生成AIを使って作曲した場合、著作権との関係が気になる方も少なくないでしょう。
そこで本記事では、生成AIでの作曲活動をしている方や、検討している方に向けて以下の内容を説明します。
本記事を参考に、安心して生成AIを使った作曲活動をおこなえるようになりましょう。
ここでは、生成AIで作曲した制作物と著作権法との関係性について説明します。
著作権法で保護されている著作物とは「思想または感情を創作的に表現したものであって、文芸・学術・美術・音楽の範囲に属するもの」と定義されています(著作権法第2条第1項第1号)。
完全に生成AIだけで作曲した場合、利用者の思想や感情を創作的に表現したものとはいえません。
そのため、著作物には該当せず、著作権は認められないと考えられます。
利用者が道具として生成AIを使用した場合は、著作権が認められる可能性があります。
道具として使用していたと認められるためには、通常、以下の2つを満たす必要があります。
上記の2つを満たしている場合は、著作物に該当し、著作権が認められることがあります。
ここでは、生成AIで作成した楽曲が他人の著作権を侵害する可能性があるケースについて説明します。
生成AIの学習段階では、著作権法第30条の4の要件を満たすかどうかがポイントになります。
通常、他人の著作物を利用する場合、その著作権者から事前に許諾を得ている必要があります。
しかし、以下にある要件を満たす場合は、著作権者の許諾がなくても著作物をAIに学習させることができます。
たとえば、ある特定のミュージシャンの楽曲だけを本人の許諾なく学習させる場合は、上記の要件を満たさず、著作権を侵害していると判断される可能性が高いでしょう。
生成AIの利用段階では、生成した楽曲が他人の著作権を侵害するかどうかがポイントになります。
著作権侵害の主な要件は、以下のとおりです。
要するに、生成AIで作成された楽曲が、既存の楽曲を参考にしており、本質的な特徴が似ていると判断される場合には、著作権を侵害している可能性が高いといえます。
著作権侵害の基準については、以下のページで詳しく解説しているため参考にしてください。
ここでは、楽曲と著作権侵害に関する重要な判例・裁判例を2つ紹介します。
ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー事件は、最高裁判所が著作権侵害の要件として依拠性が必要であると示したことで有名です。
本件は、ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョーの旋律が、「夢破れし並木道」に類似していることを理由に、著作権不存在等の確認と損害賠償の請求をした事件となっています。
しかし、最高裁は「著作物の複製とは、既存の著作物に依拠し、その内容および形式を知覚させられるものを複製と解するべき」とし、夢破れし並木道の存在を知らなかった被告らに著作権侵害は認められないとしました。
記念樹事件は下級審ではありますが、楽曲の類似性についての判断基準が示された事件です。
第1審では原告側は複製権侵害を主張しましたが、東京地方裁判所はメロディ、旋律、和音、リズム、形式などを総合的に判断した結果、同一性(類似性)があるとはいえないことを理由に、原告の請求を却下しています。
なお、控訴審では控訴人は編曲権侵害について争い、東京高等裁判所は「記念樹」と「どこまでも行こう」との間に依拠性と同一性(類似性)があり、被控訴人は許諾なく編曲したとして、編曲権侵害を認めました。
生成AIの楽曲で著作権問題が生じたら、知的財産権を得意とする弁護士に相談することをおすすめします。
知的財産権を得意とする弁護士に相談・依頼をした場合、以下のようなメリットが期待できます。
楽曲の著作権問題は非常に複雑で、自分ひとりで対応するのは難しいと考えられます。
万が一、生成AIの楽曲で法律トラブルが生じてしまったら、できる限り早く弁護士に相談するとよいでしょう。
生成AIで作曲する場合、他人の著作権を侵害してしまうリスクがあります。
そこで学習段階では著作権法第30条の4に違反しないか、利用段階ではほかの楽曲と類似性・依拠性が認められないかなどに注意する必要があります。
生成AIを使って作曲活動をする際に著作権侵害の不安があるなら、事前に弁護士に相談しておくとよいでしょう。
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