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投稿者の特定・訴訟 弁護士監修記事 公開日:2020.8.31  更新日:2022.11.8

掲示板での誹謗中傷|相手を特定する法的措置と方法・弁護士費用の目安

東京みらい法律事務所
甲斐 伸明 弁護士
監修記事
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掲示板に載っている誹謗中傷の投稿内容については、投稿者を特定できる可能性があります。その内容に権利侵害が認められるならば、法的措置により投稿者の特定や損害賠償請求が可能です。

実際に特定を行うために必要なことはどんなことなのか、また法的措置のための弁護士費用はどのくらいかかるのか不安は尽きません。

この記事では、どのような流れで投稿者の特定ができるのか、気になる弁護士費用はどのくらいなのかについて詳しくご紹介していきます。

【関連記事】【事例つき】「誹謗中傷」と「批判」の違いを弁護士がわかりやすく解説

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ネット掲示板での誹謗中傷相手は特定可能

誹謗中傷した投稿者を特定するためには、法的措置を用いた解決を検討すべきでしょう。しかしどのような流れで進むのか、どのような手続きが必要なのかについては、専門知識を要します。

ここで重要となるのは、誹謗中傷の投稿内容が被害者の権利を侵害しているかどうかです。権利侵害には「名誉毀損」「名誉感情侵害(侮辱)」「プライバシー侵害」などが挙げられます。これらに該当する場合には、誹謗中傷を行った投稿者の特定が可能です。

権利侵害についての詳しい内容は以下の記事を参考にしてみてください。

【詳細記事】ネット誹謗中傷は無視で大丈夫?放置でなく対策するべき状況とは

掲示板で誹謗中傷をした投稿者特定までの全体的な流れ

投稿者を特定するために、どのような流れで進むのかを知っておきましょう。下記の図では、一連の流れを簡潔にまとめました。

詳細な情報を確認する前に、一度以下の流れを把握しておきましょう。

 

ネット掲示板で誹謗中傷した相手を特定するまでの2ステップ

開示請求は、大きく2つのステップに分割できます。掲示板管理者への「プロバイダ特定のための情報請求」と、プロバイダへの「個人の情報請求」です。

投稿者の身元が判明すれば、賠償請求や裁判へと進展していくことになるでしょう。

ステップ1:掲示板の管理者に対して発信者情報開示請求を行う

まず初めに掲示板を管理しているサイト管理者に対して、「IPアドレスの開示請求」を行います。

開示請求をしたとしても、サイト管理者が快く回答してくれることは稀といえます。サイト管理者も個人情報を守らなければならないため、開示には至らないケースが多いのです。

サイト管理者がIPアドレスの開示に応じてくれない場合には、裁判所へ仮処分命令を申し立てます。

詳細は以下の記事を参考にしてみてください。

【詳細記事】仮処分での削除申し立て|書き込み削除までの流れと費用について

ステップ2:プロバイダに対して発信者情報開示請求を行う

IPアドレスの開示請求が認められれば、whois検索により、投稿者が使用したプロバイダが特定できます。プロバイダとは回線をネットとつなげる役割を担う接続業者のことで、例えば「OCN」や「So-net」 などが該当します。

個人情報を知るためには、プロバイダに発信者情報を開示してもらう必要があります。しかし投稿した犯人が、個人情報の開示に同意することは通常ありません。その場合、プロバイダが任意に開示に応じることもまずありません。

その場合には裁判所に発信者情報開示請求訴訟を行い、勝訴すればプロバイダは個人情報の開示に応じることになります。

 

なお、2022年10月27日までに改正プロバイダ責任制限法が施行されます。改正プロバイダ責任制限法では、従来2段階の裁判手続が必要だった発信者情報開示請求を、1回の非訟手続によって行うことができるようになります。これにより、被害者側の負担が軽減すると考えられるでしょう。また、ログイン時情報の発信者情報開示請求は、一定の条件はあるものの、明文で認められるようになります。

発信者情報開示請求の多くは裁判をすることになる

IPアドレスの開示請求も、個人情報の開示請求も,素直に応じてくれることは期待しないほうが良いでしょう。

基本的には、仮処分も含む裁判へもつれ込むケースが大半になります。

弁護士へ特定の手続きを依頼すべきパターン

誹謗中傷された投稿のすべてが権利侵害になるのかというとそうではありません。開示は、投稿の内容が誹謗中傷を受けた側の権利侵害をしている場合に認められるものです。

サイト管理者への削除要請は個人でも可能ですが、投稿者の情報開示となると法律の知識を必要とする場面が多くなります。

裁判所への申し立ては、さまざまな手続きを要することからも、個人で行うことは困難を極めるでしょう。誹謗中傷の内容が権利侵害に当たることの法的な立証が必要となり、弁護士へ依頼することを検討すべきです。

自分で発信者情報開示請求の手続きをすることは困難を極める

発信者情報の開示請求を自分で行うことは可能です。しかし発信者情報というのは個人情報に該当するため、サイト管理者やプロバイダが開示してくれることはありません。

そのため裁判にて開示請求を進めるため、専門知識がある弁護士への依頼がベストといえます。

相手に対して損害賠償(慰謝料)を請求したい

誹謗中傷の内容が権利侵害に該当する場合には損害賠償を請求することが可能です。該当する権利侵害によってもその額は異なります。損害賠償の相場は以下の通りです。

  • 名誉毀損…一般人の場合:10万~50万円、事業主の場合:50万~100万円
  • 侮辱…1万~10万円
  • プライバシー侵害…10万~50万円(ヌード写真の公開は100万円以上になることも。また案件によっては数百万円の損害賠償を請求できるケースもあるといわれています)

テレビや雑誌のようなメディアが権利侵害を行った場合には、損害賠償額は高額になる可能性が高いです。また有名人や芸能人が被害者の場合にも、損害賠償額は高くなります。

弁護士費用の相場

ネットの誹謗中傷にかかる弁護士費用は以下の通りです。

 

着手金

報酬金

裁判費用

削除依頼

裁判外

5~10万円

5~10万円

×

裁判

約20万円

約15万円

3万円

発信者の身元特定

裁判外

約5~10万円

約15万円

×

裁判

約20~30万円

約15~20万円

6万円

損害賠償請求

裁判外

約10万円

慰謝料の16%

×

裁判

約20万円

慰謝料の16%

3万円

弁護士費用を含めて賠償請求することが可能

通常の裁判では原則として、自分で頼んだ弁護士費用は自分で支払うことになっています。もし裁判に敗訴しても、相手の弁護士費用を支払うことはないとされているのです。

しかし不法行為による損害賠償請求においては、例外的に弁護士費用(損害額の10%)の請求も認められる場合があります。

不法行為とは、故意や過失に関わらず相手の権利を侵害し、損害を発生させる行為のことです。インターネット上の投稿に関する不法行為は、以下のようなものが考えられます。

  • 名誉権侵害
  • プライバシー権の侵害
  • 肖像権侵害
  • 著作権侵害
  • 業務妨害
  • リベンジポルノ
  • 脅迫、強要、恐喝
  • 詐欺

誹謗中傷が不法行為と認められれば、損害賠償として弁護士費用も投稿者は賠償しなければならないと考えられます。

ただし、必ずしも弁護士費用の全額が支払われるとは限らないので、費用倒れになるリスクも懸念する必要があります。

プロバイダ責任制限法の改正による情報開示請求の変更点

2022年10月1日に改正プロバイダ責任制限法(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律)が施行され、手続き等に変更がありました。主な違いは次の3点です。
 
➀新たな非訴手続きの創設
②開示情報の範囲の見直し
③発信者が開示を拒否した場合の理由照会の義務化
 
ここでは、これら変更点について簡単にお伝えします。

1回の手続きで情報開示請求できる新たな非訴手続きの創設

これまでは発信者情報を特定するために、「コンテンツプロバイダへの発信者情報開示仮処分」と「アクセスプロバイダへの発信者情報開示請求」の2つの裁判手続きが必要でした。
 
その分、発信者の特定まで時間と費用がかかるうえに、2回の裁判の途中でログ保存期間が経過し、発信者の特定が困難になるなどのデメリットがあったのです。
 
改正後は、新たな非訟手続として「発信者情報開示命令に関する裁判手続」が創設され、1回の手続で発信者情報の開示請求が可能になりました。非訟手続は訴訟以外の裁判手続のことで、訴訟に比べて手続きが簡易で柔軟な対応ができるのが特徴です。
 
新設された「発信者情報開示命令に関する裁判手続」では、「①裁判所に対する開示命令」「②コンテンツプロバイダとアクセスプロバイダに対する提供命令」「③アクセスプロバイダに対する消去禁止命令」を同時に申立てます。
 
このように、1つの裁判手続きで済むことと、消去禁止命令があることから、発信者の特定まで時間が短縮され、ログが消えて発信者情報の開示が困難になるのを防ぎ、より円滑に被害者の損害が回復されることが見込まれます。

既存の2段階の手続きも認められている

改正プロバイダ責任制限法では、既存の「発信者情報開示請求権にかかる手続き」による2段階の手続きも認められています。つまり、「発信者情報開示命令に関する裁判手続」と「発信者情報開示請求権にかかる手続き」のどちらの方法でも発信者情報の開示請求が可能です。
 
もっとも、新設の手続きではアクセスプロバイダとコンテンツプロバイダの間で必要な情報を相互に提供し合う必要があり、円滑に発信者情報の特定に至るか難しいケースも考えられます。
 
例えば、IPアドレスやタイムスタンプなどで発信者が特定可能な平易なケースであれば、新設の手続きを利用するのが理想でしょう。
 
一方、ポート番号など他の情報が必要なケースや、事前にプロバイダが強く情報開示を拒否すると予想されるケースなどは、既存の手続きを必要とする可能性が高く、ケースバイケースでどちらの手続きを選択すべきか判断することになります。

ログイン時情報を開示請求可能に

近年のSNSはログイン型サービスが主流になりました。同サービスではログインした状態で様々な投稿をおこないます。もっとも、そのようなログイン型サービスは、ログイン時のIPアドレスは保有しているものの、投稿時のIPアドレスを保有していないケースも少なくありません。
 
そして、ログイン時のIPアドレスは既存のプロバイダ責任制限法において「発信者情報」に該当するか明確になっておらず、開示されるかどうかは裁判所により個別に判断されていました。また、ログイン時の通信を媒介したプロバイダに関しては、開示請求の対象とはしていませんでした。
 
つまり、権利侵害を受けたにも関わらず発信者が特定できないケースもあったのです。
 
そこで改正プロバイダ責任制限法では、ログイン時のIPアドレスについて「特定発信者情報」と明文化し、ログイン時のIPアドレスについても開示請求権を認めました。さらに、ログイン時の通信を媒介したプロバイダも開示請求の対象と認めています。
 
これにより、ログイン型サービスにおいて、投稿時のIPアドレスが保存されていないケースであっても、ログイン時IPアドレスを特定発信者情報とし情報開示請求が可能になりました。
 
もっとも、ログイン時のIPアドレスの開示が認められるには「請求対象のプロバイダが特定発信者情報のみしか保有していない」など条件が設けられています。つまり、ログイン時の情報が開示されるのはログイン型サービスのみに限定される点に注意が必要です。

意見照会で発信者が情報開示に応じないときの理由の照会

既存のプロバイダ責任制限法では、発信者情報開示請求があった場合、プロバイダは発信者に対して意見照会をしなければならないと定められています。意見照会は簡単にいえば「発信者に対して情報を開示してもよいか確認すること」と表現できます。
 
改正プロバイダ責任制限法でも意見照会自体について定めがあるものの、新たに、「発信者が開示に請求に応じない場合にはその理由を照会する」旨の規定が定められました。
 
つまり、発信者が情報開示請求に応じない場合、プロバイダはその理由について聞き取りをしなければなりません。
 
これにより、発信者が情報開示に応じない理由を把握したうえで、プロバイダが適切な対応がとれるようになります。

まとめ

ネットの掲示板に投稿された誹謗中傷については、投稿者の特定や損害賠償請求が可能です。ただし誹謗中傷の内容が、被害者の権利侵害と認められるときに限られるでしょう。もしも特定して損害賠償請求をしたい場合は、発信者情報開示請求を通して投稿者を特定できます。そのためには裁判を要する場合も多いです。

ただし個人で訴訟などの手続きや、相手方との交渉を進めることは非常に困難といえるでしょう。投稿者を迅速に特定し、裁判を起こすためには、専門家である弁護士の手を借りることを検討すべきです。

まずは弁護士へ相談し、発信者情報開示請求や訴訟を起こすべきかを探りましょう。

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この記事の監修者
東京みらい法律事務所
甲斐 伸明 弁護士 (東京弁護士会)
2005年弁護士登録。インターネットの普及に伴うさまざまなトラブルに対し、培ってきた様々な知識・経験を活かし、被害者に寄り添う。テレビなどメディアでの掲載実績も多数有。

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相護士ナビ編集部

本記事はIT弁護士ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※IT弁護士ナビに掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。

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