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リベンジポルノとは、元配偶者や元交際相手から復縁を断られるなどした腹いせから、相手の性的な写真や動画を同意なしで公開することです。
インターネットが普及し、多くの人がSNSや匿名掲示板を利用するようになった現在、リベンジポルノに関する相談件数は以下のように増加傾向にあります。
時期 |
件数 |
---|---|
令和2年 |
1,570 |
令和3年 |
1,628 |
令和4年 |
1,728 |
令和5年 |
1,812 |
実際には、リベンジポルノ被害という性質上、誰にも相談できずに泣き寝入りを強いられているケースも少なくないでしょう。
そこで本記事では、リベンジポルノで公開された写真や動画の削除方法をはじめ、リベンジポルノ被害に遭ったときの対処法について分かりやすく解説します。
リベンジポルノで公開された写真・動画は、一刻も早く削除したいものです。
まずは、リベンジポルノで公開された写真・動画を削除するための方法を紹介します。
リベンジポルノによって写真・動画が許可なくアップロードされているのを発見したとき、最初に実践できるのが「サイト管理者に対する削除依頼」です。
SNSや掲示板では一般的に、問い合わせ専用フォームや投稿・画像・動画などの削除依頼窓口を設けています。
同意のない写真・動画のアップロードによってリベンジポルノ被害に遭っている旨をサイト管理者や運営会社に伝えれば、利用規約違反が確認され次第、当該写真・動画は削除されるでしょう。
ただし、リベンジポルノによって投稿された写真・動画を削除するかを判断するのはサイト管理者です。
サイトの種類によっては、ユーザーからの問い合わせに対して誠実な姿勢を見せず、当該写真・動画を削除しないケースもないとは言えません。
サイト管理者が自主的にリベンジポルノ画像などの削除依頼に応じてくれないときには、次項で紹介する法的措置を検討しましょう。
リベンジポルノが掲載された写真・動画のサイトに問い合わせフォームなどが用意されていないときには、サイト管理者に対して送信防止措置を依頼するのも選択肢のひとつです。
送信防止措置依頼とは、インターネット上の投稿などで権利が侵害されている場合に、プロバイダに対し投稿の削除を求める手続きを指します。
この場合のプロバイダとは、SNSや掲示板などの運営元(=サイト管理者)のことです。
送信防止措置依頼をおこなうと、サイト管理者は投稿者に削除してよいか意見を求めます。
そのうえで、相手から同意が得られたり反論がなかったりしたら削除を決定するのです。
また投稿者から反論があっても、サイト管理者が削除すべきと判断をして投稿者の同意を得ずに削除することもあります。
ただし削除するか否か、最終的にはサイト管理者の判断によるので必ず削除されるとは限りません。
また送信防止措置依頼をおこなってから実際に削除されるまで、1ヵ月程度の時間がかかります。
サイト管理者に依頼してもリベンジポルノの写真・動画が削除されないときには、裁判所に対し削除を求めるための仮処分命令の申し立てをおこないます。
申し立て後、裁判所での尋問(面談)を受けるなどしたうえで、裁判所が該当する投稿の削除をするようサイト管理者へ命令をするのです。
削除命令を受けた場合、たいていの場合サイト管理者側は削除に応じます(サイト管理者が異議を申し立て、裁判で争うことになる可能性もあります。)。
なお、申し立てから削除命令がおこなわれるまで1~2ヵ月程度かかります。
リベンジポルノで写真・動画をネット上に掲載されたときには、弁護士へ相談することが強く推奨されます。
これまでみてきたように、サイト管理者側に削除依頼をしても必ずしも応じてくれるとは限りません。
また手続きをしてから、該当の写真や動画が削除されるまで時間もかかります。
手続きに不備があれば、依頼に失敗したりサイト管理者などが応じてくれなかったりする可能性も高まるでしょう。
弁護士に相談すれば、どのように手続きをすすめるべきか、どうすればサイト管理者が応じてくれるかアドバイスしてくれます。
また弁護士に対応を依頼すれば手続きを適切かつ迅速にすすめてくれるので、よりスピーディに削除がおこなわれる可能性が高まるのです。
相手へ損害賠償を請求する際は、相手との交渉などを一任することもできます。
迅速に該当の写真や動画を削除したい場合は、まず弁護士へ相談することを検討しましょう。
リベンジポルノで写真や動画をネットに掲載されたときには、これ以上被害が大きくなるのを防止するために、削除に向けて動き出すのが最優先です。
そのうえで、リベンジポルノをした元交際相手・加害者に対して、刑事責任・民事責任を追及することも検討します。
ここでは、リベンジポルノ被害を受けたときに検討するべき法的措置について解説します。
性的な写真や動画を本人の同意なしに公開すれば、リベンジポルノ法に違反する犯罪になります。
そのため相手を刑事告訴して罪に問うことができるのです。実際、昨今ではリベンジポルノ法違反による逮捕者が増加しています。
ただし被害者本人が警察に相談するだけでは、動いてくれないことも少なくありません。
刑事告訴をするには必要な証拠を確保したり、告訴状を作成したりする必要もあります。
また1人で刑事告訴をするのは分からないことも多く不安もあるでしょう。
そのため刑事告訴をする際は、あらかじめ弁護士へ相談・依頼することをおすすめします。
リベンジポルノについては、「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律」(通称「リベンジポルノ防止法」)が適用されます。
リベンジポルノ規制法第3条では、以下の行為を犯罪と規定しています。
種類 |
罰則 |
---|---|
【公表罪】 第三者が撮影対象者を特定することができる方法で、性的な写真や動画をインターネット上で不特定多数に提供したり公開したりした場合 |
3年以下の懲役または50万円以下の罰金 |
【公表目的罪】 自分で公開しなくても、性的な写真や動画を公開させる目的で他人へ提供した場合 |
1年以下の懲役または30万円以下の罰金 |
たとえば、交際中に撮影した性行為中の動画を、破局後、元交際相手がSNSなどに投稿したときには、リベンジポルノ規制法違反で刑事訴追することが可能です。
ただし、リベンジポルノ規制法の対象になる「私事性的画像記録」は以下のものに限られます(リベンジポルノ規制法第2条第1項各号)。
たとえば、一切性的ではない記念写真などをSNSに投稿したようなケースでは、私事性的画像記録に該当しないため、リベンジポルノ規制法では処罰できません。
なお、その他、リベンジポルノをした加害者に適用される可能性がある犯罪類型は以下のとおりです。
リベンジポルノ規制法が適用されないケースでも、以下の犯罪類型に該当するような事情が存在すれば刑事事件化を達成できるので、弁護士と協議しながら、刑事告訴を検討するとよいでしょう。
犯罪類型 |
具体例 |
---|---|
名誉毀損罪 |
被撮影者の社会的評価を低下させるような動画・画像をSNSにアップロードされた場合の罪。 名誉毀損罪が成立する場合は、3年以下の懲役もしくは禁錮、または50万円以下の罰金に処される。 |
児童ポルノ公然陳列罪 |
リベンジポルノの被害者が18歳未満の場合の罪。 撮影した写真や動画を公開した場合は、5年以下の懲役もしくは500万円の罰金または、その両方が科せられる。 また撮影した写真や動画を第三者に提供した場合、3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科される(リベンジポルノ法違反より厳しい刑罰が科せられます。)。 |
わいせつ物頒布罪 |
他人の性的な動画・画像などをインターネット上にアップロードした場合の罪。 わいせつ物頒布罪が成立した場合は、2年以下の懲役もしくは250万円以下の罰金、科料、または懲役刑と罰金刑の両方が科される(復讐が目的でなかった場合は、わいせつ物頒布罪が成立します。)。 |
迷惑防止条例違反 |
盗撮行為によって撮影したポルノ画像・動画をSNSなどで公開した場合 |
脅迫罪 |
生命・身体・自由・名誉・財産などに害を加える旨を告知して、相手を脅迫した場合に成立する罪。 脅迫罪が成立した場合は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金が科される。 例:「お前の裸の画像を友達に送りつけてやるからな」と脅された場合 |
強要罪・強要未遂罪 |
生命・身体・自由・名誉・財産などに害を加える旨を告知したり暴行を加えたりして、義務のないことをおこなわせたり権利の行使を妨害したりした場合に成立する罪。 強要未遂罪は、相手に強要したものの相手が従わなかった場合や強要した行為が未遂に終わった場合に成立する。 強要罪・強要未遂罪が成立する場合は、3年以下の懲役が科される。 例:「付き合っていた期間中の写真をバラまかれたくなかったら復縁しろ」と迫られた場合 |
恐喝罪 |
被害者を畏怖させたうえで、金銭を差し出させるなど財産上の利益を得る行為をおこなった場合に成立する罪。 恐喝未遂罪は、恐喝の目的を果たせず金銭などを得られなかった場合に成立する。 恐喝罪・恐喝未遂罪が成立した場合は、10年以下の懲役が科される。 例:「性行為中の動画をSNSで公開されたくなかったら100万円で買い取れ」と金銭などを要求された場合 |
リベンジポルノの被害に遭ったときには、相手に対して損害賠償請求・慰謝料請求をすることが可能です(民法第709条、民法第710条)。
リベンジポルノ被害のケースでは、被害者が被った精神的損害を金銭的に評価して相手方に請求することになります。
事案の状況次第ですが、リベンジポルノ被害の慰謝料額の相場は50万円~100万円程度です。
顔や局部を無修正の状態で拡散されるなど、行為が特に悪質な場合は100万円超の慰謝料が認められることも考えられます。
なお損害賠償を請求する場合、相手が間違いなく写真や動画をアップロードしたという証拠を確保することが必要です。
具体的には発信者情報開示請求・開示命令などの手続きをおこなうことになります。
発信者情報開示請求・開示命令とは、問題となっているネット上の投稿をした人物を特定し、氏名や住所などを把握するための手続きです。
これらの手続きについて、詳細は以下記事で解説しておりますので、興味があれば参照ください。
リベンジポルノの被害を受けたら、まずは証拠の保全をすることが重要です。
リベンジポルノについて相手を刑事告訴したり相手に損害賠償を請求したりする際は、証拠が必要になります。
具体的には、リベンジポルノの写真・動画を発見したサイトのURLを記録し、画面のスクリーンショットを撮影しましょう。
サイトの運営者情報が記録されている場合は、その画面もスクリーンショットを撮影します。
スクリーンショットについては、プリントアウトもしておきましょう。
リベンジポルノで公開された写真・動画を発見したときには、早期の対処が不可欠です。
なぜなら、写真などを放置し続けると、被害者側がさまざまなリスクに晒されるからです。
ここでは、リベンジポルノ被害を放置するデメリットについて解説します。
リベンジポルノの写真・動画がインターネット上に公開されると、その情報が拡散され削除が難しくなる可能性があります。
一旦削除できたとしても、削除する前に個人のパソコンに画像や動画が保存され、改めてインターネット上で公開される可能性も否定できません。
リベンジポルノで写真や動画が公開されると、それが周囲に知られ日常生活や仕事にも支障をきたしかねません。
リベンジポルノの写真・動画が会社や学校に出回ってしまえば、人間関係が崩れてしまう可能性もあるでしょう。
また現在の交際相手・結婚相手がその投稿をみることで揉め事になることも考えられます。
インターネット上の投稿は、時間が経過するほど多くの人にみられる可能性が高まるのです。
このような点から、リベンジポルノの被害を受けたときは速やかに対応を開始するようにしましょう。
リベンジポルノで写真・動画を投稿された場合、これを削除するだけでは根本的な解決になりません。
なぜなら、リベンジポルノに及ぶ加害者は怨恨などの強い感情を抱いているからです。
たとえば、投稿された写真や動画の削除に成功しても、消されたことに逆恨みをして、さらにリベンジポルノを繰り返したり、悪質なストーキング行為に及んだりしかねません。
弁護士や警察に相談して、損害賠償請求や刑事告訴など法的な手続きで解決を目指すことを検討しましょう。
さいごに、リベンジポルノで写真が公開された被害者からよく寄せられる質問をQ&A形式で紹介します。
削除依頼をしてから写真などが削除されるまでの期間は、投稿先サイトの種類や数、投稿された写真・動画数などで異なります。
セーファーインターネット協会によれば、3~7日以内に7割前後が削除されているようです。
一方で、削除まで1ヵ月近くかかっているケースも少なくありません。
リベンジポルノの事案で頻発するのが、「写真や動画をネットで公開されなくなかったら復縁しろ」「写真を家族に見せられたくなかったらホテルまで来い」などと脅されるケースです。
このような元交際相手の行為は、脅迫罪や強要罪・強要未遂罪に該当する可能性が高いです。
LINEやメールの画面、音声の録音など脅迫的な言動についての証拠があれば、警察に相談して対応を求めましょう。
「別れた交際相手の手元に自分の写真・動画が残っているのは気分が悪い」「いつかリベンジポルノ被害が発生するのではないか」などの不安を抱えている方は少なくはないでしょう。
しかし、削除依頼や削除命令などの対象になるのは「ネット上などに公開された写真・動画」のみです。
なぜなら、元交際相手が自分のスマートフォンなどに保管している写真・動画については、元交際相手が所有権を有するものだからです。
そのため、公開されていない写真や動画を法的な手続きで削除させるのは難しいと考えられます。
どうしても相手の手元にある自分の写真などを削除させたいのなら、弁護士へ依頼をしたうえで、相手方と交渉して削除について同意を引き出すしかないでしょう。
リベンジポルノで写真や動画を公開されたことに気付いたときには、できるだけ早いタイミングで弁護士へ相談・依頼をしてください。
弁護士へ相談するタイミングが早いほど削除請求などによって写真・動画が拡散されるリスクが軽減されますし、加害者側に対する法的責任追及のプロセスをスムーズに進めることができるからです。
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