「ネット誹謗中傷」が得意な弁護士に相談して悩みを解決!
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SNSやインターネット掲示板などで誹謗中傷を受けたら、書き込んだ相手に対して侮辱罪で刑事告訴したり、損害賠償請求したりできる可能性があります。
ネット上の誹謗中傷は匿名で書き込まれることが多く、加害者に対して責任を追及するためには、まず加害者を特定するために情報収集する必要があります。
なお、2022年6月には刑法が改正され、侮辱罪が厳罰化されました。
もはやネット上の書き込みは、いたずらでは済まされません。
本記事では、以下について解説します。
- 侮辱罪にあたる言葉や行為
- 侮辱罪で訴えるにはどのような証拠が必要か
- 侮辱した加害者への対処法・訴える方法と流れ
- 侮辱罪の慰謝料相場
- 侮辱罪と名誉毀損罪の違い
本記事を読むことで、ネット上で侮辱を受けたとき、加害者に対して責任追及するまでの流れや証拠の収集方法などがわかります。
ネット上の誹謗中傷に対して侮辱罪で訴えたい方へ
ネット上の誹謗中傷で、侮辱罪として訴訟を考えている場合は、まず弁護士に相談することをおすすめします。なぜなら、弁護士に相談・依頼することで、法的な手続きや証拠集めがスムーズにできるからです。
弁護士に相談することで、以下のようなメリットが得られます。
- 証拠を集める方法に関してアドバイスがもらえる
- 侮辱罪が成立するかどうかがわかる
- 依頼すれば、開示請求や裁判などの手続きを全て一任できる
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侮辱罪とは?
侮辱罪とは、公然と人を侮辱した場合に成立する犯罪です。
なお、侮辱罪によく似た犯罪として名誉毀損罪などもあります。
以下では、侮辱罪の成立要件や慰謝料相場などについて解説します。
侮辱罪の刑罰
侮辱罪の法定刑は「1年以下の懲役もしくは禁錮、もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料」です(刑法第231条)。
なお、拘留とは「1日以上30日未満の刑事施設への拘置」を指し(刑法16条)、科料とは「1,000円以上1万円以下の罰金」を指します(刑法17条)。
侮辱罪は厳罰化された
これまで侮辱罪の罰則は「拘留または科料」のみでした。
しかし、2022年7月から侮辱罪が厳罰化されたことで、「1年以下の懲役もしくは禁錮、もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料」へと変更されました。
さらに、公訴時効も「1年」から「3年」に変更されています。
侮辱罪の成立要件
侮辱罪の成立要件は、「公然と人を侮辱すること」です。
具体的な事実を示す必要はなく、「バカ」「アホ」といった暴言なども対象になります。
侮辱の対象は自然人だけでなく法人・会社も含みますが、亡くなった方に対しては適用されません。
特に近年深刻化しているのが、SNS上での誹謗中傷です。
2020年5月には、テレビ番組のリアリティーショーに出演していた女性がSNSで誹謗中傷を受けて自死した事件が大きく報道されました。
酷い誹謗中傷を繰り返した投稿者が侮辱罪で立件されたものの、科料9,000円という軽微な刑罰だったことで批判の声があがり、厳罰化が進められるきっかけとなりました。
侮辱罪で訴えるにはどのような証拠が必要か
誹謗中傷の加害者を侮辱罪で訴えるには、公然と侮辱されたことがわかる証拠が必要です。
ネット上で誹謗中傷を受けたら、書き込みが消される前にスクリーンショットを撮ったりして証拠を保存しましょう。
書き込みのあったサイトのURLが全て確認できる状態であれば、PDFやプリントアウトしたものでも問題ありません。
URLを元にプロバイダやサイトの管理者などに発信者情報開示請求をして加害者を特定できれば、刑事告訴や損害賠償請求ができます。
現在のようにネットが普及する前は、侮辱行為の証拠を入手することは困難でした。
しかし、現在ではさまざまな方法で証拠を入手できます。
悪意のある書き込みは、ときに人命にかかわります。
「匿名だからなにを言ってもよい」「すぐに削除したから大丈夫」では済まない問題なのです。
侮辱罪の時効
2022年6月に刑法が改正され、侮辱罪の時効は以下のように定められています。
侮辱罪は「親告罪」であるため、被害者が告訴しなければ立件できません。
告訴とは、捜査機関に犯罪があった事実を申告し、犯人の処罰を求めることです。
ネットの誹謗中傷を侮辱罪で裁くためには、加害者を特定してから6ヵ月以内に警察へ告訴状を提出し、さらに書き込みがあったときから3年以内に事件として起訴されなければなりません。
侮辱罪の慰謝料相場
加害者に対して民事訴訟で慰謝料請求する際の相場は10万円程度で、決して十分とはいえません。
名誉毀損やプライバシー侵害なども加わると、10万円~30万円程度になることもあります。
また、事案の内容・被害者の年齢・書き込みによる影響の大きさなどが考慮されて慰謝料が増額されるケースもあります。
ほかにも、発信者情報開示請求や訴訟提起のためにかかった費用が全額認められた事例などもあります。
侮辱罪と名誉毀損罪の違い
侮辱罪によく似た犯罪として、名誉毀損罪があります。
どちらも親告罪で、被害者が告訴をしない限り立件されません。
侮辱罪と名誉毀損罪の成立要件は似ていますが、以下のような点で異なります。
<侮辱罪と名誉毀損罪の違い>
- 侮辱罪は「事実の摘示がない誹謗中傷」で、名誉毀損罪は「事実の摘示のある誹謗中傷」
- 侮辱罪は死者に対しては認められないが、名誉毀損罪では認められる
侮辱罪の要件(刑法231条)
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名誉毀損罪の要件(刑法第230条1項)
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- 公然と
- 事実を摘示し
- 人の名誉を傷つける行為をすること
- 違法性阻却事由がないこと
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「事実の摘示がない」とは、バカやブスなどと誹謗中傷することです。
一方、「事実の摘示がある」とは、「〇〇は課長と不倫している」「〇〇は家で大麻を栽培している」などと具体的な内容を示して誹謗中傷することです。
誹謗中傷の内容が真実であるかどうかは問いません。
<違法性阻却事由とは>
名誉毀損罪については、以下の要件が当てはまる場合は犯罪として成り立たなくなります。
つまり、人の名誉を毀損するような行為でも、
- 多くの人の利害にかかわる事実であり、
- 行為者は公共の利益を守るためだけにおこなっており、
- 摘示された事実が真実もしくは信じるに値するものである
という場合は名誉毀損罪は成り立ちません。
たとえば、医者の外科手術やボクシングの試合などのように、本来は「傷害」や「暴行」の要件に当てはまる行為でも、違法性を覆す例外的な事情があれば罰せられることはありません。
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侮辱罪にあたる言葉の具体例・事例
侮辱か名誉毀損かを判断する際の基準になるのは「事実の摘示」です。
「AとBが不倫している」などは事実の摘示にあたるため名誉毀損罪になり、「バカ」「ブス」「ハゲ」などの暴言は侮辱罪になります。
ここでは、侮辱罪にあたるケース・あたらないケースのほか、名誉毀損罪にあたるケース・あたらないケースなども解説します。
侮辱罪が認められた事例
SNSやインターネット掲示板などの誰もが見られる場所で、公然と被害者が特定できる状態で誹謗中傷をおこなって侮辱罪が成立した事例としては、以下があります。
引用元: 侮辱罪の事例集|法務省
侮辱罪が認められない事例
一方、以下のようなケースでは侮辱罪として認められない可能性があります。
- メッセージアプリ上で、個人的に誹謗中傷や名誉を傷つけるようなメッセージを相手に送った
→公然とおこなわれたものではないため、侮辱罪として認められない
- インターネット掲示板で匿名の投稿者同士で「バカ」と罵り合った
→相手の社会的評価や外部的名誉を害するものではないため、侮辱罪として認められない
名誉毀損罪が認められた事例
「ラーメン店の経営会社Aはカルト集団である」という虚偽の記事をインターネット上に掲載した男性について、名誉毀損罪が認められたという事例があります。
該当の記事については、被告人の男性が確実な資料や根拠に基づいて調査しておらず、真実に間違いないと確信したうえで書き込まれたものではないとして、名誉毀損罪の成立が認められました。
被告人:インターネットの個人利用者X
主文:本件上告を棄却する(原判決が認定した名誉毀損罪を支持)
判決の理由:
インターネットの個人利用者による書き込みでも、確実な資料や根拠に基づいて事実であると誤信して発信したのではない限り、名誉毀損罪は成立するため。
事例の内容:
インターネットの個人利用者であるXが、自作サイト内で、特定のフランチャイズラーメン店経営会社についてカルト集団であるという虚偽の記事を掲載したことにより、名誉毀損罪で起訴された。
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名誉毀損罪が認められない事例
自社が発行する誌上で、 競合他誌による恐喝的な取材方法について日頃から繰り返し批判記事を連載していた記者が名誉毀損罪に問われたものの、成立しなかったという事例です。
被告人:「夕刊和歌山時事」の発行者X
主文:名誉毀損罪の成立を認めた原判決および第一審の判決を棄却し、和歌山地方裁判所に差し戻す
判決の理由:
行為者であるXがその事実を真実であると誤信し、誤信したことについて確実な資料・根拠に照らし相当の理由があるときは、名誉毀損罪は成立しないため。
事例の内容:
Xは、日頃からゴシップ的かつ攻撃的な記事を掲載する「和歌山特だね新聞」の取材方法を批判しており、自らが発行する「夕刊和歌山時事」にて「和歌山特だね新聞」を批判する内容の記事を7回にわたり連載したことにより、名誉毀損罪で起訴された。
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侮辱罪で加害者を訴える方法・流れ
加害者に対して、侮辱罪で立件して刑事罰に問うことは、たとえ罰則内容が軽微でも重要な意味をもちます。
なぜなら、犯罪という自覚なく誹謗中傷をしている加害者に対して、侮辱罪という犯罪が成立するということを理解させられるからです。
ネット上に匿名で誹謗中傷を書き込まれた場合でも、加害者を特定して責任を追及できます。
以下では、ネット上で誹謗中傷した加害者を特定し、侮辱罪で訴えて責任追及するまでの流れを解説します。
侮辱された証拠を集める
ネット上の誹謗中傷の場合は、早期の証拠保存が大切です。
書き込みを消される前に対応しましょう。
その際は、以下のような方法でページURLやアカウントIDなどを保存しましょう。
- スクリーンショットを撮る
- PDFで保存する
- ページをプリントアウトする など
発信者情報開示請求で加害者を特定する
次に、サイトの運営者に対して、書き込みをした加害者の情報提供を請求します。
このときには「発信者情報開示請求書」という書式を利用します。
- 書き込みのあったサイトの運営者に対して発信者情報開示請求をおこなう
- サイトの運営者からIPアドレスやタイムスタンプなどを入手する
- 開示された情報をもとに、加害者が契約しているプロバイダを特定する
- プロバイダに対して個人情報の開示を請求する
なお、2022年10月に改正プロバイダ責任制限法が施行されたことで、従来2段階の裁判手続きが必要だった発信者情報開示請求について、1回の非訟手続きで済むようになりました。
ログイン時情報の発信者情報開示請求は、一定の条件はあるものの、明文で認められるようになりました。
発信者情報開示請求は自力でもできますが、弁護士に依頼すれば裁判所を通じてスムーズかつ確実に手続きを進めてくれるというメリットがあります。
告訴状を作成する
加害者を特定できたら、告訴の時効である6ヵ月以内に告訴状を作成しましょう。
告訴は口頭でもできますが(刑事訴訟法第241条)、書面でおこなうのが一般的です。
告訴状には、以下のような事項を記載し、証拠類を添えて提出します。
- 告訴人
- 告訴事実の表示
- 告訴に至った経緯
- 処罰の意思表示 など
警察署に告訴状を提出する
告訴状の提出先は警察署で、裁判所ではありません。
どこの警察署に提出するかは決まっていませんが、通常は犯罪がおこなわれた場所・加害者の住所地・被害者の住所地のいずれかを管轄する警察署に提出します。
なお、警察署に告訴状を提出しても、その場ですぐに受理してくれるとは限りません。
弁護士に同行してもらい、事情を説明してもらえば受理してもらいやすくなるでしょう。
ただし、証拠隠滅などの恐れがない限り警察の動きは鈍く、捜査開始まで数ヵ月から1年以上待たされることも珍しくありません。
また、たとえ捜査開始して逮捕できたとしても、犯行態様によっては不起訴処分や起訴猶予になることもあります。
侮辱した加害者に対する刑事告訴以外の対処法
加害者に対して責任追及する方法は、刑事告訴以外にもあります。
ここでは、刑事告訴以外での解決策について解説します。
損害賠償請求・慰謝料請求
民事訴訟を起こし、誹謗中傷による被害を金銭に換算して損害賠償(慰謝料)という形で請求できます。
侮辱による損害賠償請求が裁判で認められる場合、基本的に個人間のトラブルでは金額は数万円程度で、決して高額ではありません。
しかし、発信者情報開示請求や訴訟にかかった手続き費用などは、損害賠償請求の範囲として全額認められることがあります。
書き込みの削除請求
書き込まれた内容を削除したい場合は、以下のような流れでサイトの運営者に削除請求できます。
- 所定の書式「侵害情報の通知書兼送信防止措置依頼書」を作成し、サイトの運営者に提出する
- サイトの運営者が、加害者に対して書き込み削除に関する意見照会をおこなう
- 加害者が同意した場合、書き込みが削除される
ただし、削除請求してから回答をもらうまでは1ヵ月程度かかるうえ、削除請求には強制力がありません。
手っ取り早く強制力を用いて削除したい場合は、裁判所を通じて削除の仮処分命令を申し立てるのが有効です。
謝罪請求・謝罪広告請求
書き込みの削除だけでは被害が収まらない場合は、加害者に謝罪請求することもできます。
(名誉毀損における原状回復)
第七百二十三条 他人の名誉を毀き損した者に対しては、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができる。
これは、裁判所に謝罪(広告)と損害賠償を求める訴訟を提起し、名誉の回復を求めるという方法です。
引用元:民法第723条
さいごに
実生活はもちろん、ネット上でも悪質な侮辱は重大な権利侵害にあたります。
軽い気持ちやストレス解消で書き込まれた内容が、人命を奪う事件も起きています。
誹謗中傷に対し、書き込みの削除だけではなく加害者の責任を追及する場合は、以下のような方法があります。
- 侮辱罪や名誉毀損罪で刑事告訴する
- 民事訴訟で損害賠償や謝罪などを請求する
なお、上記のいずれについても、加害者を特定するために開示請求の手続きが必要です。
これらの手続きは弁護士に一任でき、弁護士に依頼すれば以下のようなメリットが望めます。
- 加害者が任意の請求に応じない場合、手続きに強制力を持たせることができる
- 加害者の態度や状況に合わせて臨機応変に手段を変更できる
- 加害者に対して「本気で責任追及する」という意思表示ができ、新たな被害の抑止が望める
- 加害者とのやりとりを一任でき、精神的な負担が軽減する
ネット上で誹謗中傷を受けて悩んでいる方は、一人で悩まずに弁護士に相談しましょう。
参考文献
・清水陽平、神田知宏、中澤佑一
「改訂版 ケース・スタディ ネット権利侵害対応の実務ー発信者情報開示請求と削除請求ー」
新日本法規出版株式会社
・清水陽平「サイト別ネット中傷・炎上対応マニュアル(第3版)」株式会社弘文堂