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SNSなどのネット上で誹謗中傷にあたるような内容を書かれると傷つくものです。
怒りや悲しみ、恐怖などから発信者に対する処罰感情が生まれることもあるでしょう。
刑事告訴を考えるものの、「誹謗中傷は犯罪になるのか?」「刑事告訴できるのか?」といった疑問が浮かび、行動に移せない方もいるかもしれません。
ネット上で誹謗中傷され、その内容が刑事罰に該当する場合、刑事告訴ができます。
どのような犯罪が成立するかは誹謗中傷の内容によりますが、発信者を刑事罰に問える可能性があるのです。
本記事では、ネット上で誹謗中傷をされた場合に成立する可能性がある犯罪を紹介するほか、刑事告訴の大まかな流れや注意点についても解説します。
ネットで誹謗中傷をされて、刑事告訴を考えている方は、実際に行動するためにもぜひ参考にしてください。
ネット上で他人を誹謗中傷することが犯罪行為となる場合があり、誹謗中傷が刑事罰に該当する場合、ターゲットとされた被害者の方は刑事告訴することができます。
どのような罪が成立するかは個別のケースによりますが、該当する可能性のある主な犯罪は以下のとおりです。
それぞれの概要や成立要件については、次項で解説します。
ネット上で誹謗中傷された場合に該当する主な犯罪として、「名誉毀損罪」「侮辱罪」「信用毀損罪」「脅迫罪」が挙げられます。
ここでは、それぞれの概要や成立要件などについて解説します。
名誉毀損罪とは、不特定多数の前で根拠となり得る具体的な事柄を示したうえで、相手の社会的評価をおとしめるような言動をすることを指します。
言動の内容が真実であっても、名誉毀損は成立し得ます。
ただし、内容が真実の場合、名誉毀損における違法性が阻却される場合があります。
その成立要件は以下のとおりです。
また、誹謗中傷のターゲットとなっている方を特定可能な内容であることも重要です。
ネット上においては、本名による名指しである必要はありません。
ハンドルネームや当て字を使った状態で、誰を指すのか容易に察しがつくのであれば、名誉毀損罪が成立し得ます。
より具体的には、以下のような書き込みが該当するといえるでしょう。
名誉毀損が成立し、有罪判決が下れば、3年以下の懲役か禁錮、または50万円以下の罰金を科せられます。
(名誉毀損)第二百三十条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
引用元:刑法 | e-Gov法令検索
不特定多数の前で、根拠となり得る具体的な事柄を示さずに、相手をおとしめるような言動をすれば侮辱罪が成立します。
名誉毀損罪とよく似ていますが、大きな違いは、発言の根拠となる具体的な事柄の提示の有無です。
以下の要件を満たせば、侮辱罪は成立します。
具体的には、以下のような書き込みが該当します。
侮辱罪が成立し、有罪とされれば、1年以下の懲役もしくは禁錮、30万円以下の罰金または勾留もしくは科料が科されます。
以前は、「勾留または科料」のみでしたが、令和4年7月7日施行の改正刑法により、法定刑が引き上げられました。
この背景には、SNSをはじめとするネット上での誹謗中傷が社会問題化したことがあります。
侮辱罪と名誉毀損罪との違いは、事実の摘示の有無ですが、どちらにしても誹謗中傷を受けた方の心は大きく傷つくものです。
刑罰に大きな差を儲けるのは相当ではないと考えられるようになり、改正に至りました。
(侮辱)第二百三十一条 事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、一年以下の懲役若しくは禁錮若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
引用元:刑法 | e-Gov法令検索
信用毀損罪とは、次の要件を満たすことで成立する犯罪です。
「虚偽の風説を流布」するとは、いわゆるデマを流すことをいいます。
また、「偽計を用いる」とはだましたり、誘惑したりして、相手が真実に基づいて正しい判断を下せない状態にすることです。
つまり、わざとインターネット上でうその評判を流して、相手の信用を傷つけた場合に成立します。
より具体的には、次のような書き込みが該当します。
ただし、内容が真実である場合は成立しません。
また、発信者がその内容を真実であると信じており、故意がない場合も罪には問えないでしょう。
さらに、信用毀損罪は親告罪ではないため、刑事告訴をしなくても事件化する可能性があります。
(信用毀損及び業務妨害)第二百三十三条 虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
引用元:刑法 | e-Gov法令検索
相手や相手の親族などの生命や身体に対して危害を加えることを示唆すれば、脅迫罪が成立します。
身体など物理的なものに限らず、相手の名誉や自由、財産などへの脅しも対象です。
脅迫罪が成立するために必要な要件は次のとおりです。
対象者は被害者本人、またはその親族に限定されることに注意しましょう。
恋人や親友など親族ではない他人については成立しません。
また、「害悪の告知」とは、他人を畏怖させることを指します。
客観的に恐怖を感じると判断できる内容である場合が該当します。
ネット上で脅迫罪が成立する例としては、以下のようなものが挙げられます。
脅迫罪については、公然性は必要ありません。
そのため、SNSでの投稿や掲示板への書き込みに限らず、DMやメールによって脅された場合も該当します。
(脅迫)第二百二十二条 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
引用元:刑法 | e-Gov法令検索
では、実際にネット上で誹謗中傷をしてきた相手のことを刑事告訴して罪に問いたい場合は、どうすればよいのでしょうか。
ここでは、刑事告訴の進め方について解説します。
刑事告訴が受理されるには、犯罪行為があったことを立証する必要があります。
そのためには、十分な証拠を確保しておかねばなりません。
具体的には、以下の内容がわかるようなものを手元に残しておきましょう。
これらの情報は、該当ページをプリントアウトするか、スクリーンショットをして残しておきましょう。
スクリーンショットは、スマートフォンで撮影してもURLが表示されないため、パソコンでおこなうほうがよいでしょう。
相手が削除してしまう可能性もあるため、証拠はできる限り早く確保しておくことをおすすめします。
そもそも、誹謗中傷をした相手が誰なのかを特定しておく必要があります。
特定できなくても告訴自体はできますが、原則として、被告訴人はあらかじめ特定されている必要があります。
したがって、自分で特定しておくのが望ましいところです。
サイト運営者に発信者情報の開示を求めることも考えられますが、基本的には応じることはありません。
そのため、ほとんどの場合で、以下の申し立てを裁判所に対してすることになります。
両者の大きな違いは、その段取りです。
発信者を特定するには、まずはサイト管理者にIPアドレスを開示してもらい、その後プロバイダに対してそのIPアドレスの所有者を開示してもらうという2段階の手続きを踏まねばなりません。
旧来の発信者情報開示請求では、順を追って、まずサイト管理者にIPアドレス開示仮処分の申立をおこない、その後、経由プロバイダに訴訟提起をおこない発信者の情報を特定する必要がありました。
そのため、時間と手間が多くかかる手続きでした。
一方、発信者情報開示命令は、訴訟手続ではありません。
令和4年10月1日施行の改正プロバイダ責任制限法によって新たに設けられた手続きです。
従来のようにサイト管理者とプロバイダへそれぞれ申し立てが必要となることは変わりありませんが、訴訟ではなく非訟手続きであり、裁判所で併合審理されるため、2回の審理を経る必要なく、発信者情報の開示を得ることが可能です。
簡便かつ迅速に進められ、申立人にとってメリットの大きな手続きといえるでしょう。
旧来の制度は現在も存続しており、どちらの手続きを選択するのがよいかはケースによって異なるため、弁護士に相談して決めるのが望ましいといえるでしょう。
なお、具体的にどんな手続きをするのか知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
書き込みをした人を特定できれば、告訴状を作成し、警察署に提出します。
告訴状の届出先は、基本的に、犯罪発生地である被害者の住所を管轄する警察署若しくはまたは加害者の住所地を管轄する警察署へ提出することになります。
それ以外の警察署に提出しても、上記警察署へ提出するように促される可能性が高いでしょう。
また、告訴状を提出したからといって、必ずしも警察に受理してもらえるとは限りません。
適切な証拠をもって、犯罪が成立することを立証しなければ捜査してもらえないことも多いのです。
受理される可能性を高めるためにも、弁護士に相談や依頼をしたほうがよいでしょう。
ネット上で誹謗中傷を受けたら、警察や弁護士に相談できます。
それぞれに相談できることや、相談の際の注意点について解説します。
ネットで誹謗中傷することは名誉毀損罪や侮辱罪などの犯罪です。
特に発信者の処罰を望む場合は警察に相談しましょう。
相談の際には、いつ、誰に、どのような内容の誹謗中傷を受けたのかがわかる証拠を持参することが大切です。
該当する投稿のプリントアウトやスクリーンショットを用意しておきましょう。
弁護士であれば、刑事告訴はもちろん、発信者情報の開示請求による投稿者の特定、相手方への損害賠償請求など、より幅広い内容について相談・対応してもらえます。
また、弁護士に相談や対応を依頼することで告訴状受理の可能性が高まり、加害者を罪に問える可能性も高まるでしょう。
また、ネットでの誹謗中傷について相談する弁護士を探すならベンナビITがおすすめです。
ネットでのトラブルに強い弁護士に特化したサイトで、誹謗中傷トラブルの解決実績が豊富な弁護士も多数掲載されています。
地域からも絞り込めるので、自分に合った弁護士を探しやすいでしょう。
刑事告訴をしても、必ずしも相手を罰せられるとは限りません。
ネット上の誹謗中傷について刑事告訴をする場合には、以下に挙げた点について注意しましょう。
警察に告訴状を提出しても、必ずしも受理されて捜査が開始されるわけではありません。
証拠が不足していたり、立証が不十分であったりすれば、犯罪が成立すると認めてもらえないでしょう。
告訴したからといって、事件化するとは限らないのです。
告訴するには期限があります。
名誉毀損や侮辱の場合は、犯人を知ってから6ヵ月です。
6ヵ月を経過すると時効が成立し、告訴状を提出しても受理してもらえなくなるため注意しましょう。
告訴状が受理されたとしても、加害者が起訴され、刑法で定められたとおりの処罰を受けるとは限りません。
検察が証拠不十分などと判断すれば不起訴となりますし、謝罪するなどして情状酌量の余地があるなどすれば、正式裁判ではなく、略式裁判(罰金刑)で終わる可能性も高いです。
特に、インターネットの誹謗中傷に関しては、正式裁判にまで至るケースは極めて稀です。
ご自身が望んだような結果になるとは限らないことも理解しておきましょう。
ネット上で誹謗中傷を受け、刑事告訴を検討しているなら、自分でおこなうより弁護士に相談することをおすすめします。
自分で告訴状を提出しても、事実を正確に伝えることや、証拠を十分に揃えることができず、警察に受理してもらえない可能性が高いからです。
また、告訴をするより先に発信者を特定する必要もあります(ただし、経由プロバイダまで特定すれば、警察がIPアドレスを差し押さえて、投稿者を特定してくれる場合もあります)。
発信者情報の開示手続きは複雑であるうえ、相手の特定に必要な情報を請求先が保存している期限は3ヵ月程度と長くないため、迅速かつ正確に手続きを進めることが大切です。
弁護士に依頼することにより、告訴状の作成や提出、発信者情報の開示請求を委任することが可能となります。
告訴状が受理され、捜査が開始される可能性が高まるでしょう。
ネットでの誹謗中傷に悩んだら、早めにネットトラブルに強い弁護士に相談することをおすすめします。
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