このような悩みを抱えていませんか?
SNSや掲示板で誹謗中傷を受けた場合、発信者情報開示請求をおこない、投稿者に対して慰謝料や示談金を請求できるケースがあります。
しかし、実際の示談金相場は、投稿内容の悪質性や拡散状況、被害の大きさなどによって大きく異なります。
そこで本記事では、開示請求後の示談金相場や発生する費用の内訳、費用倒れを防ぐためのポイントについてわかりやすく解説します。
誹謗中傷への対応を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

開示請求後の示談金は、権利侵害の種類や被害の程度、被害者が個人か法人かによって幅があります。
ここでは、権利侵害の種類別に示談金相場を解説します。なお、以下で紹介する示談金相場はあくまで相場であり、実際の金額は各事案の状況によって異なります。
ネットなどへの書き込みで名誉権侵害が成立する場合の開示請求の示談金相場は、以下のとおりです。
法人のほうが高額なのは、法人の社会的信用が低下することによる経済的損失が考慮されるためです。
ただし、以下のようなケースでは、相場を上回る金額が認められやすいでしょう。
なお、名誉権侵害が成立するのは、故意または過失によって人の名誉を毀損したときです。摘示した事実が真実かどうかは原則として関係ありません。
たとえば、「○○社の社長は横領している」「○○は前科がある」といった、具体的な事実を指摘する投稿が該当します。
ネットへの書き込みで侮辱が成立する場合の開示請求の示談金相場は、1万〜10万円程度です。 名誉権侵害と比べると、相場は低い傾向にあります。
ただし、以下のようなケースでは、相場を上回る金額が認められやすいです。
なお、侮辱に該当するのは、事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した場合です(刑法231条)。名誉権侵害との違いは、具体的な事実の摘示があるかどうかにあります。たとえば、「バカ」「無能」「消えろ」といった抽象的な悪口が該当します。
プライバシー権侵害が成立する場合の開示請求の示談金相場は、10万〜50万円程度です。
ただし、以下のようなケースでは、相場を上回る金額が認められる傾向にあります。
プライバシー権侵害に該当するのは、公開を望まない私的情報を第三者に公開する行為です。氏名、住所、電話番号、勤務先、家族構成、前科・前歴、病歴などが、保護される私的情報に該当します。
ただし、以下のようなケースでは、相場を上回る金額が認められやすいでしょう。
著作権侵害に該当するのは、著作権者の許可なく著作物を利用する行為です。
SNSでの写真の無断転載やYouTubeへの映画の無断アップロードなどが該当しますが、示談金請求がおこなわれやすいのは、トレント(BitTorrent)などのファイル共有ソフトによるケースです。
トレントではダウンロードと同時にアップロード(公衆送信)が自動でおこなわれるため、違法性が高いとされています。
肖像権侵害による示談金相場は、10万円〜30万円程度です。
ただし、以下のようなケースでは、相場を上回る金額が認められる傾向にあります。
肖像権侵害に該当するのは、無断で撮影された顔写真や動画を第三者に公開する行為、撮影自体は許可があったものの、無許可で公開する行為です。
発信者情報開示命令を利用した場合、示談金回収までの流れは以下の4ステップです。
従来の開示請求では、サイト運営者への仮処分+通信会社への訴訟という2段階の手続きが必要でした。しかし、2022年10月施行の改正プロバイダ責任制限法(現:情報流通プラットフォーム対処法)により、発信者情報開示命令制度が新設されています。
発信者情報開示命令により、1つの裁判手続きで発信者の特定まで進められるようになりました。
ここでは、それぞれのステップを詳しく解説します。
発信者情報開示命令により発信者を特定するには、以下の流れで手続きを進めます。
裁判所への申立てが認められるためには、主に以下2つの要件が必要です。
投稿が削除されると権利侵害の立証が難しくなるため、投稿内容・URL・投稿日時などの証拠をスクリーンショットで保存しておきましょう。
発信者の氏名・住所が判明したら、内容証明郵便で示談金(損害賠償金)を請求します。
内容証明郵便は、「いつ・誰が・誰に・どんな内容の文書を送ったか」を郵便局が証明してくれるサービスです。相手が「請求書を受け取っていない」と主張するのを防げるため、示談金の請求手段として広く利用されています。
示談金の請求書には、主に以下のような内容を記載しましょう。
内容証明に対して相手から返答が来たら、返答内容をもとに示談金・支払い方法・付帯条件について交渉を進めます。
相手から示談金減額の申し入れがあった場合は、裁判で認められる慰謝料の相場を基準に、どこまで譲歩するか検討しましょう。
「【ケース別】開示請求後の示談金相場」で紹介した相場を参考に、裁判に移行した場合の追加コスト(弁護士費用・時間)も考慮して判断するのが合理的です。
合意に至ったら、以下の内容を盛り込んだ「示談書(和解契約書)」を作成しましょう。
なお、作成した示談書は強制執行許諾文言付きの公正証書にしておくことで、相手が支払いを怠った場合のリスクヘッジが可能です。
示談交渉が決裂した場合、または相手が請求を無視し続けた場合は、民事訴訟(損害賠償請求訴訟)を提起します。
裁判では、権利侵害の事実と損害額を客観的な証拠に基づいて立証する必要があります。
判決が確定したにもかかわらず、相手が任意に支払いを行わない場合、強制執行の手続きに移行することで、給与や預金口座の差し押さえが可能です。
ただし、訴訟をおこなう場合は判決までに半年〜1年以上かかるケースもあり、追加の弁護士費用も発生する点には注意しましょう。
なお、訴訟中であっても裁判官が間に入って和解を勧めるケースは多く、「裁判上の和解」で決着する場合もあります。
開示請求にかかる費用は、弁護士費用と裁判所に納める実費の2種類です。
以下では、弁護士費用と実費の内訳をそれぞれ解説します。
発信者情報開示命令を利用した場合、投稿者を特定するまでの弁護士費用は約30万円〜50万円が目安です。
| 費用項目 | 金額の目安 |
| 着手金 | 20万円〜30万円 |
| 報酬金 | 10万円〜20万円 |
なお、投稿者の特定後に損害賠償請求(示談交渉・訴訟)まで依頼する場合は、追加で20万円〜40万円程度の弁護士費用が発生するケースが多いです。
ただし、事務所によって料金体系は異なります。依頼前に費用内訳や見込み額を確認しておきましょう。
発信者情報開示命令を利用した場合、裁判所に納める実費は合計で数千円〜2万円程度です。
内訳は以下のとおりです。
| 費用項目 | 金額の目安 |
| 申し立て手数料(収入印紙) | 4,000円(1申立てあたり1,000円) |
| 予納郵券(郵便切手代) | 1万円程度(1相手方あたり5,000円程度×2件) |
発信者情報開示命令では、以下の4つの申立てをおこなうため、手数料の合計は4,000円になります。
予納郵券は、裁判所から書類を送達する際の郵便切手代です。
金額は申立て先の裁判所によって異なりますが、通常はサイト運営者・通信会社それぞれの申立てで5,000円程度かかります。
開示請求では、示談金の回収額が、開示請求にかかる弁護士費用・実費の総額を下回る「費用倒れ」に注意が必要です。
たとえば、開示請求のための弁護士費用が50万円かかったのに、回収できた示談金が30万円にとどまるケースです。
費用倒れを防ぐために、以下の3つの方法を押さえておきましょう。
ここでは、それぞれの方法を詳しく解説します。
示談金の相場はある程度決まっていますが、上限額や下限額の定めはありません。
そのため、相当の根拠を提示できれば、相場より高い金額で合意できる場合もあるでしょう。
示談金の増額事由として主張できるのは、主に以下の要素です。
また、相手が公的な職に就いている場合や社会的地位が高い場合は、ネットトラブルの公表を避けたいと考え、高額でも支払いに同意するケースがあります。
示談金の増額を目指すなら、できるだけ早い段階から証拠を収集しておきましょう。
投稿のスクリーンショット・通院記録・売上推移データなどが、被害内容に応じた証拠となりえます。
費用倒れを防ぐためには、開示請求にかかった弁護士費用を損害賠償の一部として相手に請求する方法もあります。
通常の民事訴訟では、裁判所が認めた賠償額の約1割しか弁護士費用として認められないケースが多いです。
たとえば、慰謝料100万円が認められた場合、弁護士費用として上乗せされるのは約10万円にとどまります。
ただし、発信者情報開示請求の手続きは専門性が高く、弁護士に依頼しなければ利用が困難です。
こうした事情を考慮し、開示請求にかかった弁護士費用の全額が賠償金として認められた裁判例もあります。
全額が認められるかどうかはケースによって異なりますが、費用の一部を回収できる可能性がある点は押さえておきましょう。
費用倒れとならないためには、弁護士に正式に依頼する前に「想定される示談金の回収額」と「かかる弁護士費用の総額」を試算してもらいましょう。
信頼できる弁護士であれば、費用倒れの可能性があるかどうかを教えてくれます。
初回無料相談を活用して、信頼できる弁護士かどうかを見極めるのもよいでしょう。
ここでは、「ベンナビIT」に掲載されている、開示請求後に相場を上回る示談金を獲得した事例を紹介します。
なお、示談金の金額や交渉の経緯はケースごとに異なるため、あくまで参考としてご覧ください。
配信者として活動していた被害者は、炎上騒動をきっかけに5ちゃんねるで誹謗中傷や業務妨害の投稿を受けました。配信活動に支障が出るほどの被害で、精神的なダメージも深刻だったため、弁護士に相談しました。
その後、加害者から100万円を超える和解金の支払いを受け、二度と同様の投稿をおこなわない旨の誓約を含む和解書を締結しました。
容姿やプライベートを公開せずに配信活動をしていた被害者は、Twitter(現X)上で顔写真や居住地などの個人情報を暴露されました。性的な嫌がらせの投稿も、繰り返し受け、仕事にも多大な影響が出ていたので、弁護士に相談しました。
弁護士に相談後、直ちに発信者の特定手続きを開始しました。 無事に発信者1名を特定し、約130万円の和解金の支払いと、二度と同様の投稿を行わない旨の誓約を含む和解書を締結して解決しています。
プライバシー権侵害と性的嫌がらせが重なったことで、プライバシー権侵害単体の相場(10万〜50万円)を大きく上回る金額が認められた事例です。
ここまでは被害者側の視点で解説してきましたが、開示請求をされた側(加害者側)はどのように対応するのがよいのでしょうか。
ここでは、開示請求をされた側が取るべき行動について、詳しく解説します。
「発信者情報開示請求に係る意見照会書」が届いたら、回答期限内(7〜14日程度)に必ず対応しましょう。
照会書は、通信会社が発信者に対して情報を開示してよいかを確認するための書類です。回答を無視した場合、以下のようなリスクが生じます。
なお、「不同意」と回答しても、裁判所が開示を認めれば情報は開示される点には注意しましょう。
意見照会書へどう回答すべきか悩んだら、弁護士に相談するのがおすすめです。
開示請求をされた場合は、早い段階で示談交渉を持ちかけるのも有効です。
意見照会書には請求者(被害者)やその代理人弁護士の情報が記載されているので、意見照会書が届いた時点で被害者側との示談交渉を開始できます。
早めに示談をまとめれば、精神的・金銭的な負担を抑えたうえで早期解決が見込めるでしょう。
実際、被害者側も裁判には多大な時間と費用がかかると理解しているため、早期の示談に応じるケースも少なくありません。
真摯な謝罪の姿勢を示すことで、示談金の減額につながる場合があります。
示談金の金額は、加害者の反省の態度も考慮して決まります。被害者に対して誠意ある謝罪をおこなえば、減額に応じてもらいやすいでしょう。
謝罪の姿勢を示す具体的な方法は、以下のとおりです。
ただし、謝罪が不十分であれば、被害者側が増額を求めてきたり、刑事告訴に踏み切ったりするおそれもあります。
また、被害者が加害者からの連絡を嫌がる可能性も高いため、弁護士を通じて謝罪をおこなうなど、適切な対応が求められます。
本記事では、開示請求後の示談金相場・開示請求にかかる費用・費用倒れを防ぐ方法・示談金回収までの流れを解説しました。
ネットトラブルの示談金はケースごとに大きく異なります。「自分のケースではいくらになるのか」を正確に把握するには、弁護士への相談がおすすめです。
ベンナビITでは、ネットトラブルや開示請求を得意とする弁護士を地域別に検索できます。
ログの保存期間(通常3ヵ月〜6ヵ月)を過ぎると発信者の特定自体が困難になるため、早めの相談が重要です。
初回無料相談に対応している事務所も多いため、まずは費用を気にせず相談してみてください。
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