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ネット誹謗中傷 弁護士監修記事 公開日:2020.3.6  更新日:2022.6.23

ネット誹謗中傷で加害者を逮捕できるケースと事例を解説

阪神総合法律事務所
曾波 重之
監修記事
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インターネットは誰でも自由に意見や考え方を公表できるオープンな場所です。しかし、発言や投稿の内容が誰かの心や名誉を傷つけるようなものである場合は、「自由だ」などと認めるわけにはいきません。

ネット上での誹謗中傷にあたる書き込みや投稿は、内容次第では法律で処罰が規定されている犯罪に該当します。もし、被害者であるあなたが警察に相談すれば、加害者が逮捕される可能性もあるのです。

この記事では、ネット上の誹謗中傷トラブルで加害者を逮捕できるケースについて紹介していきます。

犯罪の種類や事例、ネット上の誹謗中傷への対処法について確認していきましょう。

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この記事に記載の情報は2022年06月23日時点のものです

誹謗中傷の加害者が逮捕されるケースとは

ネット上誹謗中傷で逮捕できるケースは、「誹謗中傷による被害が発生している」場合です。

たとえば、「◯◯さんはセクハラばかりしている」という内容の誹謗中傷があったとします。この誹謗中傷が、被害者のSNS上に投稿されてしまい、被害者のことをよく知っている人物や被害者とつながりのある取引先の人が目にすれば「そんな人だったのか…」と落胆され、社会的な信用を傷つけてしまうでしょう。

このように、誹謗中傷が公になり、誤解を与え信頼を失ったりさらなる誹謗中傷を招くような事態になったりした場合は、逮捕できる可能性があります。

誹謗中傷はどのような罪に問えるのか

では具体的にどのような罪に問えるのでしょうか。ネット上の書き込みや投稿による誹謗中傷が刑罰法令に規定されている犯罪行為である場合、以下のような罪に問える可能性があります。

  • 名誉毀損罪
  • 侮辱罪
  • 信用毀損罪

それぞれについて詳しく解説していきます。

名誉毀損罪

名誉毀損罪で逮捕できるのは、刑法230条に規定されている要件を満たした場合です。

【刑法第230条】

第1項:公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役もしくは禁錮または五十万円以下の罰金に処する。

【引用】刑法第二百三十条

「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した」を具体的に示すと以下のとおりです。

  • 公然性がある
  • 具体的な事実を摘示している
  • 社会的評価を下げる内容である

名誉毀損罪に問うポイントとなるのは「具体的な事実の摘示」です。たとえば「◯◯さんは会社の女性社員にセクハラばかりしている」という誹謗中傷の内容が、実際におこなわれていたことであれば、具体的な事実の摘示に該当します。一方で「◯◯さんはいやらしい」など、単なる個人の感想や印象であって、事実確認のしようがない誹謗中傷では、名誉毀損罪は成立しません。

この場合は、次に紹介する侮辱罪が該当する可能性があります。

名誉毀損罪が成立する要件や具体例については、別の記事でさらに詳しく解説しています。

【関連記事】名誉毀損とは|成立する要件と訴える方法をわかりやすく解説

侮辱罪

刑法第231条で定められた要件に該当すれば、侮辱罪で逮捕できる可能性があります。

【刑法第231条】

事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留または科料に処する。

【引用】刑法二百三十一条

つまり侮辱罪は「事実の摘示」はなくとも、相手をばかにするような発信をして社会的信用を下げた場合を指します。

たとえば「頭が悪い」「気持ち悪い」「ブス」「デブ」といった具体性のない個人の主観や印象に基づく誹謗中傷は、侮辱罪が成立する可能性があります。ただ、侮辱によって人の社会的評価が下がることはそう多くありません。「頭が悪い」と侮辱されたからといって、周囲から「あの人は頭が悪いらしい」とうわさされたり、「頭が悪い人だから仕事の付き合いをやめる」など、不利益が生じたりするとは考えにくいでしょう。

このように侮辱は、被害者が腹立たしいと感じても実害がほとんど生じず、逮捕に至る違法性が低いと考えられがちです。侮辱罪で逮捕してもらうためには、誹謗中傷によりどのような被害が生じているのか、明確に訴える必要があります。

信用毀損罪

名誉毀損罪とよく似た犯罪に信用毀損罪があります。

【刑法第233条】

虚偽の風説を流布し、または偽計を用いて、人の信用を毀損した者は、三年以下の懲役または五十万円以下の罰金に処する。

【引用】刑法233条

つまり信用毀損罪が成立する要件は次の2点です。

  • 虚偽の情報を流す、または人をあざむく
  • 経済的な信用をおとしめる

信用毀損罪となるポイントは、誹謗中傷が「虚偽・偽計」であることです。名誉毀損罪が事実に基づく摘示であるのに対し、あたかも事実であるかのように嘘の情報を吹聴した場合が、信用毀損罪にあたります。

信用毀損罪に該当するのは、さらに経済的な信用を脅かした場合に限ります。支払い能力や商品・サービスの品質などを指すので、たとえば事実無根なのに「あの会社は倒産寸前だ」と誹謗中傷すれば信用毀損罪が成立する可能性があります。個人間の信頼関係などでない点が、名誉毀損罪や誹謗中傷罪との明確な違いです。

刑事罰・民事訴訟の可能性

これまで紹介してきたように、誹謗中傷は逮捕できる可能性のある犯罪行為です。許しがたい誹謗中傷にさらされたのであれば、刑事罰や慰謝料請求などについて考えることもあるでしょう。ここでは刑事罰と民事による責任追求の可能性について解説します。

刑事罰の可能性と親告罪

名誉毀損罪や侮辱罪、信用毀損罪の要件をすべて満たしていれば、逮捕できる可能性は十分あります。逮捕され起訴となれば、裁判を経て刑事罰が科せられることもあります。

ただ、名誉毀損罪や侮辱罪は「親告罪」にあたるため、被害者による告訴が必ず必要になります。親告罪とは、被害者のプライバシーが侵害され不利益が生じる可能性のあるトラブルについて、被害者本人の告訴がなければ起訴できないとしている犯罪のことです。

告訴すれば、誹謗中傷の内容がさらに多くの人の目に触れる不利益があることは否めません。しかし告訴しなければ起訴に至らず、加害者に刑事罰を科すことはできなくなります。

被害の重さを考え、加害者にはしっかりと刑事罰を受けてつぐなってもらいたいと考えるなら、勇気を持って告訴することも大切です。

民事訴訟の可能性

誹謗中傷の内容によっては刑事上の責任追及が難しく、逮捕に至らない場合もあります。また相手に直接謝罪や示談交渉を求めて拒否された場合も、民事訴訟で民事上の責任追及が可能です。

インターネット特有の「加害者がどこの誰かわからない」という状況でも、情報開示請求などで加害者を特定できる可能性があるため、誹謗中傷をただ我慢する必要はありません。

慰謝料の請求だけでなく謝罪を要求できることも民事上の責任追及の1つです。きちんと謝ってもらいたい、精神的な苦痛に対して賠償して欲しいと考えているなら民事訴訟は有効です。

刑事・民事いずれにしても、一人ですべてをこなしていくのは困難な上、なにより心細いものです。いつでも相談でき、親身になって考えてくれる弁護士に協力してもらい、毅然とした対応を進めていきましょう。

ネット誹謗中傷による逮捕の事例

逮捕の事例

では実際に誹謗中傷で逮捕された事例にはどのようなものがあるのでしょうか。

元アイドルのブログへ人格を否定する書き込み

元アイドルの女性が妊娠を発表したところ、自身のブログに「転べ」「流産しろ」などの人格を否定する書き込みや住所の情報が無断掲載されるなどの被害に遭った事例です。

妊娠した女性に対し「転べ」「流産しろ」などの誹謗中傷を加える行為は、具体的な危害を告げたものではありませんが、相手の名誉感情を傷つける暴言であることは間違いありません。

実際この事件では、情報開示請求により誹謗中傷の書き込みをおこなっていた2人の女性が特定され、侮辱罪で書類送検されています。アイドルやタレントなどの芸能人は誹謗中傷にさらされることが多い実情がありますが、「他の人も書いていたから」「バレないと思った」などといった安易な考えからこうした行動に及んでしまうのは、匿名投稿ができるSNSやインターネットの特徴でもあります。

【詳細】

「転べ」「流産しろ」元アイドルを襲ったネットの誹謗中傷 弁護士「匿名性は守られない」と警告

中傷受けた川崎希、送検女性の「バレないと」に心境

お笑いタレントに対する誹謗中傷で複数名が検挙

平成21年にお笑いタレントに対する、根も葉もない誹謗中傷が逮捕につながった先駆け的な事例です。

事件の起きた足立区出身であること、犯人グループと年齢が近いなどの理由で、お笑いタレントのブログには「殺人事件の犯人である」という事実無根の誹謗中傷が、長期にわたって書き込まれました。「殺人犯」「生きる資格がない」など、いわれのない誹謗中傷が続き、中には生命の危機を感じるような内容まであったといいます。

お笑いタレントは被害届を出し、捜査がおこなわれました。その中でも悪質な誹謗中傷をおこなっていた19人が検挙され18人が書類送検されました。

【詳細】スマイリーキクチのブログ炎上19人検挙!

ネットでの誹謗中傷を苦に高校生が自殺

SNS上に「女性ユーザーに迷惑行為をしている」と誹謗中傷された男子高校生が自殺する事件がありました。誹謗中傷の書き込みをした少年(19歳)は名誉毀損罪で逮捕されています。

男子生徒はSNSで「女性ユーザーに迷惑行為をしている」「そんなことはやっていないと逃げ惑っている」などという誹謗中傷の被害を受けていました。男子高校生は、地元の警察署に被害の相談をした翌日に「もう無理や」という遺書を残して自宅で自殺しました。

父親が警察署に捜査を依頼したことによって加害者の少年が特定されましたが、被害が多数回にわたること、自殺を招いたという重大な結果があったことから逮捕に踏み切ったものとみられます。

男子高校生は、自分を装った誰かが嘘の内容を書き込んでいると悩んでいたともいいます。ネットにおける書き込みや誹謗中傷の怖さがうかがい知れる、1つの痛ましい事例です。

【参考】自殺高校生をネットで中傷の少年 「名誉棄損で逮捕」の理由

高速道路でのあおり運転に対するデマの書き込み

2016年に起こった東名高速移動路で起きたあおり運転が原因となって死亡事故が発生しました。逮捕された犯人の名字とたまたま同じだった、全く無関係の建設会社に対し、犯人の勤務先や親族であるかのような書き込みがされたのです。

これにより建設会社には一日に100件以上も非難の電話がかかるようになり、家族への危険まで感じたといいます。刑事事件としての立件は難しかったものの、社長は投稿者5人に損害賠償を求め、実際、名誉毀損罪で罰金が科せられています。

【参考】デマ投稿で5人に賠償命令 東名あおり事故めぐり

加害者は逮捕されたらどうなるのか

ネット上の誹謗中傷で逮捕された加害者は、次のような流れで刑事手続きを受けることになります。

基本的にどのような容疑で逮捕されたとしても、成人の場合は上記のような流れで進みます。

検察官は勾留期間満期までに被疑者を起訴するかどうかを判断します。起訴されれば刑事裁判を受けることになります。起訴された加害者は、被告人として刑事裁判で審理されますが、日本の司法制度では起訴されれば統計上99.9%が有罪判決を受けるといわれています。

誹謗中傷をしても逮捕に至らないケース

SNSやネット上での誹謗中傷は名誉毀損罪や侮辱罪などの犯罪に問われる可能性があるとお伝えしましたが、逮捕に至らないケースもあります。

  • 当事者間で口論
  • 公共性があり、公益目的での事実の投稿
  • プライバシー権侵害などの犯罪が成立しない場合
  • 可罰的違法性

1つずつ見ていきましょう。

当事者間で口論

1つ目は、当事者間での口論によるものです。たとえばメールやSNSのDM(ダイレクトメッセージ)などは、ネット上に公表されることはなく、当事者以外の目に触れないため「公然」の条件を満たしません。そのため、名誉毀損罪や侮辱罪が成立せず、逮捕できる可能性は低いといえます。DMやメールなどでも「脅迫罪」や「業務妨害罪」などに問われると逮捕に至るケースもあります。

公共性があり、公益目的での事実の投稿

2つ目は、公共性があり、公益目的での事実の投稿によるものです。他人の名誉を毀損するような投稿であっても、伝えるべき事実である場合は名誉毀損罪に問われることはありません。

ただし、あくまで公益目的であることがポイントです。公益目的だと証明できない場合は、名誉毀損罪に問える可能性があります。

プライバシー権侵害など犯罪が成立しない場合

3つ目は、プライバシー権侵害などの犯罪が成立しない場合です。刑事事件として逮捕されるのは犯罪が成立する場合のみです。「プライバシー権侵害」や「肖像権侵害」は、犯罪ではないので逮捕されることはありません。

ただし、プライバシー権侵害などは刑事上の責任がなくても民事上の責任を問うことは可能なので、場合によっては損害賠償として慰謝料を請求することができます。

可罰的違法性に達しない場合

4つ目は可罰的違法性に値しない場合です。可罰的違法性に値しないとは、たとえ違法行為があっても、刑罰が必要とは思えない軽微なものの場合、罪に問えないのではないかという考え方です。そのため、警察などが誹謗中傷の被害をそこまで大きくないと判断すれば、「罰するほどでもない」となり、事件として立件されない可能性があります。

誹謗中傷により受ける、精神的苦痛や周囲への影響を証明するのは難しい場合もあります。逮捕につなげるためには、できるだけ被害を明確にし、逮捕・刑罰に値する被害があることを証明しなければなりません。

警察へ被害を相談する際の注意事項

警察にネット上での誹謗中傷の被害を相談する際には、次の2点を覚えておきましょう。

  • 警察が動くことは稀
  • 損害賠償(慰謝料)の請求は依頼できない

警察が動くことは稀

これまで述べてきたように、警察は基本的に民事不介入であることや、罰するほどではないと被害を過小に見られ、誹謗中傷トラブルについて相談しても問題として取り合ってもらえないことが多くあります。

誹謗中傷が脅迫等の犯罪行為に該当する場合は別ですが、そうでない場合、警察の手を借りることは難しいといえます。

損害賠償(慰謝料)の請求は依頼できない

誹謗中傷を受けた場合は、加害者に慰謝料を含めた損害賠償を請求できますが、これは民事の問題であり警察が関わることはありません。加害者にこのような請求をおこないたいのであれば、弁護士に相談しましょう。

警察での対応が難しい場合は弁護士へ

  • 誹謗中傷の被害を相談したのに警察が動いてくれない
  • 熱心に相談は聞いてくれたが「犯罪にならない」といわれてしまった
  • 損害賠償を求めたいが「警察の仕事ではない」と断られた

警察に相談すれば解決の糸口が見えるのではないかと考えがちですが、誹謗中傷の場合、さまざまな理由により必ずしも警察で対応してもらえるとは限りません。

「逮捕して欲しい」「損害賠償を求めたい」と考えるなら弁護士に相談してみるという手段もあります。ネットトラブルに強い弁護士なら、より状況を理解してくれ、あなたが不安に思っている悩みにも応えてくれる可能性があります。

弁護士への依頼費用の相場

では実際弁護士に依頼するとなると、費用はどれくらいかかるのでしょうか?

弁護士への依頼費用は、削除や特定を依頼するサイトや手続きを依頼する法律事務所によって異なります。以下で紹介する相場は、おおよその目安として参考にしてみてください。

 

着手金

報酬金

裁判費用

削除依頼

裁判外

5万円~10万円

5万円~10万円

×

裁判

約20万円

約15万円

3万円

発信者の身元特定

裁判外

約5万円~10万円

約15万円

×

裁判

約20万円~30万円

約15万円~20万円

6万円

損害賠償請求

裁判外

約10万円

慰謝料の16%

×

裁判

約20万円

慰謝料の16%

3万円

被害を相談する弁護士の選び方

法律トラブルをどの弁護士に相談するべきか迷ったら、弁護士の注力分野と過去の解決事例を確認しましょう。

たとえばネット上での誹謗中傷トラブルに対応するには、法律の知識だけでなくネットワークの仕組みやサイトに関する知識も必要です。すべての弁護士がこれらの知識や経験を持っているわけではないため、この場合、誹謗中傷だけでなくIT分野に注力している弁護士を選ぶことが大切です。

まとめ

ネット上の誹謗中傷は、その内容が名誉毀損や侮辱罪などの犯罪に該当している場合には、加害者を逮捕してもらえる可能性があります。加害者の逮捕がすべての問題解決につながるわけではありませんが、強い抑止力になることは間違いないでしょう。

告訴や損害賠償請求には法律知識が欠かせません。弁護士はあなたの悩みに寄り添い、必要な手続きをサポートしてくれます。警察に、罪に問うほどではないと判断されてしまった場合も、弁護士に相談することで状況が変わる可能性があります。

加害者への法的措置を検討される場合は、弁護士の法律相談サービスをお気軽にご活用ください。

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この記事の監修者
阪神総合法律事務所
曾波 重之 (大阪弁護士会)
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相護士ナビ編集部

本記事はIT弁護士ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※IT弁護士ナビに掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。

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