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ネット上で誹謗中傷を受けた方のなかには「相手を訴えたい」「損害賠償を請求したい」と考えている方もいるでしょう。
投稿者に法的な責任を負わせるには、プロバイダに発信者情報開示請求をするなどして相手を特定する必要があります。
しかし、発信者情報開示請求とはどのような手続きなのか、自分でできるものなのかわからない方は多いのではないでしょうか?
本記事では、プロバイダへの発信者情報開示請求の概要、認められるための要件、開示請求できる情報などを解説します。
ネット上の誹謗中傷で悩んでいる方や、誹謗中傷してきた相手を訴えたいと考えている方はぜひ参考にしてください。
発信者情報開示請求とは、SNSなどで匿名の投稿により権利が侵害された場合に、プロバイダに対して投稿者の個人情報を開示するよう求める手続きを指します。
発信者情報開示請求は、プロバイダ責任制限法で定められている制度です。
投稿者を特定できれば、相手に法的責任を問うことができるようになります。
そのため投稿相手に「損害賠償を請求したい」「裁判で訴えたい」と考えている場合は、発信者情報開示請求をおこなうか検討しましょう。
(発信者情報の開示請求)
第五条 特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者は、当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者に対し、当該特定電気通信役務提供者が保有する当該権利の侵害に係る発信者情報のうち、特定発信者情報(発信者情報であって専ら侵害関連通信に係るものとして総務省令で定めるものをいう。
以下この項及び第十五条第二項において同じ。)以外の発信者情報については第一号及び第二号のいずれにも該当するとき、特定発信者情報については次の各号のいずれにも該当するときは、それぞれその開示を請求することができる。
一 当該開示の請求に係る侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであるとき。
二 当該発信者情報が当該開示の請求をする者の損害賠償請求権の行使のために必要である場合その他当該発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとき。
三 次のイからハまでのいずれかに該当するとき。
イ 当該特定電気通信役務提供者が当該権利の侵害に係る特定発信者情報以外の発信者情報を保有していないと認めるとき。
ロ 当該特定電気通信役務提供者が保有する当該権利の侵害に係る特定発信者情報以外の発信者情報が次に掲げる発信者情報以外の発信者情報であって総務省令で定めるもののみであると認めるとき。
(1) 当該開示の請求に係る侵害情報の発信者の氏名及び住所
(2) 当該権利の侵害に係る他の開示関係役務提供者を特定するために用いることができる発信者情報 ハ 当該開示の請求をする者がこの項の規定により開示を受けた発信者情報(特定発信者情報を除く。)によっては当該開示の請求に係る侵害情報の発信者を特定することができないと認めるとき。
プロバイダに発信者情報開示請求をする前に、以下の3点を押さえておきましょう。
発信者情報開示請求は、以下の要件を全て満たさなければ認められません。
特定電気通信とは、インターネットやSNS上の投稿・電子掲示板などでの、誰もが参照可能な情報発信のことです。
開示関係役務提供者とは、開示に応じるべき人や事業者のことで、サーバー提供者・サイト運営者・インターネットサービスプロバイダなどが該当します。
発信者情報に該当する情報については、次の見出しで解説します。
発信者情報開示請求で開示できる投稿者の情報は以下のとおりです。
情報をどこまで開示してもらえるかは、請求先によって異なります。
発信者情報開示請求は、以下の2つに対しておこないます。
コンテンツプロバイダはIPアドレスや発信時間(タイムスタンプ)などの投稿に関する情報を保有しています。
一方、アクセスプロバイダは、投稿者の氏名や住所などの個人情報を保有しています。
プロバイダ責任制限法は、インターネットの普及により匿名での誹謗中傷が増えていることを背景に、2022年10月1日に改正法が施行されました。
ここからは、改正による変更点について解説します。
新設された発信者情報開示命令では、1回の裁判手続きでサイト管理者・プロバイダ向けの請求をまとめておこなうことができます。
従来の発信者情報開示請求は、コンテンツプロバイダ・アクセスプロバイダ向けの請求をそれぞれ別々におこなう必要があり、時間と手間がかかる点が課題でした。
業者やサービスによって異なりますがSNSなどのログは1~2ヵ月、インターネット接続のログは数ヵ月程度の短い期間で消えてしまうことも少なくありません。
ログが消えるまでに投稿者の特定に至らなかったケースも多くあったとされています。
発信者情報開示命令なら、投稿者特定のための手続きが1回ですむことから、投稿者をより迅速に特定することが可能です(サイト管理者、経由プロバイダへの申し立てがそれぞれ必要であることには変わりありませんが、それぞれの事件が併合審理されるため、1つの手続きで進めることができます)。
さらに一般的な訴訟手続きに比べ簡便な非訟手続とされたことで、訴状送達などでかかっていた時間が短縮されました。
その結果、従来より手続きを迅速にすすめられるようになっています。
開示請求の対象が拡大され、SNSのログイン・ログアウトの情報なども請求対象に含まれるようになりました。
従来のプロバイダ責任制限法で想定されていたのは、2ちゃんねるのようにログインなしで投稿が可能なサービスです。
しかし、ログインを必要とするSNSが普及したことで、投稿者の特定に至らないケースが増えていたのです。
SNSのなかにはログイン時のログは保存しているものの、投稿時などのログは保存していない種類が少なくありません。
一方で従来のプロバイダ責任制限法では、ログイン時のログを開示対象に含めていなかったのです。
そのためSNSの利用者が増えるに従い、IPアドレスの開示に至らず投稿者の特定に失敗するケースが多くなっていました。
こういった事情にもとづき、改正プロバイダ責任制限法では以下情報も開示対象に含めたのです。
これにより、投稿時のログを残していないSNSが利用された場合であっても、投稿者の特定が可能となりました。
発信者情報開示請求を受けたプロバイダは、投稿者に「名前や住所などを開示してもよいか」を確認する意見照会をおこないます。
改正後は、投稿者が開示に同意しなかった場合に、プロバイダはその理由も聴取することが義務付けられたのです。
その理由によって、プロバイダは適切な対応をとることができます。
ここからは、プロバイダに発信者情報開示請求をする方法を3つ紹介します。
コンテンツプロバイダ(SNSなどのサイト管理者)やアクセスプロバイダ(インターネット接続サービスプロバイダ)に任意の開示請求をおこないます。
任意請求の場合、裁判手続きをおこなう必要がありません。
なお任意請求では、プロバイダが「権利が侵害されたことが明らか」であるか判断する必要があります。
ただし、その判断をするのが難しいなどの理由で、プロバイダが任意の開示請求に応じることはほぼないのが実際のところです。
そのため、一般的には裁判手続きで開示請求することになります。
従来からある発信者情報開示請求では、コンテンツプロバイダ・アクセスプロバイダそれぞれ別々に情報の開示を求めます。
具体的には、投稿者の情報を知るため最大で以下3つの裁判手続きが必要となるのです。
前項でも説明したとおり改正プロバイダ責任制限法では、発信者情報開示命令事件に関する裁判手続という非訟手続が新しく創設されました。
本手続きでは、1回の裁判手続きでコンテンツプロバイダ・アクセスプロバイダの両方に情報開示を求めることができます。
具体的には、1回の手続きで以下3つの命令を発令できるようになったのです(ただし、前述のとおり、少なくともコンテンツプロバイダ、アクセスプロバイダへの申立てが別々に必要です)。
新しい発信者情報開示命令の手続きにより、従来に比べて投稿者の開示をうけるのにかかる手間や時間を大幅に軽減できます。
また一般的な訴訟手続きに比べ簡便な非訟手続とされたことにより、訴状送達などでかかっていた時間も短縮されたのです。
その結果、より迅速かつ確実に投稿者の個人情報を把握できるようになりました。
ここからは、プロバイダへの発信者情報開示請求についてよくある質問をまとめています。
発信者情報開示請求を自分で進めることは可能です。
ただし、開示請求が認められるには、権利を侵害されたことや開示請求が正当であることなどを、法的な観点から立証しなければなりません。
ケースに応じて、適切な請求方法を選定する必要もあります。
これらの対応を適切におこない開示請求を成功させるためには、IT問題の対応を得意とする弁護士に相談・依頼した方が確実でしょう。
自分でおこなうのに不安がある場合、まずは弁護士に相談をしてみることをおすすめします。
どちらの手続きがよいかはケースによって異なります。
一般的には、新設された発信者情報開示命令の方がより迅速に投稿者の発信者情報を特定できるケースのほうが多いようです。
ただし発信者情報開示命令では、プロバイダから異議を申し立てられると通常訴訟へ移行します。
その結果、かえって従来の手続きより特定までに時間がかかってしまう可能性があるのです。
自分たちだけで、新旧どちらの手続きを選べばよいか正しく判断するのは難しいでしょう。
IT問題の対応を得意とする弁護士に相談し、アドバイスを求めることをおすすめします。
アクセスプロバイダに対し投稿者の情報開示が求められた場合、開示に応じるかを問う意見書が投稿者宛に届きます。
投稿者が開示に拒否する旨とその理由を記載して返送したとしても、発信者情報が開示されないわけではありません。
回答内容を考慮しても権利侵害が明白な場合などは、プロバイダの判断により投稿者の情報が開示されます。
また仮にプロバイダが応じなくても、請求者が発信者情報開示命令を申し立てし、裁判所が開示命令の発令を相当と認めれば投稿者の情報が開示されるのです。
プロバイダへの発信者情報開示請求が認められるには、権利侵害の事実が明白であることや開示を受けるべき正当な理由があることを証明しなければなりません。
法律の知識がないと開示請求が認められず投稿者を特定できない可能性があるため、弁護士に相談・依頼しましょう。
ネット上のトラブルに詳しい弁護士に依頼すれば、発信者情報開示請求を素早く正確に進めてもらうことが可能です。
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