音声生成AIとは、文章などの読み上げをしてくれる人工的な声(音声)のことを指します。
この音声生成AIを利用する際にも、著作権が問題になるケースがあるので注意が必要です。
本記事では、音声生成AIの利用を検討している方に向けて、以下の内容について説明します。
本記事を参考に、法的リスクを減らして音声生成AIを安全に活用できるようになりましょう。
ここでは、音声と著作権法の基本的な関係性について説明します。
著作権法上、著作物は「思想または感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術、音楽の範囲に属するもの」と定義されています(著作権法第2条第1項第1号)。
日常的な会話などは、「思想または感情を創作的に表現したもの」とはいえないでしょう。
そのため、一般的に音声には著作権は発生しないと考えられています。
アニメや映画などのセリフの場合は、声優に著作隣接権が生じます。
著作隣接権とは簡単にいうと、声優などの著作物の実演者を保護するための権利の総称です。
声優の音声は収録権・録画権(著作権法第91条)などで守られており、収録・録画の際は許可を得る必要があります。
ここでは、音声生成AIと著作権に関するルールについて説明します。
大量の音声を生成AIに学習させる場合は、基本的には著作権侵害にならないとされています。
前述したとおり、声優は著作隣接権で保護されており、本来であればその音声を使う場合は許可を得る必要があります。
しかし、音声の利用が著作権法第30条の4に該当する場合は、声優に許可を得ることなく利用できることが認められています。
「大量の音声」を生成AIに「学習」させる目的で使用する場合は、著作権法第30条の4に該当する可能性が高く、著作権違反になるケースは少ないといえるでしょう。
音声生成AIで文章を読み上げさせるだけの場合は、基本的には著作権違反にはならないとされています。
たとえば、生成AI利用者が自分で用意した文章を音声生成AIに読み上げさせたとします。
この場合は、音声データの元となった著作物を読み上げさせたわけではないので、著作権や著作隣接権を侵害しないものと考えられます。
生成AIにより著作権や著作隣接権を侵害する場合でも、事前に本人から許諾を得ていれば問題ありません。
著作権者や実演家には許諾権が認められており、第三者に対して著作物などの利用を認めることができます。
事前に本人に連絡を取り、許諾を得られれば、その許諾の範囲内で問題なく著作物を使えるでしょう(著作権法第63条第2項、第103条)。
ここでは、音声生成AIが著作権法違反に該当する可能性があるケースについて具体的に解説します。
著作権法第30条の4では、著作物を情報解析のために利用する場合は許可を取る必要がないとしています。
この情報解析とは、一般的に大量の情報(音声データなど)から言語・音声・影像などを抽出し、比較、分類、解析する行為を指すとされています(著作権法第30条の4)。
したがって、特定の音声のみを生成AIに学習させる場合は、この情報解析の要件を満たさず、著作権法違反になる可能性が高いと考えられます。
音声生成AIに著作物を読み上げさせる場合は、著作権者の許諾を得ている必要があります。
著作権者の許諾を得ずに読み上げさせる行為は、著作権法違反になる可能性が高いでしょう。
なお、声優の音声で著作物を読み上げさせた場合は、著作隣接権を侵害する可能性があります。
音声生成AIを利用するときには、パブリシティ権との関係にも注意が必要です。
音声がパブリシティ権に含まれるかどうかは、現時点では明確にはなっていません。
もっとも音声にもパブリシティ権が認められるというのが一般的な見解となっています。
仮に音声にもパブリシティ権が認められた場合、以下のようなケースで音声生成AIの利用が問題になりえます。
上記のような利用を検討している、またはすでに利用している場合は、本人に許諾をとるのが望ましいでしょう。
音声生成AIを使うときには、著作権だけでなく著作隣接権が問題になる可能性もあります。
著作権法などを適切に理解していないと、思わぬ法律トラブルに巻き込まれる可能性があるので注意が必要です。
特にビジネスなどで音声生成AIの利用を検討しているのなら、事前にIT実務に詳しい弁護士へ相談することをおすすめします。
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