班の行為が全て問題であると言い切れない部分もあります。
たとえば、2015年の五輪エンブレムの盗作疑惑の際には、公開されたエンブレムのデザインがベルギーの劇場のロゴと酷似していることが問題となり、取り下げられました。
これも、特定班が世界中のデザインを調べて盗作だと主張したことから端を発した例です。
その一方で、多くの人が関心を寄せる有名人や炎上中の人物の個人情報が特定され、それが流出した場合には社会的に大きな問題になる場合もあります。
また、特定されたとみられる情報が必ずしも正しいかどうかを確認できないのもポイントです。
ある例では、炎上した店と別の店の情報が流出し、まったく関係のない店が大きな被害を受けたというケースや、炎上した個人であるとして出回った個人情報が別人のものであり、多数の訴訟へ発展した例があります。
このように、特定班はデマやフェイクニュースの温床にもなりかねないため、根深い問題といえます。
近年、特定班の中には収集した個人情報を悪用する「特定屋」と呼ばれる者たちも出現しています。
特定屋は、収集した個人情報を金銭的な利益を追求する目的で販売したり、不正な目的で使用したりすることがあります。
これにより、個人のプライバシーが侵害され、被害を受けることがあります。
特定屋の活動は、個人のプライバシーを守るうえで大きな懸念となっています。
個人情報の不正利用による被害を防ぐためには、個人が自ら情報を公開する際の注意や、セキュリティ対策の強化が必要です。
また、個人情報の取り扱いに関する法律や規制の整備も重要な課題となっています。
特定班は、インターネット上に公開されている情報やオンライン活動をもとに、個人を特定する手法を用います。
一般的な方法としては、SNS上のつながりや投稿内容をもとに特定することが多く見られます。
特に、画像や映像に写っているものや位置情報から情報を特定することが多いといえます。
また、過去の投稿の内容などからも複合的に分析されて情報が特定されるケースもあります。
たとえば、飲食店で撮影された画像なら、料理や食器の特徴をもとにグルメサイトなどで検索して特定されることがあります。
また、マンホールなど自治体によってデザインが異なるものも手がかりとされることがあります。
このように、特定班はほんのわずかな情報からでも特定できる技術を持っているといえるでしょう。
この章では、違法行為にあたる特定班の行為について詳しく解説します。
特定班の行為によって、プライバシー権や肖像権の侵害にあたる可能性があります。
特定班は原則として、インターネット上で誰でもアクセス可能な情報をもとに特定をおこないます。
そのため、特定班の行為自体が、ただちに違法性を帯びているというわけではないことが多いのです。
ただし、特定した情報をインターネット上に書くことは、プライバシーの侵害となります。
また、特定した住所を利用して本人を撮影した写真や映像を許可なく公開することは、肖像権の侵害となります。
特定班が特定した情報が広まった場合などで、故意に個人の名誉や評判を傷つける行為は名誉棄損となる場合があります。
たとえば、ある問題を起こした人物の名前が非公表で報道された場合、誰がその問題を起こしたのかが拡散され当該人物の評判や名誉が傷つけられると、その内容が真実であるかどうかに関わらず、名誉毀損に問われる可能性があります。
また、特定された情報を公開し、それに対して誹謗中傷をする場合には侮辱罪等に問われる可能性があります。
特定班が得た情報を拡散したことによって損害を受けた場合、被害者は損害賠償を請求できる場合があります。
たとえば、SNS上で明るみに出ていない情報が公開されることで炎上し、経済的なダメージを負った場合、SNSに開示請求をおこなうことで、加害者の身元を突き止められる可能性があります。
その上で、加害者に対して損害賠償を請求することができるケースもあるのです。
特定班の被害を受けた場合には、損害賠償請求も含めてどのような対処ができるかを把握しておくとよいでしょう。
この章では、特定班に個人情報を特定されてしまった場合の対処法について詳しく解説します。
特定された情報がWebサイトやSNSなどのオンラインプラットフォーム上に公開されている場合、まずはそのサイトの運営会社に対して、個人情報やプライバシーに関する削除請求をおこなうことが重要です。
この方法で必ずしも運営会社が削除に応じてくれるとは限りませんが、まずは問い合わせしてみましょう。
ただし、削除請求をして、運営会社が情報を削除した場合、その後の損害賠償請求等の責任追及の際に支障が生じる場合があります。
ご自身で、URL付きのスクリーンショット画像を撮影するなどして、証拠をきちんと保存しておきましょう。
アカウント自体が停止されたような場合は、投稿者の特定ができなくなる場合もあるため、心配であれば弁護士等の専門家へ相談することをおすすめします。
運営会社が削除に応じてくれなかった場合は、発信者情報開示請求をおこないましょう。
発信者情報開示請求とは、インターネット上で違法な問題が起こった場合に、発信者を特定する目的でプロバイダに対し、情報の開示を請求する手続きです。
また、もしも特定班の行為によって損害を受けた場合には、損害賠償を請求することが可能な場合があります。
特定班に特定されてトラブルに発展した場合、法的な問題を適切に対処するためには弁護士に相談することが重要です。
弁護士は、個人の権利を守るためのアドバイスや手続をおこなってくれます。
特に、開示請求などの法的な手続きや法律の知識が必要な場合、弁護士のサポートを受けることは重要です。
この章では、特定班による被害に遭わないための予防策について詳しく解説します。
ネットには個人情報を掲載しないように注意しましょう。
個人情報は特定班による攻撃の手がかりになります。
たとえば、SNS上で自分のフルネーム、住所、電話番号、生年月日等の個人情報を公開してしまうと、特定班によって個人が特定されるリスクが高まります。
X(旧Twitter)でAという匿名のアカウントを使用している方が、FacebookでBという個人情報を公開しているアカウントを使用している場合、AとBに投稿された写真の同一性などを元に、AがBであると特定されてしまうケースが散見されます。
不特定多数の人がアクセスできる場所では、個人情報の公開を控えるよう心がけましょう。
特定班は、写真や動画の中に写り込んだ情報から特定をおこなうことがあります。
写真や動画を投稿する際には、周囲の背景に特定の場所や個人がわかるような手がかりが含まれていないか注意しましょう。
たとえば、以下のようなものが映り込んでいないか確認しておくとよいでしょう。
基本的には、普段から活動している範囲内での撮影の際に注意しておくことをおすすめします。
旅行などで一時的に普段とは違う場所を訪れた場合などは、場所の特定についてそれほど気を使わなくてもよいことも多いでしょう。
写真を加工する際には、顔や個人情報を特定しにくいようにスタンプや黒塗りなどを使用するほうが安心です。
モザイク加工だけでは、一部の特徴が残ってしまうことがあるため、より確実に個人特定を避けるための対策としてスタンプや黒塗りなどで加工することをおすすめします。
特定の地域や場所を明示する投稿は、特定班に対象を絞られる可能性があります。
会話の中の何気ない一言で特定されてしまう可能性があります。
具体的には、以下のような投稿をしないよう注意しましょう。
「この情報だけで特定されることはないだろう」と思うようなものでも、過去に発信した情報も併せて分析することで特定できることもあります。
些細なことでも、ヒントになるような情報は投稿しないようにしましょう。
子どもの写真を投稿する際は、特に注意が必要です。
子どもの顔や個人情報は、特定班によって悪用されるリスクが高まります。
子どもの安全やプライバシーを考慮して、子どもの写真を投稿する際には細心の注意を払いましょう。
SNSに限らず、インターネットを利用するにあたって、いま一度ネットリテラシーについて学んでおくことをおすすめします。
ネットリテラシーを高めることで、不確かな情報の判断やプライバシー保護の意識が向上します。
具体的には、以下の点について注意するようにしましょう。
こうしたリテラシーをいま一度理解することで、インターネット上で起こりうるトラブルを最小限に抑えることができます。
自己の情報の公開には慎重さが求められる一方で、特定班の行為を防止するために、ネットリテラシーの向上や個人情報の適切な管理が大切です。
特定班が特定する心理は、一般的には好奇心や興味から始まることが多いとされています。
最近では、「YouTuberのヒカキンが20億円の豪邸に引越した」という動画を上げた数十分後に、その住所が特定されてインターネット上で晒されたことが問題になっていました。
これは、単純な好奇心や興味に突き動かされた結果だと考えられます。
また、特定班が特定する心理には、ある種の正義感に起因するとも考えられます。
たとえば、何らかの問題や犯罪行為がおこなわれたものの、その問題を起こした本人の情報が報道されなかった場合、「どのような人がこの問題を起こしたのか」と、世間は興味を持つことでしょう。
特定班はそうした世間の興味に反応するように、個人を特定して情報を晒します。
その結果、法的な裁きを受けなかった人物が社会的制裁を受ける、といったことが起こり得ます。
しかし、その一方ではこの行為について「司法が裁けない事に制裁を与えた」と賞賛の声が上がることもあります。
つまり、このようなケースではある種の正義感によって、特定班の存在が成立しているともいえます。
特定班による特定は、一部の個人や団体にとっては悪意をもっておこなわれることもあります。
たとえば、特定の企業のイメージを損なうような情報を流すことで、競合他社にとって利益が得られる場合があります。
このように、特定班が特定をする動機や心理は人によってさまざまです。
自己の情報の公開を慎重におこなう一方で、自分自身がそうした情報を発信しないよう注意する必要もあります。
たとえば、働いていたお店に有名人が訪れたり、たまたま近所ですれ違ったり、たまたま自分だけが情報を得られたといった場合があるかもしれません。
そうした情報は、つい誰かに教えたくなる場合があるかもしれません。
しかし、そうした情報をインターネット上に晒すことも、特定班の行動と原理は同じです。
特定されることにも注意が必要ですが、自分の情報によって他人が特定されることもあるという点についても、十分に理解しておく必要があるでしょう。
以上、本記事では特定班とは何か、また被害に遭わない方法などについて詳しく解説してきました。
特定班が流した情報による損害が大きい場合には、損害賠償請求が可能な場合もあります。
もしも情報が特定されて困っているようであれば、弁護士に一度相談してみてはいかがでしょうか。
また、正しい知識をもってSNSやインターネットを利用すれば、特定班に情報を特定される可能性を低くすることは可能です。
ぜひ、正しい知識をもってインターネットを利用し、特定班からご自身の身を守れるようにしましょう。
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