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投稿者の特定・訴訟 弁護士監修記事 更新日:

捨て垢でも犯人の特定は可能|匿名での嫌がらせの対処法について

弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士
監修記事

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SNSにおける嫌がらせ行為についていわゆる『捨て垢(すてあか)』が利用されるケースは少なくないようです。

アカウントに投稿者の情報が一切ないので、泣き寝入りをしてしまう被害者も少なくありません。

しかし、捨て垢だからといって利用者の特定ができないということはありません。

実は、捨て垢であろうとなかろうと、投稿者の身元特定のための作業はほぼ同じです。

この記事では、捨て垢を利用したSNSでの嫌がらせへの対処法を解説します。

ネットでの誹謗中傷にお悩みの方は、ぜひ参考にしてみてください。

捨て垢の特定はスピード命!早急に弁護士に相談を!

捨て垢やサブ垢でも投稿者を特定する手段は通常と変わらず、弁護士に依頼すれば次のステップで特定できるでしょう。

  • サイト管理者へIPアドレスの開示請求
  • 回線事業者へ個人情報開示請求
  • 開示された情報を元に投稿者を特定

ただし相手を特定する際は以下の2点に注意です。

  • IPアドレスの保存期間(目安は3ヶ月)
  • 捨て垢(アカウント)が削除されていない

時間の制限がある以上、捨て垢の持ち主を特定するにはスピードが命です。弁護士に任せることで捨て垢を早急に特定できるかもしれません。

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捨て垢でもIPアドレスから加害者を辿れる

捨て垢の場合、アカウントの情報からは誰なのかが予測できず、特定はできません。

しかし、これは捨て垢であろうと匿名アカウントであろうと同じです。

このような場合、アカウントから人物を特定するのではなく、投稿に利用された『IPアドレス』の記録から人物を特定していくことになります。

IPアドレスとは、パソコンやスマホなどのネット機器に振り分けられた識別番号のことです。

最初の段階として、投稿に利用されたIPアドレスから、当該IPアドレスを管理するインターネットプロバイダ(通信会社)を特定します。

特定したインターネットプロバイダに、当該IPアドレスを利用した者の契約者情報の開示を求めることで、身元の特定が可能なのです。

アカウントを削除される前にすべきこと

SNSの運営会社には削除したアカウントの情報が一定期間は保管されているため、アカウントが削除されても直ちに身元の特定が不可能となるわけではありません。

しかし運営会社に対してIPアドレスの開示を請求するには、『いつ』『なんというアカウントから』『どのような投稿があったのか』の証拠が必要です。

アカウントが削除されてしまうと、この証拠を揃えることが非常に困難になることがあります。

そのためWEB魚拓や問題ページのPDF化、スクリーンショットなどを用いて、捨て垢が削除される前に問題のある投稿について必要な情報を保全しておきましょう。

※IPアドレスには保存期間がある

スクリーンショット・WEB魚拓などの証拠を残していたとしても、身元特定を成功させるにはすばやい行動が必要です。

SNSの運営会社がIPのアドレスなどのログを保管しているのは一定期間のみで、保管期間を過ぎてしまうと記録が削除されてしまいます。

一般的には3ヵ月間が保存期間の目安といわれているので、問題の投稿から時間が経ちすぎてしまうと、嫌がらせ加害者の身元特定は困難になるので注意してください。

どんな被害に遭っていれば加害者を特定できるのか

どんなアカウント・投稿に対しても、発信者情報開示請求で情報が開示されるわけではありません。

具体的な権利侵害の被害がない限り、運営会社も開示には応じてくれないのです。

例えば、ネット誹謗中傷被害では、以下のような権利侵害の被害を立証する必要があるでしょう。

名誉毀損

公然の場で具体的な事実を挙げたうえで第三者の評判を落とす可能性のある言動をとる行為

(例:あいつは不倫している、あいつは前科持ちだ)

侮辱

公然の場で具体的事実を挙げないで第三者の評判を落とす可能性のある言動をとる行為

(例:吐き気がするくらいブス、裏でいじめをやってそう)

肖像権侵害

撮影や公開を許可していない肖像物を正当な理由なく公表する行為

(例:隠し撮りの公開、HPやブログ写真の無断転載)

プライバシー侵害

公共の場で公開を望んでいない個人情報や私生活の情報を暴露する行為

(例:本名や住所などの個人情報、出社退社の時間帯)

嫌がらせといっても単に「嫌な気持ちになった」、「気分が悪い」といった理由では、相手の身元特定は難しいと心得ておきましょう。

発信者情報開示請求で加害者を特定するまでの流れ

捨て垢の所有者の身元を特定するまでの手続きの流れをご紹介します。

  1. SNS運営会社へのIPアドレス開示請求
  2. IPアドレスから加害者が利用したプロバイダを特定
  3. プロバイダへの契約者情報開示請求
  4. 加害者の特定

開示請求の手続きは2回必要になる

発信者情報開示請求の手続きは、SNS運営会社と加害者が利用したプロバイダ(ネット事業者)に対しての2回おこなうケースが一般的です。

基本的に、SNSの運営会社はアカウントの利用者が「どこの誰なのか」を管理していません。

運営会社がもっている情報は、嫌がらせ投稿のために利用したIPアドレスだけです。

ところが、IPアドレスはそれだけをみれば単なる数字の羅列に過ぎないので、そこから投稿者を直ちに特定することはできません。

投稿者の特定のためには、IPアドレスからインターネットプロバイダを特定し、インターネットプロバイダへの追加請求が必要です。

つまり、SNSでの嫌がらせでは捨て垢・本垢にかかわらず運営会社とプロバイダの二段構えで開示請求をおこなう必要があります。

なお、2022年10月27日までに改正プロバイダ責任制限法が施行されます。

改正プロバイダ責任制限法では、従来2段階の裁判手続が必要だった発信者情報開示請求を、1回の非訟手続によっておこなうことができるようになります。

これにより、被害者側の負担が軽減すると考えられるでしょう。

また、ログイン時情報の発信者情報開示請求は、一定の条件はあるものの、明文で認められるようになります。

加害者の特定にかかる期間の目安

発信者情報開示請求は、裁判所の手続きを利用することになるのである程度の時間がかかります。

サイトやプロバイダによって期間は変わりますが、以下がおおよその目安になります。

加害者特定にかかる期間の目安

IPアドレス開示請求

1~2ヵ月

契約者情報開示請求

3~4ヵ月

なお、GoogleやX(旧Twitter)など海外会社を相手とする場合は更に期間がかかりますので、注意しましょう。

個人では発信者情報開示請求をするのは難しい

発信者情報開示請求では、裁判所の手続きが必要になるケースがほとんどです。

裁判所の手続きは個人でも可能ですが、開示を求める正当な理由が存在するのかを合理的に示す証拠や書類の作成が必要なので、専門知識がないと対応は難しいかもしれません。

捨て垢によるSNSでの嫌がらせで加害者を特定するためには、ネット問題の解決が得意な弁護士への相談をおすすめします。

警察への相談をおすすめする状況

嫌がらせ行為が単なる嫌がらせを越えて犯罪に該当する場合は、管轄の警察署に相談しましょう。

特に、ネット上に投稿が存在することで社会的・経済的な信用が著しく傷つけられる場合や、脅迫的で生命・身体に危害が加えられるおそれがある場合など緊急性があるような事案は、警察への相談をおすすめします。

なお、警察の対応はあくまで刑事事件としての対応であり、民事事件である慰謝料請求や損害賠償について警察が関与することはありません。

もっとも、警察が刑事事件として立件した場合、犯罪捜査の一環として投稿者の特定がされますので、この情報を民事的処理に利用できることは大きなメリットといえます。

弁護士への相談をおすすめする状況

加害者の特定から投稿の削除、損害賠償や慰謝料請求といった民事的な事件処理をお任せしたいのであれば、弁護士への依頼がおすすめです。

SNSでの嫌がらせや誹謗中傷への解決実績が高いIT弁護士なら投稿者の特定から責任追及までスムーズに処理してくれると思われます。

捨て垢の個人特定を依頼する弁護士費用の相場

ネットの特定手続きにかかる弁護士費用は、80万円~100万円程度はかかると思った方が無難です。

これらの弁護士費用の、内訳をみてみましょう。

IPアドレス開示請求

着手金:約20万円

報酬金:約15万円

契約者情報開示請求

着手金:約20~30万円

報酬金:約15~20万円

SNSでの嫌がらせでは、加害者の身元を特定するために最低2回の開示請求が必要です。

それぞれの開示請求に対して弁護士費用がかかるので決して安いとはいえない金額になります。

だからこそ、スピーディーで確実に加害者を特定できるITトラブルに強い弁護士への依頼は必須です。

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捨て垢への対処に関するQ&A

加害者の見当はついていても開示請求は必要?

たとえ捨て垢でも、嫌がらせの内容やタイミングによっては「多分あの人がやったのだろう」というおおよその見当がついていることもあるでしょう。

しかし、たしかな証拠がないと、加害者が「やっていない」と反論してもこれを覆すことができません。

加害者の見当がついていても相手がそれを認めない場合には、たしかな証拠を集めるために発信者情報開示請求は必須です。

DMでの嫌がらせでも特定できる?

嫌がらせ行為は多くのユーザーが閲覧できる投稿にだけ限りません。

『DM』と呼ばれるダイレクトメールによって嫌がらせがおこなわれるケースも存在します。

このようなDMでの迷惑行為についても、侮辱的・脅迫的なメッセージが繰り返されるような場合には、人格権侵害を理由として開示請求をする余地はあります。

慰謝料はいくら請求することができる?

SNSの嫌がらせが権利侵害に該当する場合は、その被害に応じた慰謝料を請求できます被害状況によって慰謝料の金額は変わりますが、一般的な相場は以下のとおりです。

嫌がらせ行為の内容

慰謝料の相場

名誉毀損(個人の場合)

10~50万円

名誉毀損(会社・法人などの場合)

50~100万円

侮辱

1~10万円

プライバシー侵害

10~50万円

いずれにしても、慰謝料額は「この場合は◯◯万円」という基準があるわけではないので、弁護士に相談してアドバイスを求めましょう

まとめ

捨て垢による嫌がらせでも、SNSの運営会社にIPアドレスが保管されている以上は加害者の特定が可能です。

ただし、IPアドレスが保管されている期間は限られているので、素早い対応が求められます。

発信者情報開示請求には、ITトラブルに強い弁護士への依頼がおすすめです。

加害者の特定を検討している場合は、法律相談サービスをお気軽にご活用ください。

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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。
ベンナビIT(旧IT弁護士ナビ)編集部
編集部

本記事はベンナビIT(旧IT弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビIT(旧IT弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。
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